「ヨットで電子レンジを使いたい」という話をよく聞きます。最近はキャンプブームもあって、アウトドアでも電子レンジを使いたいというニーズがあるようで、もうアウトドアで薪火に飯盒でご飯を炊いてカレーを作って食べるという時代ではないんだなって、自分のキャンプ感の古さをおもい知ってしまうわけです…。

実はMALU号には、前オーナーがプロパン用のガスレンジ&オーブンを外し、その空きスペースに取り付けた電子レンジがあります。ちゃんとジンバルでヨットが傾いていても使えるという念の入れようで、これって海で走りながら使えるようにしたんですか?って質問したら、その気になれば、お弁当の温めくらいならエンジン掛けながらなら使えるって話でした。
しかし、僕たち夫婦は2人でセーリングしながら電子レンジを使うって機会は無いので、未だ船を走らせながら電子レンジを使ったことはありません。でも、ヨットに電子レンジがあるととても便利で、陸電につながっている状態であればコンビニ弁当からコンビニの電子レンジで温めるだけで美味しく頂けるおかずの数々も楽しめるとあって、マリーナライフではとても重宝しています。
電子レンジ
しかし、本当に陸電無くても電子レンジが使えるのか検証してみたいし、船のバッテリーでどのくらい動かすことが可能なのか気になりますよね。そこで、サブバッテリー(ハウスバッテリー)をディープサイクルに交換したので、これをベースにちょっと、その辺のことを確認してみることにしました。

そこで今回は、ヨットで電子レンジを使う際には、どのようにすべきなのかも含めて、お話をしてみたいと思います。

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家庭用電子レンジの消費電力は大体1000W以上ある

ヨットで電子レンジを使いたいという場合、最も気にすべきことは、その電気製品の消費電力が「何ワット」あるかということを知る必要があります。何故なら、ヨットで作り出すことが出来る電気容量とバッテリーの蓄電容量に対して消費電力に無理が無いか検討する必要があるからです。
そこで、先ずは電子レンジの消費電力ですが、いろいろなメーカーの電子レンジを新旧含めて確認したところ、最低でも980W(0.98KW)、最も大きなもので1400W(1.4KW)程度あるようです。ワットと書いていますが、電子レンジは家庭用電化製品なので、AC100V(交流電源)においての話です。

電子レンジの出力切り換えは消費電力ではない

電子レンジには、出力量を手動で切り換えできるものがあります。コンビニ弁当のラベルに電子レンジでの温め時間が500Wで何分、1000Wで何分と書かれていると思いますが、間違えてはいけないのが、このお弁当に書いている500Wとか1000Wという数字は電子レンジの出力切り換えの数字のことです。これは温めの際の出力波の強さ(定格高周波出力のこと)を示しています。これは、電子レンジが高周波を発射して温めを行っているので、その高周波の強さを切り替えているのです。電波を使う無線機や魚群探知機の発信出力と同じ話で、この数字がそのまま消費電力ということではありません。つまり、500W出力で使っているから消費電力も500Wということではありません。概ね、500Wの出力で1000~1100W程度、600Wだと1200~1300W程度の電力消費があるようです。因みに、インバーター式の電子レンジは、調理時間を短くするためにインバータを用いていて、消費電力を下げるためにインバーターが入っているわけではありません。

低出力モードは冷凍肉などの解凍用

電子レンジには200Wという低出力モードのある機種があります。これは冷凍肉などを解凍するときの低出力モードのことで、この200Wモードでコンビニのお弁当を温めようとすると、お弁当のラベルに600Wで3分と書いてあった場合には、約3倍の9分程度の時間で暖める必要があります。出力波が小さいので、逆に時間が掛かるわけです。(電子レンジのワット数と加熱時間の計算が出来るサイトはこちら

家庭用電子レンジは何故どれも消費電力が1000W以上あるのか?

