僕たち夫婦が初めて乗せて頂いたヨットは35フィートのセーリングクルーザーでした。35フィートと言うと、陸の乗り物に例えるとマイクロバスくらいの大きさになりますが、ヨットの場合にはマストが立っているので実際の感覚は、マイクロバスよりもっと大きく感じます。僕たちは、そのヨットにおおよそ3年近くクルーとして乗っていたことから、自分たちにとってヨットの標準サイズは35フィートと自分たちの中でセットされてしまった感があり、他のヨットに乗せて頂いたときに、30フィートだと物凄く小さく狭く感じたり、40フィートのヨットだとゆったりしていて自分たちにとっては大き過ぎるかなって感じでした。
でも、自分たちのヨットを考える時の最も大きな事柄は、なんと言ってもやはり予算ですから、自分たちの予算の中でどのくらいのサイズのヨットが買えるのかと言うように考えるしかなく、当時はそんなに玉数も無かったので、選択肢はそんなに広くはありませんでした。経済的にも最初から中古艇でしか考えていませんでしたから、その時に売りに出ているヨットから選択するしかなかったので、サイズもまちまち、タイプも様々な、かなりの数のヨットを全国区で見て回ったりもしました。

しかし、そんな選び方をしてきたので、乗り始めて初めて気付くことがいろいろありました。僕たちは殆ど諸先輩に購入の相談するということもせず、諸先輩のヨットに乗せて貰いながら、自分たちの体験と見聞きした範囲の情報だけで選んだこともあり、それを知っていたら選び方が変わってたな…って後で思ったこともありました。まあ、単に僕たちがバカなだけなんですが…。

これまでにも、このブログで「ヨットを実際に探し始める前に知っておくべきこと」や「ヨットの所有を考えるとき気になるコスト」というようなテーマでお話をしてきましたが、今回はヨットの大きさによってどのようなことが起きるかということに視点を置いてお話してみたいと思います。

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30フィートクラスとは?

※ヨット業界に「30フィートクラス」という規定された用語はありません。今回の記事を書くにあたって、このように表現した方が解りやすいので、そのように表現しています。

登録長と実際の全長が異なる

ヨットを含む船の大きさは、日本での登録上の長さは、バウ側の船体とデッキの接合部分から舵(ラダー)までの間の長さ、船外機船のような舵(ラダー)が存在しない船の場合には、船体の長さに0.9を乗じた数値を全長としています。
船の長さ
つまり、私たちが目で見ている実際の船の長さ(船の最先端から最後尾)を測った実測長とは異なっているのです。ですから、メーカーや販売業者が言うところの30フィートと言うのは、あくまでも30フィート位のヨットと言う意味です。更に、1フィートは約30.5センチで、1フィート数値が異なっても30センチ定規1本分しか長さは変わらないので、メーカーにより表現が異なるということがあります。実際には32フィートでも30と言っているケースもあれば、34フィートを35と言っている場合もあります。

30フィートクラスはコスパに優れたサイズ

結論から先にお話すると、日本でヨットに乗るなら、オススメする大きさは「30フィートクラス」です。大きさは9メートルから10メートル程度のサイズ感が最もコスパに優れています。その理由は、これから順を追ってお話したいと思います。

そこで、ここでは大体30フィートから35フィート位のヨットを30フィートクラスとして表現してお話を進めたいと思います。

30フィートクラスで何が違ってくるか

30フィートクラスを境に大きく変わる、第1位は「コスト面」です。あらゆるコストが一気に高くなるのが、30フィートクラス超えです。
第2位は「操船面」です。これは、大きくなれば操船が難しくなるのは当然なのですが、その難しいには「フィジカル」も含まれます。
第3位は「安定性」です。30フィートクラスを境に荒天時の安定性が格段に変わってきます。勿論、大きくなればなるほど荒天性能は高くなり、速度も速く走ることができます。
第4位は「快適性」です。これは広さと表現した方が良いかもしれません。

