自分たちのヨットを持とうって考え始めたとき、僕たち夫婦の場合、常に2人で乗ることを前提として考えていたので、2人で無理なく、そして安全に、安定感の高いヨットに乗りたいって考えていたことから、現在のMALU号に決めた経緯があります。ですから、1人で乗る(1人で操船する)というシングルハンドをヨット選びの条件に入れて考えるということはありませんでした。しかし、日本の多くのヨットを始めようとする人の場合、シングルハンドが前提条件となっている人が最近は非常に多い傾向にあるようです。また、欧米でも最近ではシングルハンドを前提とした艤装のヨット(プロダクションセーリングボート)が多く発売されて初めていて、イージーセーリングなんて言葉が飛び交うようになってきてもいるようです。
極論ですが結論から先に言えば、今やシングルハンドで操船することができないヨットは無いと言っても過言ではありません。しかし、どういう乗り方をしたいのか、どんなヨットライフを想像しているのか、どんなところに保管(係留)するのか、などなど…。これからヨットを持とうと考えている人が、どういうことを実現させたいと考えているかによって、アドバイスするヨットは異なってきます。
また、常識的な回答をするなら、シングルハンドでヨットに乗るなら30フィート前後のヨットにしておいた方が良いと言うのが、日本のヨット界では多く言われているようです。

シングルハンドセーリング
そこで今回は、「ヨット(セーリングクルーザー)を1人で操船できる大きさの限界とは?」というテーマでシングルハンダー(独りヨット乗り)に適したヨットとはどんなものなのかを考えるヒントを記事にしておきたいと思います。

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シングルハンダーの実態はどんな感じか?

シングルハンドに最適なヨットを考えてみる前に、現実的に実際のシングルハンダー達はどんなヨットに乗っているかというと、おおまかに以下のようにまとめることが出来ます。

  • 補助装置が全く無い場合:8メートル以下(およそ25フィート前後)
  • 補助装置がある場合:15メートル以下(およそ50フィート以下)
  • 経験豊富なヨットマンでも、その多くは10メートル前後(およそ35フィート前後)
  • 15メートルを超えるシングルハンダーは非常に珍しい

多くのシングルハンダーは、やはり小型のセーリングクルーザーから始め、ヨット経験と能力(つまり技量)が上がってきた段階でサイズの大きなヨットに乗り換えていると言うのが実態のようです。

これをみると長さの問題のように感じますが、実は長さ自体は問題ではありません。それより重要なことは、やはりヨットの経験と能力です。ヨットにおける多くの経験と様々な事象に対応できる操船能力があれば大きなヨットでもシングルハンドで乗りこなすことは不可能ではありません。

ヨットは大きい方が安定性があります。つまり、安定性は小さなヨットより大きなヨットの方が高くなります。大きなヨットの方が多少の波や風には影響を受けにくく、小さなヨットほど、この影響を大きく受けます。大きなヨットはドッキング以外に問題はそれほどなく、大きなヨットの方がコックピットでの操作は楽な場合が多く、コックピットに全てのラインや機器が集約されていたり、操船を補助する器具も整っていたりもします。

快適にセーリングするには何人必要か?

シングルハンドでセーリングすることが可能かという問題とは別に、快適にセーリングするためには何人必要かということも考えてみることにしましょう。おそらくヨットを手に入れようとしているあなたは、誰かに何かを証明するためのヨットを購入するわけではなく、素晴らしい経験をするためです。以下は、ボートの大きさに対して快適にセーリングすることができる人数を示しています。

  • 1人(シングルハンド):10メートル前後(およそ35フィート程度)
  • 2人(ダブルハンド):10メートルから15メートル(およそ35から50フィート)
  • クルーが必要:15メートル以上(50メートルを超える)

何故10メートルを超えると2人で操縦した方が快適か?

セーリング自体は1人でもそんなに難しいことではありません。しかし、ヨットが大きくなると他の全てが難しくなります。

  • ドッキング
    問題の最も大きな要因の1つはドッキングです。ドッキングだけは大きなヨットでは1人ではどうしようもない時が出てきます。せめて岸側で舫をとってくれる人がいれば話は別ですが、誰も居ない場所へ一人で大きなヨットでドッキングするのは、とても難しい場合が少なくありません。(波や風が無い時なら1人でも充分ドッキングはできます。しかし、強風時や荒天時のドッキングは補助無くしては難しいです。)
  • トラブルシュート
    ドッキング時以外にもうひとつ問題があります。それは、何か問題が起きた時です。何も問題が起きなければシングルハンドでも快適なセーリングは出来ます。しかし、ひとたび何か問題が起きてしまうと、1人より2人の方が快適です。それは、1人が操船やワッチに集中し、もう1人がトラブルシュティングに集中できるからです。例えば、急に荒天になりセイルをリーフしたいという時、1人は舵をしっかり握ってワッチし、もう一人がセイルのリーフ作業をすると言う感じです。エンジンが動かなくなったなんて時にも1人はコックピットでワッチを行い、もう1人が船底のエンジンを確認するのです。問題はこれだけではありませんが、問題の対処は大きなヨットほど大変になります。(問題の中には生理現象、わかりやすく言えばトイレも含まれます。)

快適という側面で考えたとき、やはり1人よりは2人の方が何かと便利であり、安心であるということイコール快適だということです。しかし、あまりに小さなヨットで2人と言うのは逆に快適ではありません。特に長いクルージング旅行などでは、ヨット自体が宿の役目もします。そう言った時に小さく狭いヨットでは快適ではありませんよね?