家庭用電化製品は、そもそも消費電力を下げるメリットがありません。何故なら、消費電力を下げるということは、それだけ調理の効率が悪くなるということです。具体的には調理時間が長くなってしまいます。家庭用のコンセントは1回路20A(アンペア)の電流が流せますので、100Vの電圧で20Aの電流を流せると言うことは、1回路で2000Wまで使えます。なのに、500Wや800Wなんて低電力しか使わないなんて勿体ないことです。それなら、出来るだけ大きな電力で、その代わりに出来る限り短時間で調理ができた方が使う人にとっては便利なわけですから、1000W(1Kw)以上を使うようにしているわけです。では、逆に2000W(2Kw)の電子レンジは何故無いのでしょうか? それは、同じ回路に他の電化製品もつながる可能性があるからです。電子レンジと電気炊飯器の同時使用は、家庭の台所のコンセントでは充分にあり得ることです。この時にブレーカーが落ちてしまっては、利用者がとても不便な思いをすることから、電子レンジと電気炊飯器が同時に使用されてもブレーカーが落ちない程度で最大の消費電力に設定されているわけです。ですから、家庭用電子レンジの最大消費電力は1400W程度が最大値です。

家庭用の電化製品の消費電力とは?

さて、ここまでくると気になるのが、家庭用電化製品(今回の場合は電子レンジ)の消費電力とはなんなのかと言うことになります。この消費電力と言うのは、どの家庭電化製品にも表示が義務付けられているもので、その機器が動作するときに最大の消費電力の値を表示することになっています。つまり、家庭で使用する場合に、先に例で書いたように、消費者がコンセントに繫いで使う時に、ブレーカーが落ちないように安全に使用するために計算できるようにしているわけです。ですから、この数値以上に電気を消費することは無いという数字です。実際には安全率が加えられており、更に常にその消費電力で動いているわけではありません。つまり、電子レンジの出力が、200W,500W,600W,1000Wと言うような切り換え式の時に、1000Wの最大出力で使った時に考えられる瞬間最大の消費電力の値に安全値を加えた値を表示しています。

ヨットで電子レンジを使うためには…

以上のことから、ヨットで電子レンジを使うためには、電子レンジの消費電力に見合ったバッテリー容量を確保する必要があるというわけです。
また、家庭用電子レンジは、AC(交流)100Vが必要です。しかし、ヨットの電源は基本的にはDC(直流)12Vですので、直流12V電源を交流100Vに変換する必要があります。これには、インバーターが必要で、既にヨットにインバーターが付いている場合には、電子レンジの消費電力に合っている物か確認する必要があります。

バッテリー容量が電子レンジの使用に耐えられるか?

電子レンジの消費電力については、これまでの説明のとおりですが、次に気になるのは、バッテリー容量が電子レンジの使用に耐えられるのかということになります。
これを判定するには、計算で確認するしかありませんが、電気と言うのは非常に面倒な世界のもので、直流のDC12Vを交流のAC100VにDCACインバーターで変換する場合、100%の変換効率を得ることができません。また、バッテリーも新品の状態では100%の充電容量を確保できますが、使用しているバッテリーの充電容量は100%ではありません。その他、バッテリーからインバータの間の配線抵抗などもありますから、きっちりとした数値を算出するのはとても面倒な話になります。

バッテリーに掛かる負荷を計算してみる

きっちりとした数値を算出できないと言っても、判断できないわけではありません。そこで、以下のような計算をしてみます。

先ず、バッテリー電圧の変換効率は、配線抵抗なども考慮して、80%程度として計算します。また、現実的なバッテリー容量を満充電に対して85%程度で計算すれば、ある程度現実的な数値を導き出すことができます。

一般的な単機能の電子レンジで500W出力の場合の消費電力は1000W程度ですので多目に見て1100Wとします。
DCACインバーター(直流12Vから交流100Vへの変換器具)の変換効率を80%とすると、1100W ÷ 80% = 1375W となります。
これを12Vのバッテリー電源で使用するので、1375W ÷ 12V = 114.5A となります。
つまり、これは DC12Vで1時間使用すると114.5Ahを使用するということになります。
30分間使用すると、114.5A × 1/2時間(30分) = 57.25A
10分間使用すると、114.5A × 1/6時間(10分) = 19.084A

