ボート免許(正しくは「小型船舶操縦免許」)は、ヨット(セーリングクルーザー)の操船に必要なことは以前にこのブログ「ヨットと小型船舶操縦免許」でもご説明しました。港を出てしまえば船長の管理下で免許を持っていなくても操船することは可能ですが、海上での交通ルールや基本的な操船法などの知識は最低限度必要ですし、ヨットクルーとしてオーナー船に乗せて貰うにしても、免許を持っておく=正しい知識を持っているという事で、これはヨットライフを始めるにあたってとても大切なことです。

僕の場合、ボート免許を取ろうと決めてからから実際に免許証を手にするまでにそんなに時間は掛かりませんでした。免許の必要性を感じ始めた当初から教習所に行ってなるべく短期集中で手っ取り早く取っちゃおうと考えていたこともありますが、ダイバーとして長く海に関わっていたこともあり、ある程度の予備知識があったことも手伝って、周囲の人に「もう取っちゃったの?」って驚かれる程、早くに免許を取ることができました。

しかし、これまであまり海に関わってきたことのない人がボート免許を取ろうという事になると、解らないことが多く、先ずはスマホやパソコンでググってみようということになると思います。正直、私自身も何処の教習所に行こうというような具体的なところまでは決めてはいなかったので、やはりネットで調べて自分の条件に最も合った教習所探しをしました。当時の僕は今回書くようなことまでは知らずに、あたりまえのように教習所に入りましたが、実はボート免許を取る方法としては、 教習所に行く以外にも方法があります。 また、それによって掛かるコストや時間も異なりますが、どの方法がベストということはありません。理由は、人其々の考え方や条件などにもよるからです。

ネットで検索してみると、実際に物凄い数のボート免許取得に関する広告やホームページがありますが、その中から自分に合った方法を選択することも結構大変そうです。また、免許を取ろうとしていた当時の僕のように、いろんな方法や違いがあることを知らずに、結構迷ってしまうということもあるのではないかと思います。

そこで今回は、ボート免許の取り方について、できるだけわかり易くまとめてみたいと思います。
尚、ここでは免許制度や免許の種類などについては説明していませんので、先ずはそのあたりのことが知りたいという方はこちら「ヨットと小型船舶操縦免許」のページをご覧ください。

ボート免許取得の方法

ボート免許は自動車の免許と同じく、小型船舶操縦士国家試験(身体検査・学科試験・実技試験の3つ)に合格するか、または登録小型船舶教習所で規定の教習を受講し修了試験に合格する必要があります。
先ず免許を取ることができる身体であること、学科における知識と実技による操船技術を習得して、試験(学科試験と実技試験)に合格すれば免許を取得できるということです。

主な方法は、➀「受験コース」(小型船舶操縦士国家試験を受験する)、➁「教習コース」(登録小型船舶教習所において一定期間の講習を受講した後に国家試験同等の内容である学科及び実技の修了試験(教習所によっては修了検定や修了審査と言ったりします)に合格すれば国家試験が免除される)の二つの方法があります。

冒頭で教習所に行く以外にも方法があると書きましたが、それは「教習コース」以外に「受験コース」があり、その中にも幾つかの選択肢があるからです。

ボート免許を取得するためには、以下の4つの方法があります。

1.独習して国家試験を受験
2.ボートスクールに通ってから国家試験を受験
3.オンライン教室&実技講習を受けて国家試験を受験
4.登録小型船舶教習所(国家試験免除)

以下でそれぞれについて説明したいと思います。

1.独習して国家試験を受験

基本的に免許を取得する方法の最もベーシックは、独習により知識と技術を習得し、国家試験に臨むというものです。俗にいうところの「一発試験」と言うやつです。
独習する場合には、教本や問題集、参考書等は必要になりますので適宜購入する必要があります。

また、教本だけでは全てを丸暗記することになり効率的ではありませんので、これまでの試験出題傾向を知るためにも過去問題集を解いておくと良いようです。
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参考書はこんなものもあります。
1級を目指す場合には、海図のこの本は必須です。
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海図の実習にはこれも必要です。

