夏のヨットは、とにかく暑い。一昔前なら、ヨットは海の上だから、意外に風が吹いて快適でなんとかなるなんて言われていましたが、最近は気候変動の影響もあり、日本でも気温が40℃近くまで上がる日があります。これだけ暑い日に閉め切ったヨットのキャビンは、いったい何度になっているのでしょうか。
炎天下に駐車した車だと、車内温度が50℃を超えることもあります。ヨットも同じように強い日射を受けていれば、キャビンの中はかなり暑くなっています。
そこで、ふと思うのが、夏になると増える「ダニ」です。
ダニは高温多湿の時期に増えるといわれますが、これほど暑くなるヨットの中でも、ダニは増えるのでしょうか。
車だと夏場の高温でダニはほとんど死滅する、なんて話を聞いたことがあります。では、ヨットのキャビンでも、それを期待できるのでしょうか。
ヨットにはマットレスやクッション、寝具、船内に置いている衣類など、ダニが潜みそうな場所がいくつもあります。
今回は、ヨットの中で人に害を与えるダニについて、どんな環境で増えるのか、真夏の暑さで死滅するのかを確認しながら、ダニ対策について考えてみたいと思います。

ダニが増えるのはいつごろ
ダニが増えやすくなるのは、梅雨から夏にかけてです。日本の住宅を調査した研究でも、ダニの数は多くの部屋で7〜9月にピークを迎えています。
では、暑ければ暑いほどダニが増えるのかというと、そう単純ではありません。
ダニが増えるためには、温度とともに「湿度」が大きく関係しています。代表的な屋内のダニは、温度が上がっても乾燥した環境では増えにくく、湿度の高い環境では活発に増殖します。
実際に、室内の相対湿度を50%未満に維持した住宅では、ダニの数とダニ由来のアレルゲンが大きく減少した研究があります。逆に65〜75%程度の湿度では、代表的なヒョウヒダニ類が大きく増殖した実験結果があります。
ここはヨットで気になるところです。
ヨットは海の上にあるから湿度が高い、と単純には言えませんが、濡れた衣類やタオルを持ち込んだり、寝具やマットが人の汗を吸ったりします。さらに、使用後はハッチを閉めて長期間無人になることもあります。
つまり、夏のヨットで気にしたいのは「暑さ」だけではありません。ダニが増えやすい季節に、マットや寝具の周辺で高い湿度が長く続いていないか。ここが、ヨットのダニ対策を考えるうえで重要になります。
ダニは何℃で死滅するのか
夏に増えるダニですが、もちろん高温になれば死滅します。では、何℃まで上がれば死ぬのでしょうか。
ダニの種類や成長段階、温度にさらされる時間によって違うため、「何℃になれば瞬間的にすべて死ぬ」と単純に決めることはできません。
実験では、50℃程度でも短時間では生き残るダニが確認されています。ヤケヒョウヒダニでは、53℃で完全に死滅するまでに12分を要したという実験結果があります。
寝具を使った別の研究では、55℃以上の温水でダニがすべて死滅しています。また、卵についても50℃の乾熱では完全に孵化を防ぐまで長い時間が必要だったのに対し、60℃以上になると短時間で高い効果が確認されています。
つまり、ダニを熱で駆除するなら、単に「暑くする」のではなく、ダニがいる場所そのものを十分な温度まで上げ、それを一定時間維持する必要があります。実用上は、55〜60℃以上が熱によるダニ駆除を考える一つの目安になります。
ここで気になるのが、真夏のヨットです。
真夏のキャビンでダニは自然に死滅するのか?
