ヨットに乗り始めは、いろいろなロープの結び方をなかなか覚えられないものです。たまにクルーとして乗る程度で月に数回では、なかなかロープワークをする機会も少ないからかもしれません。いざ使おうとすると忘れてしまって「あれ?」なんて先輩ヨットマンさえ居るくらいですが、これがヨットオーナーになると、幾らクルーが居てもやっぱり自分の船のことですから、様々なことがクルーと違って見えてくるし、気にもなってきますから、当然真剣になってできるようになるものです。
当の僕がそうでしたから…。

さて、前回の「ロープワークの基本を知るとヨットがより面白くなる」では、ヨットにおけるロープワークの基礎知識と3つのノット(結び)をご紹介しました。この3つのノットはヨット(セーリングボート)に限らず、パワーボートなどでも共通して使うものですが、今回はヨットに乗っていたら必ず知っておかないと不便するノットを中心に、利用シーン別にご紹介したいと思います。

ストッパー(抜け止め)は「ダブルオーバーハンドノット」

ダブルオーバーハンドノット
ヨットのロープはブロックなどを通ってコックピットまで引き込まれていますが、何かの拍子に抜けてしまうと操船に支障をきたします。そこで、ロープが抜けて行かないようにロープの端に抜け止めの「玉」をノット(結び)で作ります。玉をつくる結び方はいろいろありますが、簡単で解けにくく、必要な時には容易に解くことができるのが「ダブルオーバーハンドノット」
(正しくは、ダブルオーバーハンドストッパーノット “Double Overhand Stopper Knot”)です。
日本では裁縫などをするときに糸の端に抜け止めとして結び目をつくる「玉結び」のことです。

ダブルオーバーハンドノットの結び方

結び方は非常に簡単で、輪の中に端を2度通して両側を引くだけで作ることができます。しかし、この結びはノットの名前である本来の形「ダブルオーバーハンド」ではありません。
実は上のやり方は、本当のダブルハンドオーバーではありません。本当の結び方はロープの端を右手で持って、左手に手前から上回りで後ろに回して二度巻き付け(ダブルハンドオーバー)、巻き付けた輪の中に左側から右向けに端を通して両側を引っ張る(ノット)と言うのが正しい結び方です。出来上がった結び目もこちらが名前の通りの結び目になります。微妙に違うので是非試して見比べてみると面白いと思います。
ダブルオーバーハンドノットの結び方
2種類の結び方がありますが、どちらでも抜け止めの玉を作ることができるので、気に入った方を使うと良いと思いますが、スピード的には先にご紹介した方がスピーディーだと思います。

ロープをつなぐなら「シートベンド」

シートベンド
2本の太さの異なるロープを繫ぎ合わせて使う場合にシートベンドを使います。2本のロープの1本を曲げて(ベンド “bend”)し、もう一本を曲げたロープに結び付ける(ノット)ことから「シートベンドノット」と言います。
この結びは、両側からテンションが掛かっている時(両側から引っ張られている時)には緩むことがありませんが、テンションが無くなると容易に緩みます。つまり、テンションを無くせば簡単に解くことができます。

より強力につなぐなら「ダブルシートベンド」

その名のとおりダブルで巻き付けることで解けにくくなっています。簡易に繫ぐ時にはシートベンド、強固に繫ぐ時にはダブルシートベンドを使うと言った具合です。ダブルシートベンドだと、一度テンションを掛けておけば、テンションを緩めても自然に解けることはありません。
ダブルシートベンド
アンカーロープなどが足りなくなった場合に他のロープと繫いで使う場合には、必ずダブルシートベンドを使います。
また、より強固に繫ぎたい時には、ベンド(折り曲げ)側の端をダブルローリングヒッチで留めておけばベンドが抜ける心配は完全に無くなります。

テンションが掛かっているロープを引っ張るなら「ローリングヒッチ」

ローリングヒッチ
ジブシートやメインハリヤードなどをウインチで巻いている際に、ウインチへのロープの巻きがおかしくなってしまい、ウインチからロープを外すことが出来なくなったり、テンションを緩めることが出来なくなってしまうことがあります。こうなるとロープを切るしかありませんが、ローリングヒッチを使う事で、テンションの掛かっているロープに別のロープを結び付け、他のウインチでそのロープを引くことで、巻きがおかしくなったウインチへのテンションを抜くことができ、解くことが出来るようになります。
テンションの掛かっているロープに他のロープを巻きつけて他の方向にテンションを掛けたい時に、使うのが「ローリングヒッチ」です。

ローリングヒッチの結び方

ローリングヒッチ(2回巻く)
赤いロープが既にテンションが掛かっているロープで、青がこれからローリングヒッチで結んで引っ張ろうとしているロープです。写真左側に引っ張りたい場合には、左側に2度巻きます。
左に2度巻いた後、右側に一度巻いてヒッチします。そのあとに、ヒッチした端をきつく引っ張り上げます。(最初の写真のようにする)
これで出来上がりです。
ローリングヒッチ(1回巻く)
ローリングヒッチは、青いロープを左に引っ張らない限り(つまり、青いロープにテンションを掛けない限り)、結び目の位置は自由にスライドさせて移動させることができます。
青いロープを引っ張った時だけ赤いロープが折り曲げられてローリングヒッチがその位置に留まり、赤いロープの右側のみにテンションが掛かり引っ張られます。
ローリングヒッチされた位置から左側の赤いロープには青いロープを引くことでテンションが緩むというわけです。

最後に…

今回は3つの機能がある結びについてご紹介しました。
それぞれのシチュエーションは、そう頻繁に出てくるものではありませんが、必要な時に直ぐに使えるとやはり便利です。
必要でなくてもヨットに乗ったら、毎回忘れないよいうに練習しておけば、いつか自分のものになって、必要になった時にサッとできるようになります。

ロープワーク

是非、日頃から忘れないように、ヨットに乗るたびに練習しておかれることをお勧めします。

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