<メリット・デメリット>
独習は、コスト的には最も費用が掛からないという面がメリットではあります。出題傾向は時代によって変化してきますので、過去問題集や参考書などはできるだけ最新のものを使うようにしましょう。
操船実習については知り合いの船でやらせてもらうしか方法がありません、しかし港則法の適用のある港内及び海上交通安全法(東京湾・伊勢湾・瀬戸内海)にある航路を航行する場合には免許所有者でなければ操縦することはできません。(免許を持たない人が船長の監督下で港の中で操船することが出来なくなってしまいました。)つまり、操船の練習は港の外(広い水域)でしかできません。離着岸などの練習は港があってこそですから残念ながら練習することができません。そう言ったことから、実技だけはボートスクールなどの実技講習を受講することが最近では一般的です。

2.ボートスクールに通ってから国家試験を受験

全国にボートスクールは198箇所(2020年3月31日現在)あります。マリーナ運営やボート販売などを行う企業、または免許スクール事業を専門にしている企業などが講習を実施しています。日数はボートスクールにより異なりますが、1級で最大4日から5日程度、2級で2日から3日程度が一般的です。週末毎の通いのコースや地域によっては合宿コースなどで一気にやってしまうなど、スクールによって様々なスケジュールがあります。

全国のボートスクールの一覧は、こちら(JMRAボートライセンスオフィシャルサイト)からご覧いただけます。

<メリット・デメリット>
試験合格に向け各免許スクールは独自のカリキュラムを持って講習を行っていますので、独学独習よりも効率的に学科や実技を習得することができます。スクールに行く最も大きなメリットは試験対策を徹底的にやってくれることですから、学科においては出題傾向に特化した内容を講習で教えてくれます。スクールの中には学科は独習で実技講習のみという形で料金を低く抑えているところもあります。料金は登録小型船舶教習所よりも割安に設定されていますが、実際には国家試験の受験費用を別途支払わなければならないので、トータルで見れば同じような金額になる傾向にあります。

3.オンライン教室&実技講習を受けて国家試験を受験

オンライン教室は、ボートスクールの学科部分のeラーニング版です。スマホやタブレット、パソコンを用いて、自分の好きな時間を使って学科を進めてゆくことができるものです。実技については、別に実技講習を受講し、国家試験受験準備をするものです。この仕組みはヤマハボート教室が展開しているもので、通称「スマ免」と呼ばれています。
スマ免「スマ免」はヤマハボート免許教室のリアル教室との連携ですので、ボートスクールと同じく学科と実技の試験対策をして国家試験を受験する方法と、次の項目で紹介する登録小型船舶教習所との連携で実技試験のみ国家試験免除で学科のみ国家試験を受けると言う2タイプが準備されています。

「スマ免」に関する詳細については、こちら(ヤマハボート免許教室の小型船舶免許オンラインコース「スマ免」サイト)からご覧いただけます。サイト内には無料体験版でお試しもできますので、大体の感じを掴むことができます。

<メリット・デメリット>
この仕組みはなんと言っても時間の無い人や学科講習に通学ができないような人には向いている仕組みです。実技講習は必ず受けなければならないですが、この仕組みでの学科講習は自分の空いた時間を使って、いつでも何処でも行なう事ができます。「スマ免」の学科講習では、講習、練習問題、暗記対策、試験シュミレーションと試験対策に必要な最新コンテンツが準備されているので、独習で教材を見て学習するよりも効率的に学習を進めることができるようになっています。

4.登録小型船舶教習所(国家試験免除)

全国には53箇所の登録小型船舶教習所(以下、登録教習所)があります。(2020年3月31日現在)
自動車運転免許でいうところの国家試験免除の教習所と同じ仕組みで、国家試験会場(自動車の場合には全国の運転免許センター)で行われる試験にわざわざ行かなくても登録教習所内で実施する修了試験に合格すれば、国家試験に行かなくても免許が交付される仕組みのことを国家試験免除と言っています。
つまり、登録教習所は国家試験と同等の内容の試験を教習所内で独自に随時実施できるということ国家試験免除という言葉で表現しており修了試験には合格する必要があります。決して試験が無くなるわけではありません。