では、それぞれについてご説明しましょう。

1. コスト面

30フィートクラスを境にコスト面は大きく変わってきます。船が大きければ、それだけコストが掛かるのは当然のことですが、見る視点によって異なってきます。

a. 販売価格

新艇価格は、大きければ大きいほど価格は高くなります。30フィートクラスを超えると、2メートル増える毎に価格は約2倍近くになります。これは、長さに対して容積が格段に大きくなるからです。
中古艇価格の場合にはちょっと違ってきます。30フィートクラスを境にして、割安感が出てきます。40フィートクラスになると、更に割安感は強くなります。これは、乗用車などでも同じことが言えるのですが、小型車は安く、中型車は人気なので割高感が強く、大型車は新車時はとても高いのですが中古になると需要が少ないことから割安になるということです。30フィートクラス超の船と40フィートクラスの船を比べると、あまり値段が変わらないことがあります。しかし、そういう船を買ってしまうと後で痛い目をみてしまいます。それが維持費の部分です。(近年、中古艇販売の人気が大型艇にシフトしてきていることから、30フィート超えの割安感が若干薄れている状況は見られます。)

b. 維持費

維持費は、「係留コスト」と「メンテナンスコスト」に分かれます。何れの場合でも、30フィートクラスを超えると一気に高くなる傾向にあります。
係留コストは、船の実際長に従って高くなりますから、船が大きければ、それだけコストは高くなります。これは、船が大きくなれば、それだけ強度の高い桟橋が必要になり、スペースも大きくなるからです。勿論、陸置きの場合でも、船台も大きくなれば置き場のスペースも広く取る必要があります。更に、上下架の際にも機械損料が大きくなるわけですから、それだけ料金は割高になるわけです。

メンテナンスコストは、部品代、修理代、共に30フィートクラスを超えると高くなります。解り易いところで説明すると、30フィートクラスのジブシートは、直径12ミリくらいまでの太さですが、30フィートクラス超えだと14㎜になり、在庫として扱っている船具屋が少なくなります。勿論、ロープが太くなるということは、それだけテンションが高くなるということですから、ウインチも大型化しています。また、船の長さが長くなると、ロープ類の長さも長くなるので、太さに加えて長さも増えるのでトータルコストは正比例せず、倍々というようになってくるわけです。

船底塗料を塗るにしても、長さだけでなく幅も大きくなるので、塗る面積は飛躍的に広くなり、必要な塗料の量も格段に増え、その分作業費も嵩みます。

メンテナンスで最も大変なのが、エンジンですが、30フィートクラスと30フィート超えではエンジンサイズが数段大きくなります。そうした時に、30フィートクラスまでなら、スライドハッチから、そのまま吊り下げて出し入れできますが、30フィート超えの船に搭載されているエンジンだと、ハッチを脱着しないと船外に運び出せなかったり、船内で分解してから取り出すと言った作業になり、作業コストもより掛かります。

2. 操船面

操船は慣れの問題が大きいのですが、やはり大きければそれだけ取り回しが大変なのは否めません。特に言えるのが離着岸時です。ヨットの場合には多くの場合、船の後ろ側で操船しますので、舳先の距離感が掴みづらいです。また、風のあるときには、バウが流れる傾向にあります。そこで、長い船はバウスラスターを取り付けて流れを抑制します。バウスラスターはとても便利な装備ですが、電動なのでバッテリーが多数必要になり、常に充電を十分にしておく必要があります。また、メンテナンスコストは、バッテリーの定期的な交換など、装備が増える分、高くなるということになります。

操船面ではもうひとつ問題があります。それは、フィジカル面です。
30フィートクラスまでは、大体普通の体格の人が動かせる程度の負荷です。ウインチの動作面などで30フィートクラス超えの場合には、かなり力が必要になります。ハリヤードやシート類の引き込み、アンカーの引き上げなどもアンカーが重く大きくなり、その分チェーンも長くなることから、かなりの体力を要します。それらを補うために、ウインチやウインドラスを電動化するなどで、足りない力を補う必要が出てきます。また、とっさの調整が大型化すればするほど、大変になります。
大型艇をシングルハンドで操船するベテランの猛者もいますが、その分、かなり装備面で電動化や自動化がされている船の場合に限られます。セーリングする際には、30フィート超えの船の場合には、シングルハンドはかなり難しくなり、かつフィジカルの強さが求められます