つまり、100Ahのバッテリーなら、10分程度の利用なら問題無さそうに見えますね。

時間率(バッテリー性能)と比較する

バッテリーは時間率という性能表示があるので、この算出した数値が時間率に対して比較した時に無理が無いかということを確認しておく必要があります。
時間率は、満充電状態からバッテリー上がりの状態である10.5Vまでに電圧が降下するまでの時間のことです。
仮に、容量100Ah-20H(時間率20時間)のバッテリーだったとすると、100Ah × 1/20 = 5A
つまり、5Aの電流を20時間流す能力があるバッテリーと言うことになります。バッテリーは特性として、小さな電流を長く流すことが得意で、大きな電流を短時間に流すのはとても不得意です。ですから、時間率20時間のバッテリーよりも、10時間の方が高性能、5時間ならより高性能なバッテリーと言うことになります。)
つまり、電子レンジのような大電流を必要とする機器の使用は極短時間で無いと、電圧の降下量が激しすぎて10.5Vを下回る完全放電近くまで行ってしまうと、再充電が難しくなってしまうのです。ですから、一気に大きく電圧降下するような電流を長時間は流せないというわけです。

先程の計算で、10分の利用でおよそ19.084Aですから、19.084A ÷ 5A ≒ 3.816倍 3.816倍の電流 ÷ 20時間 ≒ 15.93% の能力を一気に使うということですから、10分程度の利用ならあまり無理はないと考えられます。

時間率はバッテリー容量の 1/時間率 の電流(時間率20時間の場合には 1/20の電流、時間率5時間の場合には 1/5の電流)で、満充電から10.5Vまで電圧が降下するまでの時間のことですから、これと比較して、大きな割合を占めるのであれば、バッテリーに対して、かなり大きな負荷が掛かるということですし、割合が小さければ、バッテリーに掛かる負担は小さいので問題ないと推測できるわけです。

長時間使用することを想定するなら

電子レンジは電気容量の大きな器具ですので、長時間使用することがわかっているのであれば、消費電力の数倍のバッテリ容量を準備する必要があります。逆に一度の使用が数分程度で、次の使用の間に充電できる見込みがあれば、ハウスバッテリー1本でも容量がそこそこあれば問題ないということも言えます。

ヨットへの電子レンジの導入で注意すべきポイント

電子レンジが大きな電流を使用する機器ですので、バッテリーとDCACインバーター間の配線は十分に太いもので接続してください。配線が細いと発熱して、熱損失が出ますし、発火の可能性もあります。また、DCACインバーターと電子レンジ間は、電子レンジに付いている電源コードで直結することをオススメします。

また、電子レンジを使用する際には、他の電気類の使用をしないなど、同時使用でヒューズが飛ぶなどのことを防止するように充分考慮して使用してください。

出来れば、ウィンドラスや電動ウインチ、バウスラスターなどと同じように、電子レンジを使うための専用バッテリーの設置をすれば、安心して使用できます。

最後に… アウトドア電子レンジなるものが…

この記事を書いている時に、調べ物をしていたら「アウトドア電子レンジ」と言うのが発売されているのを見つけました。製品を見てみると、基本はDC12Vのカーバッテリーに接続して使うか、キャンピングカーなどに付いているDC12V電源を使用して使うようです。説明では自動車のシガーライターソケットにも接続可能と書いてありましたが、車のシガーライターソケットの配線は大電流を流すようには出来ておらず、非常に細い配線ですので、電子レンジのような大電流が流れるものは、配線が過熱して危険だと思うのですが、説明ではシガーソケットへの接続の場合には温め時間が長くなるというような説明がありました。実際には、シガーライター接続は危険なので使用しない方が良いと思います。
しかし、それ以外は車のバッテリーなどに直結するなどの方法で使用できるようです。

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この記事で書いた考え方で行くと、いろいろ調べてみた結果、テストをしている動画映像では、DC12Vで700W程度の消費電力のようでした。つまり、60A程度の電流量なので、短時間の利用であれば、小さめの車のバッテリーでも使用できそうです。
AC100Vでは能力が落ちると説明にはあるので、調べてみたところ、この製品はアメリカの製品でAC120V仕様でした。アメリカのサイトに掲載されている仕様によると、DC12V、55アンペア、660ワットということです。日本の家電品の消費電力表示ではないので、あくまでも参考値として考える必要があります。
しかし、これなら日本の家電製品ではない(1000Wオーバーではない)ので、バッテリーへの負荷は低いと思われます。
インプレッション動画など、引き続き追いかけて、良いのが見つかればここにアップしてみたいと思います。

 
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