全国の登録小型船舶教習所の一覧は、こちら(国土交通省Webサイト)からご覧いただけます。

<メリット・デメリット>
国家試験免除と言われているのに結局のところ試験は教習所内で行われるのであれば教習所に通うメリットはないように一見感じますが、実はそうではありません。
教習所に通う最大のメリットは2つあります。1つは「ワンストップで免許取得までが完結できる」、もう1つは「ちょっと長くなりますが、タイムスケジュール(時間割)です。教習所での修了試験は講習を受けた当日の直後に実施されるようになっています。国家試験を受験する場合には、学習を済ませて国家試験開催日に会場に集まって受験することになるので試験は必ず別日になります。つまり、教習所の場合には習った直後に試験が行われるので 記憶が鮮明なうちに試験を受けることができる わけです。また、試験直前にも 出題傾向に沿ったおさらい などをしてからの試験を行いますので、きちんと真面目に受講していれば殆ど試験に不合格という心配は無いと言えます。」これが登録教習所の最大のメリットとも言えると思います。また、教習所によっては、短期集中コースやオーダーメイドで自分のスケジュールに合わせた講習を実施してくれるところなど、短期間や自分のスケジュールで取得したい人には最適です。
デメリットは他のどの免許取得方法に比べて費用が掛かるということです。しかし、最近ではボートスクール並みの費用で受講できる登録教習所も出てきています。

ボートスクールと登録小型船舶教習所の違い

登録小型船舶教習所(以下、登録教習所)以外でボート免許の講習を行っている業者のことをボートスクールと言っています。ボートスクールは学科や実技の講習を行いますが、最終的に受講者は国土交通省が業務委託するJMRA(一般財団法人日本海洋レジャー安全・振興協会)が実施する国家試験を受験します。ボートスクールのWebサイトを見ると、登録教習所との違いが明確ではなく、まるでそのボートスクールで免許取得までができるように見えるサイトが少なくありません。しかし、ワンストップ(同じ場所)で教習から免許取得までが出来るのは登録教習所だけです。しかし、ボートスクールはあたかも1つの場所で講習から免許取得までできるように見せたりしているところもありますが、よく内容を見ていると、講習場所と実習場所が異なっていたり、国家試験は近隣の会場で受験するなどの文言が書かれていたりします。最も混乱するのは、登録小型船舶教習所ではないボートスクールが登録小型船舶教習所と提携して国家試験免除コースを設定しているケースがあります。

施設面の違い

登録教習所は所内に、講義室、実習船(実習艇と自社桟橋)の設備を有していて、修了試験も所内で実施します。それに比べてボートスクールは、講義室だけであったり、実習船は別の国家試験用施設のものを借りたりしているところもあります。更に試験は国家試験の実施会場で別途受験することになります。

スケジュール面の違い

登録教習所は、所内で修了試験を随時実施できるので、基本的に教習スケジュールの中に修了試験が連続して実施されるスケジュールになっています。ボートスクールの場合には、講習だけが随時行われていて、国家試験はJMRAが定める会場で開催される日に合わせて受験します。講習スケジュールは、大体の場合にはボートスクールのある地域の国家試験日に合わせて開催される場合が多いようですが、近隣での国家試験開催回数が少ない地域では、国家試験に関係なくスケジューリングされているところも少なくありません。

免許取得にかかる費用

免許取得のために必要な費用は、大まかに言うと、教材にかかる費用、国家試験手数料、スクールだと講習費などになります。ボートスクールや指定教習所に通えば、教材費なども含まれた金額になります。
ここでは上でご紹介した4つの取得方法に沿っておおまかな費用をご紹介したいと思います。尚、地域や事業者によって料金に開きがあります。傾向としては、都市圏や需要の多い地域では数が多いことから割安なところも多い傾向にあります。

独習して国家試験を受験する場合

独習する場合、学科の教材費と実技講習受講費、国家試験手数料、登録免許税という事になります。
学科の教材費は、教本と問題集で大体3,000円程度、実技講習費25,000円から50,000円程度(平均35,000円)、国家試験手数料は25,900円(身体検査3,450円、学科試験3,550円、実技試験18,900円)、収入印紙代1,800円です。
2級の場合の合計はおよそ6万円~85,000円程度です。1級の場合には、2級に加えて教本と問題集に練習用海図も必要になります。また、学科試験料や印紙代も増えることから、2級に加えて8,000円くらいの追加にり、合計でおよそ7万円~9万円程度が必要となってきます。
実技講習費が地域や受けるボートスクールによってまちまちですので、開きが大きくなっています。また、実技講習を行うボートスクールで国家試験手数料まで含んだ実技講習を行っているところもあります。

ボートスクールに通ってから国家試験を受験する場合

ボートスクールを利用する場合、教材費、国家試験手数料、講習費がパッケージになっており、2級で大体90,000円前後です。安いところで7万円台、高いところで10万円弱までの幅があります。1級だと大体11万円前後、安いところで8万円台から、高いところで13万円位迄幅となります。
スクールによって含まれるものの金額に違いが若干あったりします。多く見られるのが、海事代理の申請代行手数料が別になっていたりします。