炎天下に置かれた車の中が、非常に高温になることはよく知られています。JAFが行った実験では、外気温35℃の炎天下に駐車した車で、車内温度は最高57℃、ダッシュボードは79℃に達しました。
これなら、先ほど説明したダニが死滅する温度に達しています。実際、夏の車内の高温を利用してダニを駆除するという話があるのも、このためです。
では、ヨットも同じなのでしょうか。
ヨットも車と同じように、閉め切った状態で強い日射を受けます。真夏にハッチを開けた瞬間の熱気を経験すると、キャビンもかなりの高温になっていることは想像できます。
ただし、車とヨットには大きな違いがあります。
ヨットは水に浮かんでいて、船体の一部は常に海水に接しています。日射を直接受けるデッキやキャビントップと、海水に接している船体では、温度の上がり方が異なります。
さらに、ダニが潜んでいるのはキャビンの空気中ではなく、マットやクッション、寝具などです。
仮にキャビンの空気が非常に高温になっていても、厚みのあるマットの内部まで同じ温度になっているとは限りません。特にバースは船体に近く、その上に厚いマットが載っています。
つまり、真夏のヨットがどれほど暑くなっても、マットやクッションの内部までダニが死滅する温度に達し、それが十分な時間続いているのかはわかりません。
夏の暑さだけで、船内のダニが自然に駆除されると期待しない方がよさそうです。
ダニを増やさないための予防
ダニ対策でまず考えたいのは、発生してから駆除することより、船内で増えにくい環境をつくっておくことです。
特に意識したいのが湿度です。ダニは乾燥した環境では増えにくく、室内の相対湿度を50%前後以下に保つことは、ダニの増殖を抑える有効な方法のひとつです。
ヨットでは、まず小さな湿度計を船内に置いてみると、実際の状態が分かります。できれば最高・最低値や履歴を記録できるタイプなら、艇を離れている間にどの程度まで湿度が上がっているのかも確認できます。
次に気をつけたいのが、バースのマットやクッションです。
泊まったあとのマットや寝具には、人の汗などによる湿気が残っています。下船するときにマットをそのまま寝かせておくより、可能なら立てたり浮かせたりして、表だけではなく裏側にも空気が通るようにしておきます。
マットの下に通気性のあるメッシュなどを入れ、バース板と直接密着させない方法もあります。これはダニだけではなく、ヨットで起こりやすいマット下の湿気や結露対策としても有効です。
シーツ、枕カバー、毛布など、簡単に持ち帰れるものは定期的に船から降ろして洗濯します。濡れたタオルや衣類を船内に残さないことも基本です。
掃除も重要です。ダニは人から落ちる皮膚片などを餌にするので、バースやクッションの隙間、マットの下など、普段あまり掃除しない場所にも掃除機をかけます。
さらに、手間をかけずにできる予防として、マットの下などにダニ対策用のシートを入れておく方法があります。
例えば、アース製薬の「ダニがホイホイ ダニ捕りシート」は、ダニを誘引して粘着面で捕獲するタイプです。布団やベッドの下などに置くだけで、交換の目安は約3カ月。殺虫成分を使用しないので、バースのマット下などにも比較的取り入れやすい方法です。
もうひとつは「防虫力 ダニよけ どでかシート」のような忌避タイプです。こちらはダニを殺すのではなく、寄せ付けにくくするためのもので、メーカー表示では効果は約6カ月。大判のシートを必要な大きさに切って使えるので、形が特殊なヨットのバースにも合わせやすいでしょう。
捕獲するもの、寄せ付けにくくするもの、どちらもダニを完全に駆除するものではありません。
湿度を抑える、マットや寝具を乾燥させる、定期的に洗濯・清掃する。こうした基本的な管理に加えて使う予防策と考えるのがよさそうです。
ダニがいることに気づいたら
ヨットに泊まっていて、ダニに刺されたような痒みが出た。そんなときは、できるだけ早く対策したいところです。
しかし、ヨットに泊まるのは夜だったり、近くに店がなかったりして、すぐに殺ダニ剤を買いに行けるとは限りません。
まず、その場でできることから始めます。
掃除機があれば、バースやキャビンのマットの表面だけではなく、縫い目や側面、裏側、クッション、バース板まで丁寧に吸い取ります。掃除機だけですべてのダニを駆除できるわけではありませんが、ダニや糞、死骸、餌になる埃などを減らすことができます。
マットやクッションは立てて裏側まで風を通し、湿った寝具やタオル、衣類などはバースから離します。エアコンの除湿運転が使える艇なら、船内の湿度を下げるのも効果があります。
