ヨット用語に戸惑う 〜ギャレー編〜

ヨット用語

ヨットでは、料理をする場所を「キッチン」とは呼ばず、「ギャレー(Galley)」と呼びます。ヨットに乗っている人のみならず、船乗りなら当たり前のように使っている言葉ですが、考えてみれば少し不思議です。

家ならキッチン、レストランなら厨房。それが船だと、なぜ「ギャレー」というまったく違う名前になるのでしょうか。

Galleyという言葉を調べてみると、現在の「船の厨房」とはまったく関係のない意味も出てきます。さらに時代を遡ってみると、昔の船では現在とは違う呼び方が使われていたことも分かりました。

では、いつから船のキッチンを「ギャレー」と呼ぶようになったのか。そして、なぜその名前が使われるようになったのでしょうか。

今回は、普段何気なくヨット乗りが使っている「ギャレー」という言葉について、深掘りしてみたいと思います。

もともと船を表す言葉だった

英語の「galley」は、帆だけではなく、多くの櫂を使って進む細長い船「ガレー船」を表す言葉として、厨房という意味で使われるようになる何百年も前から使われている言葉です。

ガレー船は古代から地中海で使われてきた船で、船体は細長く、左右に多くの櫂を並べ、大勢の漕ぎ手によって進みました。風があれば帆も使いますが、風向きに左右されず、人の力で走らせることができるのが大きな特徴です。特に軍船としては、相手との距離を詰めたり、港への出入りをする際に、風を待たずに動けることが大きな利点でした。

英語の「galley」は、古フランス語の「galie」「galee」、中世ラテン語の「galea」、さらに後期ギリシャ語の「galea」へ遡るとされています。

古代ギリシャ語には γαλέη / γαλῆ(galéē / galê)という、イタチなどの小動物を意味する言葉があります。イタチの細長い体つきと船の細長い船体が似ていることから、このように呼ばれるようになったという説もあります。

英語では13世紀頃には、すでにこの種の船を指す言葉として「galley」が使われていました。

「ガレー船」と聞くと、鎖につながれた奴隷や囚人が櫂を漕いでいる姿を思い浮かべるかもしれません。実際、近世ヨーロッパでは囚人や奴隷を漕役に使ったガレー船が存在し、「galley slave」という言葉も生まれました。しかし、古代からすべてのガレー船を奴隷や囚人が漕いでいたわけではありません。時代や地域によっては、自由民や賃金を受け取る漕ぎ手も使われています。

つまり「Galley」という言葉には、現在の「船の厨房」という意味よりはるかに長い、ある種類の船を表す言葉としての歴史があります。

そうなると、なぜ船の厨房をGalley(ギャレー)と呼ぶようになったのかを考える時、最初に思いつくのは単純に「ガレー船に厨房があったからではないか」ということです。

実際に「Galley=船の厨房」の由来を調べると、ガレー船との関係で説明されているものもあります。

では、当時のガレー船では、料理をする場所を何と呼んでいたのでしょうか。

ガレー船にも、多くの乗員の食事を作るために火を使う場所がありました。それを船の種類と同じ「Galley」と呼んでいたのでしょうか。

実際の記録を調べてみると、そう単純ではありません。

地中海のガレー船では、火を使って調理する場所を「フォウゴン(fougon)」や「フォゴン(fogon)」、イタリア語では「フォコーネ(focone)」などと呼んでいました。18世紀フランスの『百科全書(Encyclopédie)』にも「FOUGON」という海事用語が掲載されています。

1757年の記述では、船員がこの言葉を小型船で料理をする場所の意味に使うと説明したうえで、「ガレー船のfougonは、漕ぎ手のベンチの中央にある」と書かれています。

さらに古い記録にも、この言葉は登場します。

15世紀のヴェネツィアの船乗りマイケル・オブ・ローズ(Michael of Rhodes)が残した航海・造船関係の記録にも「fogon」が登場し、船上の調理用火床を表す言葉として使われています。

ガレー船のfougonは、現代のヨットにあるようなシンクや収納、調理台までを備えた「キッチン」ではありません。火を安全に使うための火床を設け、その上に鍋などを掛けて調理するだけの場所でした。

つまり、少なくとも確認できる地中海のガレー船の記録では、調理場所を「Galley」と呼んでいたわけではなく、「fougon」「fogon」「focone」といった別の言葉が使われています。

ここまで調べると、一つの疑問が生まれます。

もし現在の船の厨房をGalleyと呼ぶ理由が、単純に「ガレー船の調理場をGalleyと呼んでいたから」なのであれば、当時のガレー船で調理場所を指す言葉としてGalleyが使われていてもよさそうです。

