僕たち夫婦がヨットを最初に始めた海域は東京湾の横浜港周辺でその後に相模湾のヨットにも頻繁に乗せて頂いて修行を積んでいました。東京湾は大型船の往来が多く航路もあるので、見渡せば容易に航路標識が浮いているのを見つけることができました。赤、緑、黄色の航路標識は直感的に意味も解りますが、それ以外の柄がある標識は、ちょっと曖昧なままで、その場でスマホで調べておけば良かったのですが、自分の船を持つまでは、割といい加減にしてきました。
MALU号のホームポートである清水港周辺は、実は航路標識がとても少なく、航路標識を見て迷うことが無いのですが、西伊豆方面の沿岸や港の周辺にはぽつぽつ出てくることもあって、そこから再学習を始めたわけです。(本来なら知っておくべきことですからね。)
免許を持っていてもいい加減なのは、僕だけかな?って思っていたら、ヨット乗りの諸先輩方も、質問してみると割と曖昧な答えが多いので、皆さん、ご自分のよく行く海域のことをはよく知っておられても、標識に関してご存じないんだってことがわかりました。

航路標識のおさらい

そこで今回は、ヨットで日本中の海を楽しむためには、やっぱり航路標識のことは確実に頭に入れておくべきなので、「航路標識のおさらい」をそれに纏わるエピソードなども織り交ぜてしてみたいと思います。

因みに、上の写真の航路標識は、どういう意味でしょう? 後ほど、この答えも出てきますので、最後までおつきあいください。

世界共通の航路標識

現在の航路標識は、1つのルールを除き世界共通のルールとなっています。
航路標識のはじまりは、イギリスの灯台技師であったロバート・スティーブンソンが1828年に「右舷側は赤色、左舷側を黒色」にすることを提案したことに始まります。この頃のイギリスではヨット文化が大衆化し始めた頃で、イギリスの各地にロイヤルヨットグラブの名が鳴り響き始めていく頃で、1829年にはロイヤル・ジブラルタルクラブ(スペイン)がイギリス以外では初のクラブとして誕生した頃です。その後。1882年にイギリスでは「右舷を赤の円錐形、左舷を黒の円筒形」に統一することが決められました。国際航海が盛んになるにつれて、イギリスだけではなく国際的に統一が必要になってきたこともあり、1889年にアメリカのワシントンで開かれた国際海事会議を皮切りに何度も統一への努力が行われてきましたが実現することはなく、1937年にジュネーブで行われた国連の交通部会で「海上標識の統一に関する協約」ができましたが、その後すぐに第二次世界大戦が起きたことで、それを批准する国は殆どありませんでした。戦後の1957年になってようやく国際航路標識協会(IALA;International Association of Marine Aids to Navigation and Lighthouse Authorities)が設立され「浮標識の統一に関する技術委員会」が設置されましたが、世界には30種類以上もあった浮標識の統一化は一向に進まないままでした。そこに、1971年に世界で最も往来の激しいイギリスとフランスの間にあるドーバー海峡でアメリカのタンカーが沈没、沈没船の警告灯が設置されているにも関わらず、その意味が解らず数時間後にはその沈没船にドイツの貨物船が衝突し沈没、更に数週間後にも貨物船が沈没船に衝突し沈没する事故が起きたことで標識統一の必要性が再認識され、1980年に東京で行われたIALA総会でようやく「IALA海上浮標識」の採択が合意され国際統一が実現したわけです。

IALA

航路標識とは

航路標識は、海上において船舶が安全かつ能率的に航行するため、常に自船の位置と目的地の位置関係を確認し、危険な障害物を避け、安全な針路を把握するための指標とする航行援助施設をいいます。
航路標識は、「標識の塗色」「標識灯火の色」「光り方」が国際ルール等で定められています。

航路標識
航路標識

側面標識

側面標識には、「左舷標識」「右舷標識」の2種類があります。
この標識は航路の左側(左舷標識)や右側(右舷標識)に設置されていますが、必ずしも左右対で設置されているとは限らないので注意が必要です。
また、左側または右側とは、水源に向かって左または右のことで、水源は以下のように定められています。
➀港、湾、河川及びこれに接続する水域の水源は、港湾の奥部または河川の上流
➁瀬戸内海(関門海峡を含む宇高航路を除く)の水源は阪神港
➂宇高航路における水源は宇野港
➃八代海における水源は三角港
➄上記以外の水源は沖縄県の与那国島

側面標識だけは国によって左右の色が異なる

IALAの海上浮標識で1つだけ統一されていないのが、側面標識の左右の色です。
日本を含むアメリカ圏に属する国(B地域)は「左が緑」「右が赤」ですが、その他の国(A地域)は「左が赤」「右が緑」となっています。
そもそも、1980年まで国際標準が出来なかったのは、アメリカと欧州の対立にあったと言われており、最終的にこれだけは互いの言い分を聞き入れる形で2種類になってしまいました。

