近年、豪華客船でのクルージングの旅が世界的に流行し、MALU号のホームポートである清水港にも世界各国のクルーズ船が続々と来航しています。ヨット好きの僕としては、大型客船であるクルーズ船にはあまり興味は無いのですが、死ぬまでに一度は地中海あたりの大型のセーリングヨットをプライベートチャーターしてみたいなんてことは思ったりしています。(あくまでも思うだけですけど…)しかし、大型セーリングヨットのプライベートンチャーターなんて、億万長者のセレブでないと経済的に実現の可能性は非常に低いですが、同じようなことを思う人は他にも居るもので、それをスモールシップそれもセーリングヨットで実現するクルーズ船があるというので早速調べてみました。
…という事で、
今回は「ヨットスタイルを愉しむスモールセーリングシップ」についてお話したいと思います。
Contents
クルーズ船の旅ってどんなもの?
ヨットスタイルのスモールセーリングシップのクルーズをお話する前に、クルーズ船について少しだけお話しておきます。
昔はクルーズ船の旅と言うと、大型客船で数月間、数百万円の旅費を掛け、諸外国を巡ると言うのが一般的で、お金持ちだけの特殊な旅というイメージがありました。しかし、現代のクルーズ旅行が世界的に流行している理由には、クルーズ船自体は世界中を巡っていても乗客は乗りたい区間や行きたいところだけという区間乗船ができるようになったこと、期間や区域を限定したクルーズシップの出現でリーズナブルな予算で誰もが気軽に利用できるようになったことや、世界的な高齢化社会の到来などが大きな理由です。
クルーズ船の旅は、言わば大型のエンターテイメントホテルが海上を移動しながら、様々な国や港、秘境などを巡り訪れる旅です。移動は大体の場合、寝ている間で昼間は到着地に下船して観光し、夜は船に戻って移動しながらディナーやショーなどで過ごすと言った具合です。勿論、長距離を長時間かけて航行し目的地へ移動することもありますが、そんな長距離の移動時間も充実した船内施設やアクティビティーで乗客を飽きさせない工夫が船内の随所に準備されています。当然、船旅ではのんびり何もしないで過ごすという選択肢もあります。食事や宿の心配は船の中に居れば一切不要ですから、あとは基本的に何をしていても良いわけです。
先進技術の導入により人気に拍車をかけている
船旅というと、船酔いに代表される不便や不快感がつきまといます。しかし、近年のクルーズ船には最新の先進技術が投入されることで船旅を誰もが気軽にできるものに変えています。例えば、世界中の何処にいてもインターネットWiFiが自室(船室内)で使えるのはあたりまえですし、高度なスタビライジング技術により船の揺れは最小に抑えられ(時化の時以外、殆ど感じることが無い)、エンジンの小型高出力化や高度の防音防振技術により船内の静粛性は高度に保たれるようになり、船内生活は昔に比べて高度に快適化されており、まるで高級ホテルに滞在しているかのなような船内環境となっています。
クルーズ船にも種類がある
近年のクルーズ船は、概ね3種類にクラス分けされています。
最も手軽なクルーズ船が「カジュアルクラス」と言われるもので、大体の目安は1泊100USドル程度。船の大きさは10万トン~20万トンクラスが世界的に主流で乗船定員も3000人~6000人と超大型リゾート施設が海上を動いているというイメージです。船内設備は船によって個性がありますが、スポーツ施設やプールは勿論のことウォータースライダーやパターゴルフコースまであったり、アクティブに楽しめる施設が多く船内イベントも多彩なのが特徴です。キッズクラブもなども充実しファミリー客や三世代家族客などのグループやアクティブに過ごしたいカップルなどにも人気です。
そして、その次のクラスが「プレミアムクラス」です。大体の目安は1泊200USドル程度。船の大きさは5万トンから10万トン程度の船が主流です。船のサイズ小さくなる分、乗船定員も2000人前後で、華やかさと上質さで落ち着いた雰囲気です。夫婦やカップルなどで、のんびり船旅を楽しむ感じですね。
そして、最後が「ラグジュアリークラス」と呼ばれる高級クルーズで、大体の目安は1泊400USドル以上で、船の大きさも5万トン以下と小さ目な船が多く乗船定員も500名程度とより限定感が増します。更に近年では3万トン、定員は300人までに抑えられた、よりラグジュアリーなクルーズ船が主流となっています。きめ細かなホスピタリティーが細部にまで行き届いたラグジュアリーなゲストサービスを受けることができます。
真のラグジュアリーは小さな船にこそある
ラグジュアリークラスのクルーズ船が3万トンクラスで300人程度の乗客数に比べ、今回ご紹介するのは「ヨットスタイル」と言う、一般的なクルーズ船に飽きた人たちが最後に到達する、プライベートチャーター船により近いクルーズ船です。船の大きさは数千トン、乗客定員数は100人以下とプライベート感はより高まります。