もちろん、これだけで現在の厨房を意味するGalleyとガレー船との関係を否定することはできません。ガレー船そのものを意味するGalleyという言葉から、後になって船の調理場所を意味するようになった可能性もありますか、しかし「ガレー船の厨房をGalleyと呼んでいた。それが現在まで残った」という単純な説明ではないように思うのです。

英国船ではCook-roomと呼ばれていた

現代では船の厨房のことを「Galley」と呼びますが、昔の英国船では「Cook-room(クックルーム)」という、かなり分かりやすい言葉が使われていました。

Cook-roomという言葉の歴史を遡ると、少なくとも16世紀まで確認することができます。

1553年、英国から北東航路を探すために出航した ヒュー・ウィロビー(Hugh Willoughby)と リチャード・チャンセラー(Richard Chancellor)の航海に関する規則には、「Cook-roomやその他の場所を清潔に保つこと」という指示が残されています。

さらに17世紀に入っても、この呼び方は使われています。

船乗りで探検家でもあった ジョン・スミス(John Smith)は、1627年の『A Sea Grammar』で、船内で食事を調理する場所を「Cooke-roome」と呼んでいます。

当時のCook-roomは、現代のキッチンとはかなり違うものでした。

電気もガスもありませんから、実際に火を焚かなければ料理はできません。古い英国船では、レンガなどで造られた火床や炉を設け、薪などを燃やして調理していました。大人数が乗る軍艦では、一度に大量の食事を用意しなければなりません。そこで問題になるのが、その火を船のどこで使うかです。

木造船の中で火を焚くのですから、場所を間違えれば火災につながります。また、Cook-roomから出る熱は、周囲に積まれた食料にも影響しました。

ジョン・スミスは、Cook-roomを船倉に置くと、その熱によって食料を傷めることがあると書いています。商船では船倉を貨物に使いたいという事情もあり、フォアキャッスルにCook-roomを設ける例もありました。

当時の船で料理をするには、単にCook-roomの場所を決めればよいわけではありません。木造船の中で毎日火を使う以上、火災を防ぎ、熱や煙を逃がしながら、安全に調理できる設備をどう設けるかという問題がありました。

そして重要なのは、この時代の英国船では、その場所を「Galley」ではなく「Cook-room」と呼んでいたことです。

16世紀はCook-room。17世紀もCook-room。ところが18世紀になると、それまでとは違う言葉が海事用語の記録に突然現れます。

1750年に現れた「Gally」

1750年、英国でトーマス・ライリー・ブランクリー(Thomas Riley Blanckley)が『A Naval Expositor』という海事用語集を出版しました。この本には、船の構造、艤装、装備、船員の役職など、当時の英国船で使われていたさまざまな海事用語が収録されています。

その中に「Gally」という見出しがあります。(現在の「Galley」とは綴りが少し違います。)ブランクリーはGallyを、次のように説明していす。

Gally is a Place in the Cook-Room, where the Grates are set up, and in which they make Fires, for boyling or roasting the Victuals.

日本語にすると、「Gallyとは、Cook-roomの中でGrates(グレイツ/火格子)を設置し、そこで火を焚いて食料を煮たり焼いたりする場所」となります。

ここで注目すべきなのは、ブランクリーが「Gallyとは船の厨房である」とは書いていないことです。同書には「Cook-room」という項目が別にあり、船によってフォアキャッスル、ミドルデッキ、デッキ下のプラットフォームなど、設置場所が異なるとも説明されています。

つまり1750年の段階では、Cook-room=料理をする部屋、Gally=Cook-roomの中で実際に火を使う場所として、二つの言葉が区別されています。

では、Gallyにあった「Grates」とは、どんなものだったのでしょうか。

Grateは火格子です。鉄の格子の上に薪などの燃料を置いて燃やすことで、格子の隙間から空気が入り、燃えた後の灰が下へ落ちます。ブランクリーは「Grates」という項目も設け、「Cook-roomに設置し、食料を調理するために火を焚くもの」と説明しています。

Cook-roomには、鍋を吊るすための金具、火を扱うフォーク、シャベル、トング、肉を焼くための串を載せるラック、オーブンの鉄製の蓋などもありました。さらに煙を外へ逃がす煙突があり、ブランクリーはこれを銅製で、フォアキャッスルに設けられていたと説明しています。