3. 安定性

昔は、20フィート台のセーリングクルーザーで太平洋を渡ったなんて話がたくさんあります。しかし、20フィート台では、ローリングが非常に大きく、大きな波を受けると横倒しになる確率が非常に高いのです。
30フィートクラスのヨットは、20フィート台に比べれば、かなり安定性は高いです。しかし、荒天時の安定性は30フィートクラス超えの船には劣ります。それは、船の重さや船体の大きさが安定性を生むからです。30フィートクラスのヨットでも思たく造られている船は安定性が高く、デイセーラー寄りのクルーザーの場合には、軽く造られてることから安定性に乏しいです。30フィートクラス超えの船は、基本的に外洋に出ることを前提としたデザインの船なので、どの船も安定性が非常に高いものが多いです。

4. 快適性

快適性の基準は、その人によって異なってきます。どういう楽しみ方をするのかということになりますが、シングルハンドで全国を巡りたいという人なら、20フィート台のヨットで十分かもしれません。しかし、仲間と全国を巡りたいと考えるなら30フィートクラスは必要になります。
また、デイセーリングが殆どでロングクルーズはたまにしかしないという人の場合、たまのデイセーリングは仲間とわいわいやりたいという人にとっては、20フィート台は手狭です。やはり30フィートクラスは必要になってくると思いますし、たまのロングクルーズでは、せめて4人から5人は船内で泊まりたいという場合にも、やはり30フィートクラスが必要になるかと思います。
更に、世界に出掛けたいという人にとっては、20フィート台は何かと不便が大きいです。船内で真っすぐ立つこともできないと言ったこともあり、3畳一間の小さな下宿…と言う歌がありますが、ホント手狭な感じになってしまいます。装備等の荷物の積み込み量も厳選する必要があります。30フィートクラスは、そういった意味では、1人で世界を巡るには、必要十分なスペースと設備が確保されていると言えます。逆に、夫婦や仲間と世界を巡りたいと言った場合には、30フィートクラスでは夫婦なら良くても、仲間の場合にはプライベートの確保なども考慮すると手狭だということが言えます。

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最後に… どういうヨットライフを送りたいか?

我家のMALU号は、ミラベル375と言うヨットで375という数字は37.5フィートという意味のようで、実測では12メートル超のヨットです。重量は7トンもあり、係留しているバースは40フィートクラス用です。僕たち夫婦がこの船に乗り始めた頃の感想は、とても安定感のある乗っていて安心できる船だなって感じました。当時の僕たち夫婦には、この安心感はヨットを続ける大きな動機にもなりました。しかし、ひとつ大きな問題がありました。それは妻がロープ類のコントロールが全くできなかったことです。非力な妻は、太くて重たいジブシートやメインシートの調整は、先ずできません。乗り始めた当初のメインウインチ(ジブ用のウインチ)は、かなり古いデザインのもので操作感がとても重たいものでした。妻の力では巻き込みも容易ではありません。更に、メインシートを操作するにはフィジカルの強さが必要。そこで、ウインチだけでも最新のものに積み替えを考えたわけですが、そのサイズを既存と同じサイズにすると、50番と超ビッグサイズ。今時の40フィート艇にも付いてないようなビッグサイズです。値段を調べてみると1台15万近くと驚きの値段、もう僕たちにはお手上げ状態でした。一旦はそんなわけで諦めていたのですが、その後もいろいろと探し続けていたところ、アメリカのカルフォルニアに2台セットで15万円という破格の値段で新品同様の物に巡り合えたことから、今では妻も操作できるようになりました。これは本当にラッキーでした。こういったことを考えると、やはり30フィートクラスだったら、もっと容易に交換できていたと思いますし、もしかしたら、交換の必要も無かったかもしれません。

MALU号
ですから、いろんな意味で30フィートクラスはやっぱり日本人にとっては丁度良いってことになります。それ以上のヨットにするなら、最近の新し目の船で電動ウインチ付きなど、パワーアシストが無いと女性にはちょっと難しいと思います。古い船はそれでなくても様々な物がスムーズではなく、その分、力が必要ですから、それらを改善するためには交換やメンテナンスも必要になってくるわけです。30フィートクラスなら、新品、中古品の流通も比較的潤沢で手頃な値段で手に入るというわけです。我が家は夫婦でセーリングすることが前提だったので、こういったことになってしまいましたが、各自それぞれのセーリングスタイルに合わせた計画や選択が必要だというわけです。それを船選びの段階から知って行っておけば、もっといろいろな選択肢が広がると思います。

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