東京オリンピックがコロナ禍の影響で無観客での開催となり、こんな疫病が蔓延している時期にスポーツの祭典なんて開催反対だと多くの人が反対の声を上げていましたが、始まってみると自由に行動できない鬱積した気持ちが世界中のアスリートたちの活躍で少し柔らだような感じがあります。彼らのスポーツマンシップと懸命に其々のスポーツ競技に打ち込んできたものを爆発させる姿、そして素晴らしい世界トップクラスの人たちの競演する姿は、世界中の人たちに力を与えたのではないかと思ったりしています。

さて、このスポーツマンシップという言葉ですが、英語で書くと”sportsmanship”となります。一つの単語になってはいますが、この複合語を分割すると
“sports”「スポーツ」
“man”「人」
“ship”「船」
と分けることが出来ますが、
「スポーツをする人」の「船」? これってちょっと不思議ですね。

そして、ヨットで楽しむ私たちには、似たような言葉で「シーマンシップ」”seamanship” という言葉があります。これも1つの単語となっていますが、元々は複合語で
“sea”「海」
“man”「人」
“ship”「船」
と分けることが出来ますが、
やっぱり「海の人」の「船」? やっぱりこれもちょっと不思議ですね。

そして、シーマンシップの意味をスポーツマンシップと言葉の感じが似ているからと言って、同じイメージの物だとよく混同されて使っているのを見かけます。ヨットマンなら正しく理解しておくべき言葉でもあるので、今回は「シーマンシップ」と「~シップ」について、ちょっと深堀りして書いておきたいと思います。

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「~シップ」”-ship” は意外にたくさんある

「シップ」”ship” と書かれているのだから、船に関連する言葉なのかな?ってちょっと思われるかもしれませんが、実は「~シップ」という言葉、探してみると明らかに船と関係なさそうなものもたくさんあります。
冒頭で書いた「スポーツマンシップ」や「シーマンシップ」を始め、他にも「メンバーシップ」「オーナーシップ」「フレンドシップ」「ミッドシップ」「チャンピオンシップ」「スキンシップ」「ショーマンシップ」「クラフトマンシップ」「リレーションシップ」「インターンシップ」「リーダーシップ」「パートナーシップ」「アントレプレナーシップ」「フェローシップ」などなど、聞いたことあるような、そして日常的に使われている「~シップ」がいっぱいあります。

「シップ」”ship” 起源は「船」ではない

「シップ」”ship” という言葉の起源を調べてみると、意外な事実が解ってきます。
“ship”という英語は、古英語の”scip”、ゲルマン祖語の”skipa-“(古ノルド語、古サクソン語、古フリジア語のskip、デンマーク語のskib、スウェーデン語のskepp、中オランダ語のscip、オランダ語のschip、古ドイツ語のskif、ドイツ語のschiff)などから来ている言葉で、これらの言葉は現代英語の”shape”「形」の語源でもある言葉です。
しかし、この「形」という言葉と「船」には大きな関係があります。
古代ヨーロッパで広く使われ始めた”scip”を源流とする言葉が、何故”ship”と”shape”に分かれたのかと言うと、これは解りにくいから分けて言うようになったのですね。では、どういう使い方をしていたのかと言うと「~な形」と言うような表現でこれらの言葉は使われ始めたわけです。つまり、名詞では無いということです。