オンライン教室&実技講習を受けて国家試験を受験する場合

ヤマハの「スマ免」を利用して免許を取得する場合、2級の費用は国家試験受験費用を含み89,900円、費用の内訳は、受講料、申請代行料、印紙税、国家試験料(身体、学科、実技)の全てが含まれています。1級の場合には115,500円です。
実技のみ国家試験免除コースもあり、2級で98,500円、1級で131,200円となっています。費用の内訳は、受講料、申請代行料、印紙税、国家試験(身体、学科)が含まれています。

登録小型船舶教習所の場合

登録小型船舶教習所を利用する場合、費用は地域により開きがありますが、2級で大体13万円程度、1級で15万円程度が多いです。東京や大阪の都市圏は、利用者が多いこともあって2級で9万円前後、1級で12万円と言うところもあります。費用には免許取得までの全てが含まれています。また、冬場は受講者数が少なくなることから、キャンペーンなどで特別料金になる教習所もあります。

免許取得までにかかる時間

時間は人によってもまちまちだと思いますが、登録小型船舶教習所に定められている単位(時間)が目安になるかと思います。
2級の場合、学科12時間、実技4時間以上、1級の場合、2級に加えて12時間となっています。これを教習所のスケジュールに置き換えると、2級で学科2日、実技1日、1級だと2級に加えて学科2日増えます。
つまり、効率的に学習と実習ができれば、2級では3日~4日、1級では5日~6日で試験合格まで行けるという事です。これに受験コースの場合には、学科1日、実技1日の国家試験がありますから、連続日程で国家試験まで行けたとして、2級で5日~6日、1級で7日~8日となります。ボートスクールや登録教習所に免許発行申請を任せたとして、6日から14日程度で免許証が届きますので、2級で最速11日~最長で20日、1級で最速13日~最長で22日程度という事になります。

このことから、頑張れば1ヶ月弱で小型船舶操縦免許証は手にすることができるということが言えます。

最後に…

ボート免許の取り方を方法別にご紹介してきましたが、如何でしたでしょうか?
ボート免許制度が改定されてから、ボート免許はかなり取り易くなりました。内容が軽くなったことから費用面でもかなり安くなってきました。今や独習での免許取得はボートスクールで取るのとあまり変わらなくなってしまいました。この裏側には、独習で実技練習が出来なくなったことが大きな要因です。学科だけ独習するという考え方は有りますが、ボートスクール側は実習費だけの場合、割高な設定にしていることから、それなら学科もボートスクールで…と思わせるような価格設定になっています。このあたりは、ボートスクールも商売ですから、なかなか上手い設定だと思います。しかし、受講者側も丸暗記する手間や無駄な練習問題を延々やるよりも講師にしっかり教わって国家試験に向けた要点を押さえた講習を受けた方が時間的にも効率的ですから、多くの人がボートスクールにシフトしているものと思われます。
また更に、登録教習所はボートスクール寄りに価格設定してきていることで、ボート免許の取得コストが全体的に低くなってきています。これは取得する側からすれば嬉しい話です。令和の時代に入って、釣りブームが再燃し、ボートを持とうというニーズと共に免許取得者数も増えてきていることも、免許取得費用が安くなる傾向にある要因になっています。
最後に、試験に落ちたらどうなるのか?という疑問が残ることろですが、結論から言ってしまうと、余程不真面目でなければ試験に落ちることはありません。しかし、免許を取ろうとする皆さんは、免許を取ってボートに乗りたいわけですから、不真面目という事は考え難いですよね。ボート免許はそんなに複雑なものでも難しいものでもありません。海外では免許制度自体がない国も多く存在するほどです。しかし、海上交通には世界共通のルールがあり、日本ではその海上交通ルールを周知徹底させる目的で免許制度が存在しています。つまり、きちんと学んでルールを守って海に出ましょうという考え方です。これはつまり、学ぶ機会は免許取得のタイミングなのです。ですから、ヨットで海に出ようとするならば、それが例えクルーとしてであっても免許は必ず取った方が良いわけです。何故なら、 ヨットという遊びはヨットを操船して楽しむ遊び ですから、操船するなら必要最低限の世界共通の海上交通ルールを知っていることが必要な遊びでもあるということです。

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