日本では「大きい船」=「良い船」と思われている傾向にありますが、それは実は違います。それは食事ひとつをとってみても、一度に数百人や数千人分を準備するという事は、高級ホテルの披露宴の料理よりも大変なことは容易に想像ができます。幾ら手の込んだ良い食材の料理を提供しようとしても、材料調達の問題から調理に至るまで、同じクオリティーの物をそれだけ数準備するには限界があります。しかし、百人以下の乗客ならば町の高級飲食店や高級ホテルのプレミアムレストランと変わりはありません。心のこもった美食を一人一人のゲストのために提供できるということです。
こういった、よりプライベート感の高いホスピタリティーとラグジュアリーサービスを提供するのが「ヨットスタイル」です。
ヨットスタイルのクルーズシップ “Le Ponant”
フランスのラグジュアリークルーズ船のオペレーターである Compagnie du Ponant(CDP)は12隻のクルーズ船を所有(2018年11月現在)していますが、その中でも同社のフラッグシップでありセーリングメガヨットなのが今回ご紹介する“Le Ponant”です。
総トン数1400トン、全長289フィート/88.55メートル、全幅39フィート/12メートル、乗客定員64名(クルーを入れた総定員数96名)と世界のクルーズ船でも最小の部類に入る船です。特徴はなんと言っても3本マストのセーリングクルーズ船であることです。
欧米のクルーズファンの間では、とりわけパーソナルなサービスを求める人たちを虜にしてやまない「ヨットスタイル」と呼ばれるクルーズ船で、64人の最大客数に対して船のクルー数は32人、クルー1人におおよそ2人の客数からも、そのパーソナルサービスの高さは想像できます。小型船でしかアクセスできないような港へ入ったり、船尾のマリーナデッキから直接海に入りシュノーケリングだって楽しめます。また、デッキ上に積まれた2隻テンダーボートはフランス製ゾディアックで、港の無いビーチサイドに停泊し上陸も可能です。ディナーのドレスコードでタキシード&ドレスで正装なんてことは、ヨットスタイルにはありません。プライベートヨット感覚のスマートカジュアルで一流シェフが厳選した地元食材でつくった食事を楽しんだりと、乗客はヨットオーナーであるかのような感覚を持つことができるクルーズ船なのです。
セーリングするクルージング船
Compagnie du Ponant(CDP)は、フランスのクルーズ船オペレーターでアドベンチャークルーズ旅行を専門としています。この船会社が最初の船として、このLe Ponuntをセーリングヨットスタイルのメガヨットで建造した理由も、こういった特徴のあるクルーズオペレーターと言う性格からです。アドベンチャークルーズと5スターホテルアメニティー、パーソナルでラグジュアリーなホスピタリティーを組み合わせた独特な世界観を演出するために、Le Ponant はメガセーリングヨットとしてデザインされたわけです。
Le Ponant は3本マストのスクーナー型帆船で、本格的なセーリングによる航行を行います。5枚のセール(帆)のセールエリアは1500㎡、セーリング時のクルージングスピードは最大14ノット(機走時には最大26ノット)で航行することができます。セーリング時にはデッキ上のヘルムステーションで操船を行うのも大型帆船と同じです。
アコモデーション
Le Ponant は4層のデッキで構成され、32の客室と2つのダイニング、2つのラウンジを持っており、客室の全てはオーシャンビューです。ダイニングは1つが船内にあり、もう1つはデッキ上のアウトドアにあります。客室は10㎡~13㎡の3クラスがあり、青系で統一されたインテリアは5スターホテルの佇まいです。
「ガストロノミックシップ」(食通の船)との異名を持つ Le Ponant、新鮮な地元食材をふんだんに使った毎日の食事のレベルは他のクルーズ船を超越するとともに、この船の愉しみのひとつでもあります。
最後に ~ヨット好きにはたまらないクルーズ船~
世界を見渡すと旧型帆船でクルーズを展開しているオペレーターもありますが、旧型船を用いたクルーズは主に往年の帆船自体を体験するという体験型航海にフォーカスしたものが主流です。しかし、欧米ではクルーズ船とプライベートチャーターヨットの中間にあるスモールシップコンセプトのヨットスタイルが流行しています。スモールシップにすることで、大型クルーズ船では入ることのできない場所へのアクセスが可能となり、よりプライベート感の高い場所での停泊や上陸が可能となります。ヨットマンである僕にとっては、セーリングをメインに諸外国の秘境を巡るクルーズ船は、是非一生に一度は経験してみたいものです。大型のセールを広げダイナミックに海上を帆走する現代の帆船を一度体験してみたいです。セレブリティーでなくても少し背伸びすれば届きそうな価格設定でもあるので、現役をリタイヤしたら是非乗ってみたいと思っています。
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