セーリングは、風 “wind” と 帆 “sail” と 船 “boat” を掛け合わせた遊びですが、風に関する用語がいっぱいあります。実際のセーリングシーンでは、あまり使うことが無くても、正しくそのことを表現しようとすると、その用語を使った方が一発で表現できることから、セーラー同士の会話では用語が使われます。

僕たち夫婦の場合には、まともにセーリングのことも勉強せずに、体験的にヨットのことを習得してきたので、特にこういう用語に弱いというか、夫婦2人でセーリングしているときに通じれば、なんでもありという感じで適当にやっていますが、クルーを乗せてヨットレースでも始めようと思ったら、やっぱり正しい用語を覚えなければ、正しくチームワークがとれないという事態に陥ってしまうのでしょうね。

そんなわけで、僕たち夫婦も正しい用語を覚えるべく、今回はヨットの風を表現する言葉(用語)についてお話してみたいと思います。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

必ず知っておくべき「見かけ」と「真」の風

乗り物に乗っていて、風のことを考えることは有りませんが、遊園地の乗り物に乗ると屋根も窓も無いジェットコースターなどは、物凄いスピードで走るので風を感じます。さて、このジェットコースターですが、乗り込む時には風なんて吹いていないのに、高いところまでカタカタ引っ張り上げられ、一気に急な坂を下り始めると強い風が顔や体に当たるのは何故でしょうか?
「そんなあたりまえのこと質問するな!」って怒られてしまいそうですですが、これはジェットコースターが動いて、止まっている空気が乗り物が動くことによって顔や体に当たることで風のように感じているわけです。つまり、この風はホンモノの風ではないということですね。これをヨット用語に置き換えると “Apparent Wind”「見かけの風」と表現します。
では、ジェットコースターに乗り込む時に既に風が吹いている、つまりジェットコースターが止まってのに感じる風をヨット用語に置き換えると “True Wind”「真の風」と表現します。
では、ジェットコースターに乗る時には、ジェットコースターの右側から左側に流れる風で、カタカタ引き上げられる時には風向きは変わらなかったのに、一気に坂を下って猛スピードになったら、前から物凄い風があたり、降り場の手前で急停止すると最初と同じく右側から左側に流れる風に戻る、これは、ゆっくり動いている時は「真の風」を感じていたわけですが、一気にスピードアップして前側からの風に変わるのは「見かけの風」だったと言うわけです。

つまり、 実際に吹いている風のことを”True Wind”(真実として吹いている風)  乗り物が動くことで起きた風のことを”Apparent Wind”(見かけ上吹いたように思えた風) と呼ぶわけです。ヨットは海外から日本に入ってきたので、用語は全て英語が和訳されていることから、真実(本物と言う意味)の風=「真の風」、見かけ上(本当に吹いてはいないので見かけ上と表現)の風=「見かけの風」というわけです。でも普段の生活ではこんなことを考えもしないし、気にする必要はないですよね。では何故ヨットでは、こういう言い分け方をする必要があるのでしょうか?

セーリング(帆走)している時に感じる風

ヨットは風をうまく利用して帆でボートを走らせる遊びです。
ヨットが海上に静止している時に感じる風は “True Wind”「真の風」で、セイリング(帆走)を始める時にはこの風に対してセイル(帆)を調節して走り始めます。しかし、 ヨットが走り出すと、その時に感じる風は “Apparent Wind”「見かけの風」 となります。
さて、ここで大きな問題があります。それは、ヨットはセーリングする時には真正面からの風ではセーリングできないということです。つまり、風はヨットに対して常に真正面以外の角度から吹くように進路をとります。そしてセーリングをし始めてヨットの速度が上がってくると、風が徐々に前寄りになってきます。また、後ろ側から真の風を受けてセーリングしていると、スピードが出始めると風が弱まったように感じ始めます。このように、風が前寄りになったり弱まってきたりするような、 セーリング(帆走)している時に感じる風は “Apparent Wind”「見かけの風」 なので、セーリングする時には実際に感じている風ではなく “True Wind”「真の風」にセイル(帆)を合わせてセーリングする わけです。

つまり、 セイル(帆)は “True Wind”「真の風」に合わせないと効率よくセーリングすることができない というわけです。

セーリング中に知りたいのは「真の風」

このようにセーリング中に吹く風は「見かけの風」のため、効率よくセーリングするためには「真の風」を本来は知りたいわけです。「真の風」には3つの要素があります。

  • 船首を中心にどの角度から吹いているのか(風の角度)、これを TWA “True Wind Angle”(真の角度)と言います。
  • 実際にはどのくらいの強さで吹いているのか(風速)、これを TWS “True Wind Speed” (真風速)と言います。
  • どの方角から吹いているのか(風向)、これを TWD “True Wind Direction”(真風向)と言います。

セーリング時にヨット上で感じる「見かけの風」

ヨット上で感じる風には2つの要素があります。

  • ヨット上で感じる風の強さ(風速)、これを AWS “Apparent Wind Speed”(見かけの風速)と言います。上りの風でセーリングしている時には強く感じ、下りの風では弱く感じるのが一般的です。
  • ヨットの進行方向に対して、どの角度から吹いていると感じるか(風の角度)、これを AWA “Apparent Wind Angle”(見かけの角度)と言います。

最後に… 「真の風」の情報が最も重要なヨットレース

これらの風の要素は、ヨットの進むスピードに大きく影響されます。スピードが速いければ速いほど、上りの風(アップウインド)の時には風が強く感じます。逆に下りの風(ダウンウインド)では、ヨットのスピードが風速に近づくと風が弱く感じます。ですから、「真の風」を正しく読み取らないと最高のパフォーマンスを出すことが出来ないわけです。

最近のアメリカズカップで用いられたフォイル艇では、セイルの効率とフォイルにより水の抵抗が少なったことで、風速に対して艇速が非常に高く、風速6m(約12ノット)でも40ノットと、アップウインドでもダウンウインドでも「見かけの角度」(AWA)が小さくなり、普通のヨットで言うアップウインドのような前側から風を常に受けている状態で走るようなことになっています。それで、ヨットレースの花形とも言えるダウンウインド専用セイル(スピンやジェネカー)が必要なくなったわけです。

レース艇の計器盤
レース艇では上の写真のような計器盤をつけて、クルー全員がこの表示を見て自分の持ち場での動きを決めヨットを走らせています。

ヨットを走らせることは、そんなに難しいことでは無いんですが、最高の走りをさせたければ、やはり「真の風」の情報を見て操船することになります。実際に感じている風で適当にセイルを出したり、引き込んだりしているわけではないということですね。

コメントを残す