こうして見ると、当時のGallyがどんな場所だったのか、かなり具体的に想像できます。

現代のヨットでいうシンクや冷蔵庫、収納までを含めた「ギャレー」とはかなり違います。

1750年にGallyと呼ばれていたのは、Cook-roomの中でも、火格子を据え、実際に火を焚き、鍋を扱い、肉を焼く場所でした。いわば、Cook-roomの中の「加熱調理をする場所」です。

そして、ここに大きな疑問が残ります。

英国船では、それ以前から料理をする部屋をCook-roomと呼んでいました。それなら、何故その中の火を使う場所だけを、わざわざ「Gally」と呼ぶようになったのでしょうか。

ブランクリーは Gally が何であるかは説明しています。しかし、何故それをGallyと呼ぶのかについては説明が無いのです。

なぜ「Gally」と呼ばれるようになったのか

最初に考えられるのは、やはり「ガレー船(Galley)」との関係です。

Galley という言葉は13世紀頃にはガレー船を表す言葉として英語で使われていました。それが18世紀になると、船の調理場所という別の意味でも使われるようになります。

現在の語源辞典でも、「船上の調理炉、または調理室」という意味の Galley は1750年頃から確認されると書かれています。

それなら、ガレー船にあった調理場所が由来なのではないかと、そう考えたくなります。しかし、ここまで見てきたように、ガレー船の調理場所には別の呼び名があり、英国船には以前からCook-roomという言葉もありました。

では、ガレー船にあった火床と似ていたため、英国の船員がGallyと呼ぶようになったのでしょうか。これも考えられる説明ではありますが「ガレー船の火床に似ているのでGallyと呼んだ」と説明する当時の記録を探してみましたが確認できません。

もう一つ、18世紀に船の調理設備が変化したことで、新しい調理設備をGallyと呼ぶようになったという説明もあります。船内で火を扱う設備は、鉄を多く使い、火を囲い込み、鍋を安定させ、煙を煙突から外へ出す構造へと発達していきました。しかし、1750年のブランクリーが説明するGallyは、調理器具そのものの名称ではありません。火格子であるGratesは、別項目として説明されていますが、Gallyはあくまで、それを設置して火を使う「Place(場所)」を指す言葉です。ここでも「新しい調理設備が登場したので、それをGallyと呼んだ」という説明だけでは、辻褄が合いません。

結局、1750年の記録から確実に分かるのは、それまで英国船では料理をする部屋をCook-roomと呼んでいたこと。そして、そのCook-roomの中で実際に火を使う場所を、遅くとも1750年にはGallyと呼んでいたことです。

ところが、なぜその場所をGallyと呼んだのかについて、ブランクリーは何も説明していません。

もしかすると、「Galley」という綴りを見たことで、最初からガレー船との関係ばかりを考えていたのかもしれません。

もう一つの「gally」という言葉

ここで「Gally」という言葉そのものを、もう少し調べてみます。

1750年にブランクリーが記録した「Gally」は、現在使われている「Galley」とは綴りが違います。当時は英語の綴りが現在ほど完全に統一されていなかったため、Gallyを単にGalleyの異なる綴りと考えることもできます。実際にGallyがガレー船を意味するGalleyの異綴りとして使われた例もあります。

ところが当時の英語には、ガレー船とは語源の異なる「gally」という言葉も存在していました。

一つは「苦い」という意味です。
胆汁を意味する「gall」に由来する言葉で、「胆汁のような」「苦い」という意味を持つ古英語です。1665年、ロバート・フック(Robert Hooke)は『Micrographia』の中で「gally poisonous liquor(胆汁のように苦い毒液)」という表現を使っています。

さらに別の意味の「gally」もあります。
動詞で「怖がらせる」「怯えさせる」「悩ませる」といった意味を持つ言葉です。1700年には英国の作家トム・ブラウン(Tom Brown)が、人々が怯えている様子を「gallied」と表現した実例が残っています。1787年にフランシス・グロース(Francis Grose)が出版した『A Provincial Glossary』にも、GALLIED ― Frightened つまり「Gallied=怖がった、怯えた」と記されています。

ここで注意しなければならないことがあります。「苦い」というgallyと、「怖がらせる」というgallyは、同じように綴りますが、語源まで辿ると同じ言葉ではありません。そしてもちろん、これらが1750年に記録されたCook-roomのGallyの語源だったという証拠もありません。

しかし、ここで分かることがあります。

1750年前後の英国で「gally」という音を持つ言葉は、ガレー船だけを意味していたわけではなかったと言うことです。

ガレー船を表すGally。「苦い」というgally。「怖がらせる、怯えさせる」というgally。綴りや発音が近い、異なる由来の言葉が同じ時代に存在していたことは確かな事実です。

