ヨット用品の殿堂ウエストマリン破産申請

前回の記事でも少し触れた「ウエストマリン」の破産申請についてですが、SNS等の日本ユーザー間でも話題になっており、ちょっと間違った理解で話が拡散されているので、今回はウエストマリンの破産申請について、あらためて整理しておきたいと思います。

さて、そもそもウエストマリンってなに?
って言う人もいるかもしれませんので、先ずはそこから。

ウエストマリンとは

アメリカのマリン関係用品全般の巨大ホームセンターと説明するのが日本の人には分かり易いかな?日本には同様のチェーンストアーは存在しないのですが、ヨット、ボート、などによる遊びが盛んなアメリカでは、超メジャーなチェーンストアー&ネット販売の会社です。海遊びに関する用品を全般的にを取り扱っており、アメリカ人なら船で何かあった時にはとりあえずウエストマリンに行けば何とかなると言った感じで利用されるお店です。

例えば、自分の船に不具合が出た時、ウエストマリンに行って必要な部材を買うとか、ヨットやボートメーカーに注文しないと手に入らないような部品でも、ウエストマリンが全部手配してくれる。更に、アパレルから海遊び用のグッズや小物まで、とにかく海遊びのための物は全てウエスマリンに行けば手に入ると言った感じです。また、一般の人向けだけでなくプロショップとしての一面も強くあり、マリーナやヨットハーバーのある街には必ずウエストマリンが近くにある。アメリカ人にとっては海といえばウエストマリンに行けばとにかく何とかなるという感じのお店です。

日本でも巨大なホームセンターが材料や道具などをプロ向けにも売っていたりしますが、直ぐに必要という時に巨大な店舗が職人さんの倉庫代わりという巨大ホームセンターと同様、それの海バージョンという理解が最も近しい説明になるかと思います。

創業は1968年で、元々はカリフォルニアのセーラー向けロープ販売から始まった会社で創業者はセーラーの Randy Repass という人物。

現在、北米を中心に230店舗前後展開しており、過去には、2000年代前半に BoatU.S. という競合店舗を買収して一時は「320店舗規模」まで拡大していました。

ウエストマリンの現状は?

2026年5月17日、West Marine はアメリカ連邦破産法「Chapter 11(連邦破産法11条)」を申請しました。
この11条と言うのは、日本の破産制度のような即時清算(会社消滅)ではなく、「事業を継続しながら再建する」ためのアメリカの企業再建型の倒産手続で借金や契約を整理し、再建を目指す制度です。日本でいうと、主に「民事再生」に近い制度とされており、それを申請した状態です。

つまり、店舗営業や通販事業は継続され、買った商品の保証・返品も継続予定。但し、企業再建ために一部業績の特に悪い店舗の整理・縮小の可能性は今後行われると思われます。また、借金については債権者と協議のうえ、裁判所の決定により圧縮(債権者がかなりの債権を放棄する)と再編作業が進行中という状態になります。

ウエストマリンの場合、かなり大多数の債権者が事業継続及び債権放棄に同意済みであり、再建作業は開始される見込みです。

Chapter 11 とは?

連邦破産裁判所へ破産申請すると通常は、債権回収、差押え、
訴訟、担保実行などが行われますが、Chapter11を申請した場合には、それら全てが裁判所決定により自動停止されます。これを Automatic Stay(自動停止) と呼び、債権者は債権回収作業を行うことができなくなります。

Chapter 11の大きな特徴は、破産申請をしても営業継続、従業員雇用継続、当然ですが商品販売も通常通り続けられる点です。
しかも多くの場合、旧経営陣がそのまま経営を続けます。これを DIP(Debtor in Possession)と言います。

裁判所監督下で、借金減額、支払期限延長、不採算店舗閉鎖、契約解除、資産売却などを行います。
また、必要であればDIPファイナンスという特別融資も受ることができます。これは「再建中でも運転資金を貸す制度」です。

会社は再建計画を提出し、債権者と裁判所の承認を得る必要があり承認を得ることができると、計画に沿って営業を継続しながら再建作業を実施することになります。
再建が成功すると通常企業として再出発することができ、失敗した場合にはChapter 7へ移行され、ここで初めて清算が開始されます。

Chapter 11 の実例としては、アメリカのデルタ航空やユナイテッド航空が申請して事業再建を行って通常会社として再出発しています。

会社側が公式説明


コロナ後によるボート特需の終焉と売上の減少、サプライチェーン混乱、異常気象、消費行動の変化、財務負担増を理由として挙げています。
また、債権者の殆どと再建支援契約(RSA)を結んでおり、再建案支持とのことです。

実際に聞こえてくる「本当の原因」

セーリング界隈や業界側では、かなり別の見方が強く、「実用品よりアパレル寄りになった」「価格が高すぎる」「店舗に専門知識がなくなった」「必要な艤装部品が在庫されなくなっ「AmazonやJamestownなど通販に負けた」「PE(投資ファンド)的経営でおかしくなった」という声が非常に多いです。

特に古いヨット乗りからは、昔は“必要なパーツがある店”だったが、今は服屋になったという批判がかなり見られることから、「プロ向けマリン用品店」が「ライフスタイル寄り大型チェーン」へ変化したことによる業績悪化が原因ではないかと言われています。

最後に… ヨット乗りの便利店

ウエストマリンはこのように、直ぐに清算消滅してしまうと言うことは無さそうですが、ヨット乗りにとって便利なお店であった旧来からのウエストマリン色は更に薄まるのではないかと危惧されています。

実際に私自身もハワイのウエストマリンには何度も足を運んだ経験があり、日本では現物を見て買うことが出来ない部品などが所狭しと巨大な店舗の中に置かれており、欲しい物だらけの店でした。しかし、ハワイにはコロナ禍以降は行けて無くて、次に行ったら買うものまで決めていたのですが、結局海外の各種ECサイトから現在は探して買うようなってしまい、私も店舗に行く機会は無くなってしまいました。

ヨット乗りの便利店として巨大化していったウエストマリンですが、時代の変化について行けなかったと言うべきでしょうか。
今後のウエストマリンでは、EC販売が更に強化されると各方面では予測されていますので、日本向けも更に買い易くなるといいのになって思ったりしています。是非、世界中のヨット乗りにとってロングテールな便利店であり続けて欲しいと思いますが、それは間違いなんでしょうかね…

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