IALA

方位標識

方位標識は、北方位、東方位、西方位、南方位の4種類があります。その方位側に可航水域(航行可能な水域)があり、反対側に障害物があることを示しています。
方位標識は黒と黄の2色で塗り分けられていて、この黒と黄の標識を見たら注意すると先ずは覚えておきましょう。
方位標識

方位標識の東西南北の見分け方

上の一覧法を見て頂ければ分かる通り、塗色は黄色と黒の塗り分け、頭標は2つの三角形の向き、灯質(光り方)は白い光の連続点灯回数で分けられています。
方位標識の塗色の黄色は、実は接近しないと黄色には見えずに黒い帯だけが目立ちます。基本的に方位標識の見分けは、この黒の頭標の三角の向きと本体の黒い帯の場所で判断します。上の図のように、北は地図でも上、南は下、西は左で東は右ですので、北と南は上と下なので直感的に解ると思います。東と西は遠目には黒い帯の部分が膨張して見えるので、東は上下が膨張して見え、西は中央が膨張して見えるのをイメージして貰えば、それがそのまま頭標の三角の向きとなります。
簡単な覚え方がありますので、以下に書いておきます。

北方位標識

北は上です。これは塗色の黒が上、三角形が2個とも上向きなので、上上です。
灯質は、北は12時なので、12回のフラッシュが連なっていて、切れ間が無い(連続急せん光)です。

南方位標識

南は下です。これは塗色の黒が下、三角形が2個とも下向きなので、下下です。
灯質は、南は6時なので、6回のフラッシュのあとに1回長い光のあと消灯の繰り返し(群急せん光:毎15秒に6急せん光と1長せん光)です。

東方位標識

東は上下です。これは塗色の黒が上と下(中央が黄)、三角形が上が上向き、下が下向きなので、上下です。
灯質は、東は3時なので、3回のフラッシュのあとに消灯の繰り返し(群急せん光:毎10秒に3急せん光)です。
ひがしは頭標が遠目に、ひし形に見えるので、と覚えるとわかり易いですね。

西方位標識

西は下上です。これは塗色の黒が真ん中(上下が黄)、三角形が上が下向き、下が上向きなので、下上です。
灯質は、西は9時なので、9回のフラッシュのあとに消灯の繰り返し(群急せん光:毎15秒に9急せん光)です。
西は頭標が東の正反対なので、ひし型で無ければ西ということですね。(東基準ですが…。)

孤立障害標識

この標識は黒に赤と最も危険度が高いことをイメージさせる色使いです。標識のある位置付近には、岩礁、浅瀬、沈船などの障害が孤立してあることを示す標識です。この標識の周囲には接近しないようにしましょう。(近寄らず、遠くに避けることが肝要です。)
灯質は、白のフラッシュ2回の繰り返しですから、複数回のフラッシュは危険を示しています。

安全水域標識

この標識は赤白の縦向けのボーダーでピエロのように見えます。ここは安全水域だということをイメージさせるストレスの無いイメージの通り、この周囲は可航水域であることを示しています。また、標識の位置が航路の中央であることも示しています。
危険な水域を示すのは黒、注意を促す色が黄、に対して、赤白でおめでたい感じが安全を示しています。
灯質は白い光の複数回のフラッシュが危険を示し、ゆっくり点減するのは安全を示します。

特殊標識

この標識は見た目に全体が黄ですので、注意を促しているのはイメージできますね。
工事区域、土砂捨場、パイプライン、海洋観測ブイなど、特定の目的のために使われる標識です。
頭標もバツなので、ダメという事で「近寄るな」という意味です。
灯質も黄色の光なので、黄色を見たら「近寄るな」です。

緊急沈船標識

以前は孤立障害標識でも沈船を示していましたが、沈船専用に設定された標識が緊急沈船標識です。
黄色と青の縦縞で、頭に十字の頭標が乗っています。
黄色は「近寄るな」で、十字はキリスト教のクロス(十字架)をイメージしますね。
灯質は、黄色と青で特殊なので直ぐに解ります。

航路標識の特徴まとめ

塗色:黒が入っていたら「危険」、黄が入っていたら「近寄るな」
:白の複数回フラッシュは「危険」、白のゆっくり点減は「安全」、黄が入っていたら「近寄るな」

最後に…「特徴を覚えれば簡単」

海の殆どの場所には標識はありません。逆に言えば、標識がある場所という事は何か危険があるという事ですから、標識のある場所には先ずは注意が必要だという事です。標識の意味を読み取って航行することで安全が確保されるということですから、標識を丸暗記するというよりも、色や光で直感的に理解できるように自分なりに理解しておくことが大切です。

さて、冒頭の写真の航路標識の意味は解りましたか? 答えは、「南方位標識」ですね。南側は航行可能で北側に危険があるという事ですね。
南側は航行可能でも、やはり黄色が入っている標識ですから「近寄るな」という事です。十分な距離をとって南側を通過するようにしましょう。

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