「~な形」と「船」の起源

「船」の起源は、丸太を繰り抜いたものを水に浮かべて乗ったことが最初とされていて、漢字の「船」も象形文字の複合したものとして、左側の「舟」は丸太をくり抜いて造った小舟のことを指し、右側の「八」と「口」は川から物が流れ出る様子を表したものだと言われています。この太古の昔から、船は人間の最初の交通手段として発達し、最初は川の対岸へ行くための乗り物から、川の下流に行くための乗り物、そして海に出て行き徐々に行動範囲を広げるための人類最初の乗り物であったわけです。
そうすると、単なる丸太を繰り抜いただけの「小舟」から、徐々に様々な形の「船」が船の進化と共に誕生するわけです。特にややこしくなったのが、帆を使うように船が急速に進化し始め帆船時代に入って船が人類にとって非常に重要な交通手段であり大量輸送の手段となってからは、船の形は多くのバリエーションを持つようになるわけです。それを「帆が2枚の形」とか「帆が6枚の形」と言っても、帆の枚数が同じでも用途によって形が異なる船もたくさん出てきたことから、「何々の形」と言うようになったわけです。この形という言葉が”ship”の元となる”scip”という言葉なのです。
実は、帆船と言うと日本人には訓練船の日本丸や海王丸がおなじみで、何本ものマストと沢山の帆が付いているのをイメージしてしまうと思いますが、帆船の歴史上で「最も長期間」そして「最も多く造船」されたのは1本または2本マストの帆船です。当時の人たちは、様々な種類の帆船を「どこの国のどんな帆の形」と言うような感じで表現したわけです。現代流にいえば、「あれはバイキングの1本マストの四角い帆の形」だっていう感じで表現したわけです。「バイキング型の船」だっていうことですね。
後に更に船が沢山造船されるようになって、いちいち形を表現していると面倒なので帆船のタイプを表す用語として、ヨットでおなじみの1本マストの「スループ」や、快速帆船の「カッター」、2本マストだと帆の数や使い方によって「ケッチ」「ヨール」「スクーナー」「ブリッグ」「ブリガンティン」、3本マストの「バーケンティン」「バーク」などの名前が付けられ、会話としては「あれはブリガンティン型の船だ」って言うように、”ship”が船という意味になって、形を表す言葉としてタイプ名が生まれたわけです。『ブリガンティン型の「船」』と言うようになったわけです。
外国の船乗りは、日本語で書くような「ブリガンティン型の船」とは実際には言わず、単に「あれはブリガンティンだ」って言います。そして、”ship”の意味も大型船のことを指す言葉となり、小型の舟を”boat”と言い分けるようになります。
そして、ややこしかった「形」を表す言葉も、解り易く”shape”と”ship”に分けて使われ、後に「形」という言葉は”shape”になり、”ship”は大型船を示す「船」という単語になってしまったと言うわけです。

「~シップ」とは、どういう意味?

これまでの内容を読んで頂ければ大体想像はついてきたかと思いますが、現代における「~シップ」の意味は、この語源にあるように「~の形」という意味です。
「形」とは、そのものの「有様」、つまり「あるべき姿」、「こうあるべき様式」と言うような、形式や様式、資格、地位、身分、姿勢、心構えなどを表す言葉が「~シップ」です。

「メンバーシップ」を例にすると、メンバー制であるために、そのメンバーになるための資格やメンバーとして身分や地位、メンバーとしての姿勢や心構えを求められるということを総じてメンバーシップというわけです。つまり、「メンバーシップ」は「メンバーとしてあるべき姿(形)」のことを指します。

「シーマンシップ」と「スポーツマンシップ」

シップ “ship” については、これまでの説明で解ったと思います。では、今回テーマである「シーマンシップ」と「スポーツマンシップ」についてはどう考えれば良いのでしょうか?

スポーツマンシップとは?

先ずはスポーツマンシップについて考えてみることにしましょう。
「スポーツマンシップ」は「スポーツマンとしてあるべき姿(形)」ということになりますが、スポーツマンとしてあるべき姿(形)とは、どういうものなのでしょうか?

インターネット百科事典であるWikipediaによると、以下のように書かれています。
❝ スポーツマンシップ(英: sportsmanship)は、スポーツを起点とした相手に対する思いやり、ないしは一個人として正しい行い全ての総称である。❞

これを解り易く解説すると、スポーツマンとして競技を行ううえで自分だけが楽しむのではなく、同じスポーツをする仲間として競技相手に対して公正なプレーやリスペクト、マナーを以てスポーツを行うことと言う感じでしょうか。
しかし、近年ではスポーツマンシップが「スポーツ以外の場面においても競技選手としての素行などが優れていないと競技会に参加するべきではないという考え方」から、スポーツマンシップの定義は素行面などの広い意味で用いられている実態があります。

シーマンシップ とは?

「シーマンシップ」は「シーマンとしてあるべき姿(形)」ということになります。
では、シーマンとしてあるべき姿(形)とは、どういうものなのでしょうか?
これを考える時に解らないのが、「シーマン」”seaman” とは何かということです。スポーツマンなら、スポーツをする人と言うように直感的に解りますが、「シーマン」”seaman” は、”sea”「海」、”man”「人」の造語ですから、「海人」ということになります。沖縄の方言で「海人」(うみんちゅ)という言葉はありますが、それにしても具体的に何を指す言葉かはあいまいではありますが、おおざっぱに海が暮らしの中心になっている人々という意味合いの言葉のようです。では、英語における”seaman”とは、なんなのでしょうか?

シーマン とは?