当時の船員たちだけに通じる言葉

船には、そこで働く船員たちの間で使われる独特の言葉が数多くありました。

帆や索具、操船などに関する専門用語だけではありません。

仲間同士で使う俗語や、皮肉を込めた言い回し、陸上の人には意味が分からないような言葉も使われていました。

こうした船員言葉がどれほど独特だったのかを知ることができる資料があります。

1867年に出版されたウィリアム・ヘンリー・スミス(William Henry Smyth)の『The Sailor’s Word-Book』です。スミスは英国海軍の軍人で、長年にわたって集めた海事用語をこの辞典にまとめました。その序文で、スミスは船員が使う俗語を「galley-slang」と呼び、こうした言葉については、士官でさえ意味が分からなくなることがあるため、説明する必要があるとしています。

実際に軍法会議で、上官に無礼な言葉を使ったとして船員が裁かれた際、その船員が使った言葉は、言い方によって敬意とも無礼とも受け取ることができ、意味の曖昧さが船員側に有利に扱われたという例まで紹介しています。

つまり船の上には、一般的な英語とは少し違う、船員たち独特の言葉の世界があったのです。

そして『The Sailor’s Word-Book』で「Galley」の周辺を見ると、興味深い言葉が並んでいます。

Galley-growlers:仕事をせず、不平ばかり言っている者たち。
Galley-packet:根拠のない噂。
Galley-pepper:調理中に食べ物の中へ偶然落ちる煤や灰。
Galley-stoker:仕事を避ける怠け者。
Galley-slang:新しく船員言葉に持ち込まれた俗語や、一般的な英語から見れば奇妙に聞こえる言葉。

こうして並べてみると、Galley-〇〇 という言葉を使った船員独特の表現がいくつも存在したことが分かります。

不平を言う者。仕事から逃げる者。根拠のない噂。料理に落ちる煤や灰。

少なくともGalleyを使った船員俗語には、上品で格式のある言葉とはかなり異なる、皮肉や不満を感じさせるものが目立ちます。

もちろん、これだけを理由に「Galleyという言葉そのものに悪い意味があった」と考えることはできません。
これらの言葉が記録されたのも、GallyがCook-roomの火を扱う場所として記録された1750年より後の時代です。

ただし、ここで重要なのは個々の言葉の語源ではありません。船員たちは、自分たちが毎日働く船の中で、一般社会とは少し違う言葉を作り、それを仲間同士で使っていました。時には士官でさえ、その言葉が何を意味するのか判断できないことがあったほどです。

だとすれば、1750年に海事用語集へ記録された「Gally」についても、最初から正式な設備名称として生まれた言葉だと考える必要はないのかもしれないという推論です。

それ以前から船員たちの間で使われていた現場言葉的な呼び名を、ブランクリーが海事用語として記録した可能性も否めないわけです。

Gallyはどんな場所だったのか

1750年に「Gally」と呼ばれていた場所へ、もう一度戻ってみましょう。

ブランクリーの説明では、そこはCook-roomの中でもGratesを据え、実際に火を焚いて食料を煮たり焼いたりする場所でした。

ここで陸上の厨房との大きな違いがあります。

船は動きます。

波があれば船体は左右にロールし、前後にピッチします。突然大きく傾くこともあります。その中で火を焚き、鍋を扱わなければなりません。鍋の中に入っているのは熱湯や熱々のスープ、煮汁など、熱い液体を大量に扱うこともあります。船が大きく揺れれば、鍋が揺れ動く。中身がこぼれる。熱い液体が人にかかる可能性もある。火格子から燃えている燃料や火の粉が飛ぶことも考えられます。

実際、17世紀の木造船では火災を非常に警戒していました。

当時の船員エドワード・バーロウ(Edward Barlow)は、料理人が夜に火を十分に消さなかったことが原因となった船内火災について記録しています。

1668年には、別の作業で加熱していたロジンと獣脂が鍋から吹きこぼれて火の中へ入り、炎となって甲板へ広がり、船が火災になりかけた出来事も記録しています。

船の上で火を使うということ自体が、慎重さを必要とする作業だったことが分かります。

17世紀のスウェーデン軍艦ヴァーサ(Vasa)の調理設備を調査した研究でも、木造部分から火を隔離するために大量のレンガが使われ、大きな鍋を吊り下げて使用していた構造が復元されています。