予備のシーツや寝具があれば、直接肌に触れるものは清潔なものに交換します。ダニが付いている可能性のある寝具はほかのものと分け、後で洗濯できるようにしておきます。
翌日などにドラッグストアへ行けるなら、ダニ用の殺虫剤を用意します。ヨットで扱いやすいのは、マットやクッションへ直接使用できるスプレータイプです。
例えば「ダニアーススプレー」は、屋内塵性ダニ類の駆除と増殖抑制に加えて、イエダニなどの駆除にも対応しています。布団、枕、布製ソファ、クッションなどへの使用がメーカーから示されているので、バースマットやクッションにも使いやすいタイプです。
KINCHOの「ダニがいなくなるスプレー」も、屋内塵性ダニ類の駆除と増殖抑制に対応し、マットレス、布団、枕、クッションなどへの使用が示されています。
使用するときは、必ず製品に表示されている使用量や使用方法を守り、処理後は十分に乾燥させます。
薬剤を使ったら、それで終わりではありません。
殺虫剤でダニを殺しても、死骸や糞は残っています。これらもアレルギーの原因になるので、処理後はもう一度掃除機をかけ、マットの表裏、縫い目、クッション、バース板などを清掃します。
さらに、駆除した後にはダニ捕りシートなどをマットの下に設置しておけば、その後の対策にもなります。
つまり、ダニに気づいたときは、掃除する → 乾燥させる → 殺ダニ剤で駆除する → もう一度掃除する → 再発を予防する という順番で考えると分かりやすいでしょう。
なお、痒みや赤い痕があるからといって、原因が必ずダニとは限りません。こうした対策をしても被害が続く場合には、ほかの虫などが原因になっている可能性も考える必要があります。
ヨットで殺ダニ剤を使うときの注意
ダニを一気に駆除するなら、部屋を閉め切って使う燻煙タイプや全量噴射タイプの殺虫剤を思い浮かべる人もいると思います。住宅では広く使われている方法ですが、ヨットで使う場合には少し注意が必要です。
こうした製品には、使用する部屋の広さが指定されています。例えば、ダニ用として販売されている全量噴射タイプには6〜8畳用などがあり、メーカーが規定より狭い部屋や隙間などの狭小空間では使用しないよう指定している製品もあります。
ヨットのキャビンは、住宅の一室よりかなり狭い場合があります。狭いから少ない量で使えばいい、というものでもありません。
もうひとつ注意したいのが火気です。
全量噴射タイプには可燃性ガスを使用している製品があり、メーカーは裸火だけではなく、電気スイッチなどから発生する火花にも注意するよう表示しています。
ヨットにはバッテリーや各種電装品があり、艇によってはLPGなどのガス設備もあります。燃料を積んでいることも住宅とは違うところです。
また、航海計器や無線機などの電子機器がキャビン内にあるため、薬剤が直接かからないよう保護が必要になる製品もあります。
住宅用として普通に販売されている製品だからといって、ヨットでも同じように使えるとは限らないわけです。
燻煙タイプや全量噴射タイプを使用したい場合には、対象となるダニだけではなく、使用できる空間の広さ、火気、電装品、使用後の換気など、製品に記載されている使用条件を確認してから使う必要があります。
最後に…
MALU号でも、ずっと以前からダニ対策はやり続けてます。特に我が家の場合には、ヨットは別荘代わりでもあるので、最初からヨットでの宿泊率が高いので、初年度からダニ対策に追われました。
やったことは、やっぱり先ずは掃除です。最初は車用のクリーナーとかを使ってましたが、家で使っていたダイソン掃除機を船に持って行って使ってみたら、白く細かな粉が埃と共にどっさり…。
怖くなってしまいました。
そこから、マット類の掃除や天気の良い日にデッキに出して天日干し。バースの寝具も出来るだけ外干し乾燥を心掛ける…と言った感じです。
本文では夏場に増え始めると書いていますが、今では防ダニシートやダニ取りシートの有効期限が過ぎるあたりで暖かくなったりすると、やっぱりダニが増えるようです。なので、有効期限を切らさないようにすれば、防ぐことが出来てるようです。
更に、予防用のスプレーが最近は出始めたので、これも買って定期的にワンプッシュ。
防ダニ対策と殺ダニ、そしてダニシートを敷いて、定期的に交換すると言った繰り返しです。
お陰で割と快適なヨットライフをこれまで送ることが出来ています。




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