“seaman” の現代英語における意味は、「主に船で生活し働いている人」「アメリカ海軍では最も下級の下士官以下の人」「ボートや船の船長や乗組員の能力を持った人」と説明されています。

その語源を調べてみると、そもそも “seaman” という言葉は船乗りの間で使われる言葉では無かったようです。
船長のことを船乗りの間では、英語で「マスター」”master” と言い、それ以外の海員のことを「マリナー」”mariner” とか「セイラ―」”sailor” と呼んでいました。では、「シーマン」”seaman” は何処から出てきた言葉なのでしょうか?
実は「シーマン」”seaman” という言葉は「陸上生活者」という意味の言葉である “landsman” の対義語として出てきたもので、「シーマン」の本来の意味は「海上生活者」という意味の言葉だということになります。しかし、何故「シーマン」という言葉が必要になったのでしょうか。それは、海で働く者、つまり船乗りのことを法律上定義する必要があったからです。この「船乗り」を最初に法律で定義したのは「イギリスの商船法規」であり、そこで”seaman”という言葉が出現したわけです。

シーマンシップの意味

シーマンは、現代英語における意味で「ボートや船の船長や乗組員の能力を持った人」とあります。実はシーマンシップにおけるシーマンは、単なる船員では無く、ボートや船の船長や乗組員としての能力を持った人であり、その能力持った人のあるべき姿(形)をシーマンシップと言うのです。英語の辞書では、シーマンシップを「操船術」と説明しています。
インターネット上の辞書である、Merriam-Websterによると、”SEAMANSHIP” は「操船術」と説明されています。
❝Definition of seamanship: the art or skill of handling, working, and navigating a ship❞
(操船術の定義は、「船の操船、実務、ナビゲーションの熟達した技術やスキル」のことを指します。)
【用例】 The captain shows great seamanship.(その船長は素晴らしい操船術を見せている。≒ 船長の操船術は素晴らしい。)
と言うように説明がされています。

シーマンシップの正しい理解

シーマンシップを英語の辞書から正しく理解しようとすると、「ボートや船の船長や乗組員の能力を持った人のあるべき姿」ということであり、それは「船の操船、実務、ナビゲーションの熟達した技術やスキル」であると言うことです。

スポーツマンシップのようなフェアプレーの精神やマナー、素行などにフォーカスしたものではなく、シーマンシップは技術やスキルを指していることが解ります。

何故、スポーツマンシップでは技術面が重要視されないでしょうか? それは、明らかな違いがそこにあるからです。スポーツにおける技術やスキルの高さは、そのプレイヤー個人の物です。しかし、船乗りの技術やスキルの高さは自分だけでなく他人にも影響することだからです。技術やスキルの低さは事故につながります。その事故によって自分だけでなく他人にも影響を与えてしまいます。事故を起こしても、大海原の誰も助けてくれないような場所で、人知れず事故を起こし、そのまま海の藻屑になってしまえば、誰にも迷惑は掛けません。しかし、誰かに知らせて助けに出てもらうということは、その助ける人にも危険が及ぶ可能性はあるわけです。
ですから、人に危険を及ぼさないためにも、「シーマンシップ」を持った「シーマン」であることが求められるというわけです。

最後に… SEAMANSHIP について書かれた書籍

ヨットを始めて、シーマンシップという言葉をよく耳にするようになって、この言葉が船乗りに対して示す言葉なんだと知った時、シーマンシップに必要なことって何なんだろうと思い、それについて書かれている書籍を探したところ見つけたのがこの本です。

The Annapolis Book of SEAMANSHIP
ちょっとカバーは破れてしまったりしていますが、僕は古本で手に入れました。8000円もする百科事典のようなハードカバーの重たい本で、内容は350頁もあります。この本におけるSEAMANSHIPは、表紙カバーの絵の通りヨット(sailboat)に向けて書かれています。

内容はヨットの仕組みや構造などの細かな説明、操船、気象、ナビゲーション、荒天帆走術、用具、健康、停泊、緊急事態、メンテナンスなどが3部構成の16章に分けて書かれています。残念ながら日本語翻訳本は初版の1989年と古い本ですが、アメリカでは第4版が出版されています。しかし、残念ながら日本語の最新版は無く、英語版しかありません。上の表紙の写真のものを古本などで見つけたら買いです!
是非、探してみてください。

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日本でSEAMANSHIPについて書かれた書籍が最近出版されました。但し、その内容はヨットではなくボートクルーに向けてのものです。これも翻訳本ですが、ボート向けですので、僕たちSAILBOATにも通じる内容は幅広くあります。

日本では現在、SEAMANSHIPとして書かれた書籍の販売はありませんが、最も近いイメージで書かれているのが、インナーセーリングという教本です。1巻から3巻までの物でしたが、最近4巻が出版されました。これら4冊をひとまとめにして、あとは船舶免許の教本を足したのが、SEAMANSHIPの本と言う感じでしょうか。是非、参考にしてみて欲しいと思います。

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