そして、もう一つ忘れてはいけないのが「熱」です。

火を焚けば、その周囲は当然熱くなります。煙は煙突から逃がせても、火の熱までなくなるわけではありません。煤や灰も出ます。

後世の船員が、料理の中へ偶然落ちる煤や灰を「Galley-pepper」と呼んでいたことからも、Galleyが煤や灰と無縁な場所ではなかったことが分かります。

火を焚く。鍋を扱う。肉を焼く。煤や灰が出る。しかも、その足元にある船そのものが揺れ動いている。現在のヨットでも、コンロをジンバルで支持したり、鍋が滑ったり落ちたりしないようにポットホルダーを使ったりします。それでも荒れた海での調理は大変な仕事です。まして18世紀の木造船です。

1750年にGallyと呼ばれていた場所は、単に「料理をする場所」というだけではありません。Cook-roomの中でも特に熱く、火を扱い、揺れる船の上では火傷や火災にも注意しなければならない、危険と隣り合わせの作業場所だったと考えるのが自然です。

では、そんな場所を、なぜ船員たちは「Gally」と呼んでいたのでしょうか。

ここまで見てきた記録を重ねてみると、一つの可能性が見えてきます。

最後に… Gallyは船員から生まれた言葉では?

ここからは、記録に残された事実ではなく、これまで調べてきた様々な角度からの検討結果による、MALU SAILING的な推論です。

現代でも、厳しい仕事をする人たちの間では、その職場や作業を皮肉たっぷりに独特の呼び方で表すことがあります。

つらい仕事を皮肉たっぷりの言葉で呼んだり、仲間内にしか分からない言葉で不満を言ったり、嫌な仕事を笑いに変えたりする。

辛い仕事をする船員たちにも、このような似たような言葉の使い方があったとしても不思議ではありません。

実際に、後世の記録には船員独特の俗語が数多く残り、士官でさえ意味を理解できない場合があったと記録されています。

そして当時の英語には、ガレー船としての意味とは関係のない「gally」という言葉も存在していました。「胆汁のように苦い」というgally。「怖がらせる」「怯えさせる」といった意味のgally。

これらの言葉がCook-roomのGallyの直接の語源ではないのか?

船員たちが言葉を考え作るときに、辞書に書かれた語源を考えて名付けたり、呼んだり、使ったりするわけではありません。音が似ている言葉を掛けたり、皮肉を込めたり、仲間同士で独自の意味を持たせたりすることがあります。

もしかすると Gally も、そうして生まれた船員たちの現場ことば、いわゆる 隠語やスラングのようなものがはじまりだったのではないか?

そして、もともとはCook-room全体を表す正式な名前ではなく、その中でも火を扱う、熱く、汚れ、危険も伴う持ち場を、そこで働く船員たちが皮肉を込めて「Gally」と呼んでいた。そこで働かなくても、あそこは「最悪だ」的な言葉として、船員たちの間でgallyという言葉が、いろんなところにも派生するようになった。

「Gally」と言えば仲間には分かる。

それが船から船へ伝わり、いつの間にか船員なら誰でも知っているスタンダードな言葉になった。

そして1750年、ブランクリーが海事用語を集めた時には、用語集に載せるほど、船乗りの間ではスタンダードな船員言葉になっていた。

そう考えれば、Gallyという言葉について「誰が名付けた」「何を語源とした」という記録が見つからないことも、これならそれほど不思議ではありません。

さらに時代が進むと、辛く熱い苦しい場所であるGallyは様々な工夫や改良を経て、いつしか火を使いながらも安全で、それほどは辛い場所でもないものとなり、やがて調理場全体を表す言葉「Galley」へと意味を広げていったのではないかというストーリーです。

今回のテーマを深掘りする中で、ギャレーの語源についての諸説をそれぞれ細かく検証してみました。特に気をつけたことが、きちんと検証可能な記録がある事実であることかどうかです。しかし、どれひとつとして、腑に落ちるところまでの結果を得ることができない。何かこじつけ的な無理を感じる説ばかりなのです。そして、考えられる仮定を片っ端から検証作業をして、ようやく辿り着いたのが、Galleyとは、そこで働いていた船員たちの思いや苦悩を現し使い始めた言葉から由来したのかもしれないと言うことだったのです。因みにこの説は、これまでに誰も発表したことの無い MALU SAILINGオリジナルの仮説であることを最後に記しておきます。

  クリック頂けると嬉しいです
にほんブログ村 マリンスポーツブログ ヨットへ

コメント

タイトルとURLをコピーしました