ヨットテーマのブログということで、完全なマクドナルドの話題にできないので、一応ヨットっぽいネタと絡めて書きます。
今X界隈で話題の「マクドナルド大阪庄内店がマクドナルドで日本一うまい店」として話題になっていることについて、テレビなどでも取り上げられており、どうしても気になったので書いておきたいと思います。

僕は学生時代に6年間マクドナルドでアルバイトしてた経験があります。当時、日本でのマクドナルド店舗数が60店くらいの頃で、後に300店舗目のオープン店にヘルプで入ったこともあります。凄いオープニングセレモニーだったのを覚えてます。そう、30年以上前の話です。

このマクドナルドでのアルバイト経験は、その後の社会人として生きていくうえで、僕の中で物凄く大きな経験となっただけでなく、今はヨットで海に出る時、セーリングする時などの段取りやルーティーンワークを考えるうえでも、マクドナルドの全てのオペレーションに対する考え方などが僕の中では生きていて、物凄く役立っているのです。(あー無理矢理な文章ですが、ホントの話です。)

因みに、マクドナルドでは店員さんのことをクルーと言います。船の世界みたいでしょ。

僕の大好きなビッグマック

話を戻して、「マクドナルド大阪庄内店がなぜ他の店より美味しく感じるのか?」についてですが、マクドナルドで30年くらい前のオペレーションを知っていて、現在のオペレーションとの違いを知っている人なら、何故美味しく感じるのか、その理由をおそらく多くの元クルーは気付いてると思います。

では、何が他の店と違うのか?

結論から先に言えば、「お客様が営業時間中に絶え間なく来て、ずっと作り続けていることでベストな状態に近い商品がお客様に提供できている」というところでしょうか。

…と言っても、他の店も同じじゃないの?と言われると思いますが、他店との違いは行列が出来るほど絶え間なく忙しいかどうかです。この店は外には行列の待ち客用の椅子まで出しているほどいつも忙しいのです。そうなると、常に本当の出来たて商品がお客様に提供されていることになります。裏返すと材料ストッカーに半調理ストックされる暇もなく商品がどんどん調理されて出ていくことで、ベストに近い商品が常にお客様に提供されているのです。(ここの説明、わかりにくいかもしれません)

僕のように30年以上前のオペレーションを知っている人は、商品を作る方は1人、カウンターに1人のツーマンオペレーションでお店を回してたという経験がある人も少なくないと思います。マクドナルドが当時から凄かったのは、この2人オペレーションの時に、何をどの順番でスタートすると厨房は1人で回すことができると言う仕組みができていたことです。つまりこれを平易な言葉で言うと、段取りや仕組みが事前にしっかりできていたという事です。当然、この頃は出来たてのバーガー類は常に美味しかったです。

ヨットも同じで、事前の準備と段取りが大切で、その上で操船オペレーションがスムーズに出来るように考えると言う流れになるのです。つまり、ヨットの場合はそう言った準備が乗り味に影響するということですね。(むりやりかな…)

話を戻します。

このマクドナルド大阪庄内店が美味しいのと、30年以上前のオペレーションがどう言う関係にあるのかと言うことになります。

実はマクドナルドの商品ですが、昔のオペレーションでマニュアル通りにきちんと調理作業をすると、驚くほど美味しくでき上がります。アメリカで一世を風靡したくらいですから当然ですね。そして、こう言ったファーストフードは出来たてが最も旨いんです。まあ、食べ物はなんでも殆ど出来たてが最も旨い、これは当たり前のことなんですが。この本当の出来たてを食べることができるのがオープニングマネジャーで、彼は朝の開店準備作業をするマネージャーなんですが、当時は基本的な商品(バーガー、フィレオフィッシュ、ポテト)は必ず朝一番にストックの材料を使って1つずつ作り、それを実食して確認してからお店を開けると言うことをしてました。(クオリティチェックを兼ねてた)この時、当然のことですがマニュアル通りの標準オペレーション(調理工程)でキッチリ作るわけですが、そうすると出来たてホヤホヤの最も旨い状態の商品を食べることができるのです。これを経験してる人は今のマクドナルドが不味くてしょうがないと思います。

当時のマクドナルドは完成品の作り置き方式で、その時間帯における予測販売数と商品を作ったら何分で捨てると言うルールの中で、商品をできるだけ切らさず、すぐにお客様に提供できるようにするシステムだったので、このベストで最も美味しい状態の商品を口にできるタイミングがあったんです。それは、たまたま出来たてのタイミングで直ぐに購入できて、それを直ぐにお店で食べればベストコンディションの物がお客様も口にすることができたわけです。出来て直後は最も美味しく、廃棄の時間に近づくほど冷めて不味くなるのです。廃棄までの時間は厳密に定められていて、どの商品も10分以内くらいです。当時はベストな状態を口することができたお客様は今よりかなり多かったと思います。因みに僕はテイクアウトで家に持って帰って食べるということは一度もしたことないです。だって美味しく無くなるから…。