シングルハンドをヨットの長さと重さで考える

ヨットの大きさ(長さや重さ)で問題となることには、どんなことがあるかということを列記します。

  • ヨットのレイアウト
    シングルハンドでセーリングするためには、コックピットやデッキ上、キャビン内などの様々な物や器具、機器などのレイアウトがシングルハンドに適している必要があります。小さなヨットではあれば、全てが手近にあるので不便はありませんが、ヨットの全長が長くなれば、幅も広くなります。そう言った時に全ての物が遠く離れています。ウインチの配置や舵の位置、様々な機器の配置は操船に大きく影響します。
  • リモートコントロール
    レイアウト共に1人で操縦するためには、その器具や機器の場所まで移動している余裕はありません。ですから、大きなヨットの場合には、リモートでコントロールが可能であるかどうかがより重要になってきます。
  • パワーアシスト
    ヨットが大きく重たくなると、それだけ推進力が必要になるわけですから、セイルも機器も大きく重たくなります。それだけ大きな力が必要になります。つまり、力を補うアシストが必要です。
    アンカーを引き上げるにも、大きなヨットの場合は、大きく重たいアンカーで人力で上げるのはとても骨が折れます。やはり電動などのウインドラスは必要です。また、大きなセイルを上げ下げするにも、電動ウインチが必要になる場合もあります。
  • 桟橋や岸壁での作業
    桟橋や岸壁でのドッキング作業やドッキング後のドックライン(舫綱)の調整もヨットが大きくなればなるほど大変になります。全長10メートル程度のヨットでも5トン近くの重さがあります。幾ら水に浮いているとはいえ、人ひとりの力で容易に動かせるものではありません。ドッキング時に人の力で押したり引いたりできるヨットの重さはせいぜい水面に浮いた状態で数トン程度で、それも無風時に限られます。

シングルハンドでセーリングする場合に必要なもの

全長10メートル(およそ35フィート)以上のヨットでシングルハンドでセーリングする場合には、次に挙げるシステムを必ず検討すべきです。

  • オートパイロット(オートヘルム)
    海上で様々な作業を一人で行うためには、これは必需品です。舵を単に固定しておくだけでは、風や潮の流れに乗ってたった数分間目を離すだけでとんでもない向きになっていることも少なくありません。
  • 風向、風速計
    最近のヨットでこれらが付いてないヨットは少なくなりましたが、シングルハンドでの操船では必ず必要です。
  • バリヤード、シート、各種ライン類をコックピットまで引き込み出来る限りコックピット内で作業が出来るようにしておきます。
  • ウインドラス
    先にも書いたようにヨットが大きくなればアンカーやチェーンの重たさは人手では骨が折れる作業です。ウインドラスは必需品となります。
  • ローラーファーリング
    セイルをロールしてファーリングできることは、セイルの処理をしなくて済みます。セイルを下ろしても風をはらんでしまうことを防ぐことができ、操船が楽になります。

更にあった方が良い装備

  • レーダー
    夜間や見通しの悪いときの航行をシングルハンドで行おうとするときには、あった方が良い設備です。
  • スラスター
    シングルハンドでのドッキングが先に書いたように、最も大きな問題です。そのドッキングをアシストしてくれるのがスラスターです。

最後に… 「シングルハンドにおける限界」

私には、あなたの経験や技量はわかりません。シングルハンドでセーリングするということは、自分自身で経験や技量を冷静に評価し、それに合ったサイズのヨットを選び、操船し易い、コントロールし易い準備を十分に行う必要があります。
勿論、経験や技量だけでなく体力も必要です。何故なら、自分1人で何でもしなければならないのですから、運動量も当然多くなるわけです。世界を巡るオーシャンレーサーは1日に7000キロカロリーもの食事をレース中にしていても、20日間程度の航海で10キロ近く体重が減ってしまうと言います。それほどハードなセーリングはしないとしても、シングルハンドでセーリングするということは、頭も体もフル稼働の状態になるということを知っておく必要があります。
つまり、シングルハンドでセーリングをするためには、自分にとって余裕が持てる状態を確保することが安全なセーリングにつながります。それは、ヨットのサイズや装備、そして実際の航海でも、出来る限り無理がないようにすべきです。
しかし、日本ではかなり多くのシングルハンダーが居て、皆さんセーリングを安全に楽しまれています。そこには、多くの苦労やトライ&エラーの経験や工夫もあります。最初は港を出て少しだけセーリングすることができたとしても、それは大きな冒険です。徐々に航海できる範囲が広がり、技量も上がってくれば、長時間や遠距離の航海も出来るようになります。シングルハンダーの皆さんはとても慎重で決して無理なセーリングはしません。それも経験と技量が成せることです。
シングルハンドにおける限界は実のところありません。それはあなた次第だということです。
充分な準備と経験、技量があれば、シングルハンドでも世界中の海に出て行くことさえできるようになるわけです。

 
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