しかし、現在のマクドナルドのオペレーションでは、バーガー系の商品は完全な出来たてが食べられなくなったんです。

この、「出来たて」の言葉の定義が、マクドナルドの昔と今では違ってしまったんです。これが、マクドナルドが昔より美味しくなくなった大きな理由です。(美味しく無くなったと言うのは正確ではなく、今のレベルでもそこそこ美味しいけれど、昔よりも味や食感が悪くなったと言うのが正しい表現です。)

実は、マクドナルドは2005年頃に「メイドフォーユー」と言う、お客様にできたてを提供するというふれこみでシステム変更したのですが、実は昔のマクドナルドを知っている人は、このシステム変更で美味しくなくなったと感じた人は少なくないと思います。マクドナルドファンの僕も、この頃から不味くなったので食べなくなりましたから…

この「メイドフォーユー」というシステム、美味しくなくなった最大の理由は、本当の意味での出来たて提供では無くなってしまったのです。

料理は食べ物の温度がとっても大切なんですが、ハンバーガーのようなシンプルな料理は特にそれが顕著なんです。マクドナルドの調理オペレーションでは、コレがメイドフォーユーに変更したことで薄れてしまったのです。

バーガーは、バンズ(パン)を温める(トースト又はスチーム)する工程と、具(ミートパティーやフィッシュポーションなど)を調理する工程。そして、バンズと具に加えて調味料や野菜を挟むと言う、大まかに3つの工程がありますが、この其々の温度が大切なのです。

バンズなら、トーストやスチームをしたての時が最も美味しく感じます。サクサクとかフワフワで温かと言う状態です。
具は、ミートなら焼きたてで肉汁が滴り落ちるような状態。
揚げ物(ポーション)なら、揚げたてで油を切ったホカホカサクサクの状態がベストです。
野菜をサンドするなら、シャキシャキがベストだし、ケチャップやマスタード、各種のソース類は冷たいと具やバンズが急激に冷めてしまい美味しさを失います。

コレらの温度が三位一体となって一つの商品の食感や味が決まりますが、現在のシステムではコレが壊れてしまっているのです。
ミートやポーションは、作り置きされた物で焼きたて揚げたてではない。そして、バンズに挟むタイミングなどもズレているのです。カウンターの外から中のクルーの動きを見ているだけでそれはわかりますし、たまにテレビなんかで作るところを番組でやってたりしますが、あれでは不味くなるよな…って。

ドレス(ケチャップやマスタード、各種ソースをのせること)されたバンズに焼きたて揚げたての具を直接乗せると言うオペレーションではないのです。バーガーならグリルから直接ドレスされたバンズに焼き上がったミートパティを少し肉汁を切って直接乗せると言うことがされておらず、焼いたミートをトレーに乗せてドレスステーションに回し、そこで一気にサンドする作業をしている。この流れの違いで焼きたてのミートパティーは冷めて肉汁が落ちて不味くなってしまいます。

昔はグリルの縁にドレス済みのバンズを乗せたトレーが引っ掛けられていて、そこに焼きたてのミートをダイレクトに乗せ、ヒール(パンの下側)を直前までトースターの予熱で温めた状態で乗せて出来上がりだったのです。コレだけでも大きく味(食感や温度)が違ってきます。

さて、大阪庄内店が他のマクドナルドの店と何が違うのか?

この店のオペレーションや機材の配置を見たわけでは無いので、あくまでも想像ですが、行列が出来る店ということなので、現行のシステムであるメイドフォーユーでは間に合わなくなり、旧式の調理オペレーションに近い状態に結果としてなっているように思います。

グリルも全部の面に火が入っていて、どんどんミートを焼いてると思います。そうすると、焼きたてミートが重なった状態でドレスステーションに回ってくるので、冷めずに肉汁もあまり抜けていない状態でバンズに挟まれていると思われます。以前に何かで見た時には、焼いたミートがストッカーケースに入っていて、そこからトングで取り出してバンズに乗せていたこともあったので、これでは焼きたてではないし、肉汁も完全に抜けて冷めてしまいます。肉汁が抜けて冷めたミートパティーほど不味いものはありません。
しかし、忙しい店だと結果として、割とダイレクトにバンズにミートを乗せたのと近い状態と温度感で出来上がっているものと思われます。ミートパティーだけでなく、フィレオフィッシュやチキンのポーションも、揚げたてに近い状態でドレス済みのバンズに乗せられる。
これによって、肉やポーションのジューシー感がかなり違ってきます。

メイドフォーユーは、お客様に対して出来たて提供をしているように文字面から見えますが、このシステムの最大の目的は廃棄量を減らすことにフォーカスされています。今で言うフードロスを減らす事なので、実質的には最も美味しい状態で提供すると言うことが犠牲になってしまったわけです。
おそらく当時このオペレーションを開発した人は、明らかに出来上がりの品質が以前に比べて落ちることを認識していたと思います。実態は過去の出来上がりより落ちることから、メイドフォーユーという言葉で作りたて感を強調したのだと思います。しかし、最終の商品組み立てをあなたのためにジャストインタイムでやったのであって、本来の熱調理段階からのメイドフォーユーではない、という言い方が分かり易いかもしれません。

まあ、ファーストフード店なのでコスト対比で考えると、味や食感が犠牲になっても販売価格を安く抑えると言う意味ではメイドフォーユーは大成功のシステム変更ではあります。しかし、マクドナルド創業者たちが現在の多くの店で提供されているバーガー類を食べたら、怒り出すこと間違いなしだと思います。

マクドナルド大阪庄内店は、オープン時間からお客様が並び商品を切れ間なく作り続けていることで、たまたまベストに近いコンディションの商品がお客様に提供できてしまっていると言うのが実態で、それが他に比べて美味しく感じる結果に繋がっているのだと思います。

また、調理工程だけではありません。

忙しいお店は、クルー同士の連携や気遣いも必要です。当然、店内の雰囲気も良くないと忙しい店舗はスムーズに回らない。これは、クルー個々の心掛けやモチベーションの高さが無いと実現できません。
素早いアクションは商品なら出来栄えにも影響しますし、結果として味にも影響します。
接客が良いと言うことは、カスタマーファーストで店内が動いている証拠で、クルーワークが円滑に動いている、結果として美味しい状態で商品がお客様の手に渡ると言うわけです。

ヨットでも、船の挙動や風の状態などをクルー個々が見極め、円滑にそれぞれがやるべきことを適切に行えば、船はスムーズに帆走ります。しかし、流れや段取りが悪いとギクシャクしてしまい、結果として風を逃してしまい上手く帆走れないものです。

おそらく、大阪庄内店のクルーは気持ちよくクルーワークしていると思います。厨房でも少しでも早く商品を提供しようと言う努力がシステムを超えた高い次元で働いていることから、結果としてベストに近い商品の出来上がりになっているのだと思います。

このメイドフォーユーシステム、他のバーガーチェーンでも真似て取り入れてしまっており、日本に戻ってきたバーガーキングも味が落ちてしまっています。(正直かなり不味いです)
業界最大手のマクドナルドが成功しているからと言っても、バーガーキングの良いところが完全に失われる結果になっており残念でならないです。

脱線してしまいましたが、現在のファーストフードチェーン店はフードロス問題は経営に大きく影響します。このバランスを崩すオペレーションの変更は会社の命取りになるほどの大問題です。しかし、実際には安いハンバーガーでも元々のレシピ通りにきっちり調理すれば、実際にはかなり美味しい食べ物です。最近は材料の品質などにも力を入れているのですから、昔より美味しくなって当然なんですが、残念ながらそこまで美味しくない。現在の調理オペレーションでは、その基本よりもコスト重視の観点から本来の美味しさが犠牲になっていると言うことです。

マクドナルド大阪庄内店の物が旨いと感じるのは、まさに熱々の出来たてを食べれる機会がこの店は多いからであり、この店で購入しても時間が少し経った物を食べれば他の店と変わりがないと感じる筈です。

残念ながら、他の店で出来たてを食べても美味しく感じることができれば良いのですが、メイドフォーユーシステムの調理工程では、それを厳密に守るとベストな物では無くなってしまうのです。
これ、グリルオーダーと言って本当に自分だけの為に作ってもらってもらうことができるオーダー方法があるのですが、残念ながらそうしても少し冷めた感じのものしか提供されないので、完全にオペレーションの変更が美味しさを犠牲にしていることがわかります。

少しオペレーションを変えれば、どこの店でも美味しいマクドナルド商品を提供することはできるのですが、そう言うオペレーション変更が現代マクドナルドでは難しいのかもしれません。

マクドナルド本部へのマスコミ各社の取材では、どこも変わらない筈、特に変わったことはしていないとのコメントのようです。まあ、本部としては口が裂けてもシステムの問題で…とは言えませんから。

でも、コストだけでなく、味や温度や食感まで良くなったら、マクドナルドは本当の意味で最強の飲食チェーンになると思うんですが、そういう期待はしてはダメなんでしょうか。

メイドフォーユーでも、たまに少し今日はいつもより美味しいと感じる時があります。
でも、圧倒的に肉汁が抜けた感じのパサパサ感が際立った時が多いのは、オペレーションの設計ミスなんだろうと思います。
フレンチフライやチキンナゲットなども揚げたてのタイミングで出てくれば、これも普段よりかなり美味しく感じます。

この美味しく感じる食感、これからのファーストフード業界の課題なのかもしれませんね。

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