遊覧船やパワーボートに乗ったことがあるという人は割といても、ヨットには乗ったことがない人は多いと思います。こう言う僕も例に漏れず、ダイビングで海に数えきれないくらい行っていても、そして漁船やボートにも数えきれないくらい乗ったことがあっても、ヨットに誘われるまで1度も乗る機会がありませんでした。
ちょっとした笑い話ですが、妻に至っては「知り合いに誘われたんだけどヨット乗りに行ってみるかい?」と聞いてみたところ、手漕ぎボートのオールで水をかくジェスチャーで「ヨットってこれだっけ?」という始末…。そんな感じで、最近はヨットと言う乗り物のことも曖昧なわけですから、殆どの人がヨットは未経験と考えても過言ではないでしょう。
ヨットを所有して慣れてくると、次は自分たちだけではなく、家族や親類、友人や知り合いなど、ヨット未経験の人を乗せる機会も出てくると思います。多くの人は初めての未知の体験をする時には、多かれ少なかれ前日やそれ以前から緊張するものです。そんな人(ゲスト)を乗せようとする時には、普段のセーリングとは違った準備や気遣いがあった方がよいです。そして、できれば「また乗りたい」って言ってもらえたら嬉しいですよね。
そこで今回は、ヨットが初めての人(ゲスト)を乗せる時のヒントを書いておきたいと思います。
Contents
1. ちゃんと準備してもらう
先ずは、そのゲストが乗るということが決まったら、ゲストに対して準備しておくこと、持参するものなど、事前に簡単にでも説明しておくようにしましょう。面と向かって話す機会が取れなくても、電話やメール、メッセンジャーアプリ(LINEなど)などを使って、書いて送ることもできます。書き物の場合には、ひとこと電話で「読んでね」ってフォローしておくことも忘れないようにしましょう。
こちらは気軽に誘ったつもりで、相手の人も乗りたいと言っていても、よくよく考えてみるとヨットに関する予備知識が全くないわけですから、誘われた人は不安でたまらないってことがよくあります。そんな時、誘ってくれた人に気軽になんでも質問できる関係なら良いのですが、意外に聞けないか、聞かないか、聞こうとしない人が多いのです。ゲストにちゃんと準備してもらうことは、実は緊張や不安を和らげることができるのです。そして、そうすることはゲストだけでなく迎える側の自分たちも同じです。
例えば、どんな服装や履物で来た方がいいか、船酔いを避けるために前の日はちゃんと睡眠をとってきてもらうとか、朝はちゃんと食べて来るとか、持ち物は何があった方がよいかなどなど、初心者だった自分がこれまでどうしてきたかを思い返して、事前に情報を与えておくことが大切です。
実は、船酔いを怖がって何も食べないで来る人がいますが、これは完璧に逆効果です。更に、睡眠不足は普段乗り物酔いをしない人でも船酔いしてしまうこともあります。初めてのヨットでドキドキワクワクで眠れないなんてことが無いように、寝酒でも飲んでしっかり寝てきてもらうことも大切です。
2. ブリーフィングをする
誰もが海に出ることに興奮していると思います。しかし、乗り込んだらいつものようにさっと舫を解いて出航するのではなく、船に乗り込んだら先ずは大雑把にでも出港前のブリーフィングをしましょう。話しておくポイントは大体以下のとおりです。
* セイリング中に予想される天候や海況について
* どこに座って、どんな動きをゲストにしてもらうことがあるか
* ヨットの基本的な部分の名前と知っておくべき用語
* 危険な場所や気をつけておくべきこと(例/ブームパンチ、ロープ類を踏まない、足元に気をつける、キャビンには後ろ向きで降りるなど)
* ライフジャケットの使い方や注意事項
* トイレの位置と使い方
* 簡単な今日の航海の予定
3. 動くヨット上のリスクヘッジ
ブリーフィングを終えたら、いよいよ出航です。舫を解いてヨットを走らせ始めるわけですが、動くヨット上でゲストには必ず何処かを掴む、手で支えると言うことをしてもらうようにしましょう。仁王立ちなどもってのほかです。ゲストはヨットの動きに慣れていないので、転倒したり、ぶつかったりしがちです。これを軽減するために、必ずどこかに掴まってもらうようにします。移動する時も勢いで一気に移動するのではなく、どこかを掴んだり、伝ったりしながら確実に移動してもらうようにしましょう。
4. ヨットの動きを知らせる
操船を覚えてもらうのが目的ではありませんが、メインセイルを上げた時には船がどうなるか、風がセイルに入ったらどうなるか、ジブを広げて風がセイルに入ったらどうなるか、やる前に知らせるのです。風がセイルに入ったらヒールし始めます。しかし、ヨットを知らない人は船が傾くことに大きな不安を感じます。しかし、ヒールした状態で走ることが普通なんだと言うこと、バラストキールでひっくり返ることはないと言うことも予めセイルを広げる前に伝えておくことです。メインを上げれば船が揺れたり、ブームが振れ回ったりすることもあります。気をつけてねという意味と、船の挙動が変わる事を知らせておく事で心も体も構える事ができます。そして、やってみるかい?と聞いて、やり方を教えながら注意点などを伝えると言う方法もあります。
ボールを投げる前に「投げるよ」ってひと声掛けてからから投げると言うのと同じです。いきなり投げられては受けることすら難しくなりますが、ひと声掛けてからなら受ける準備ができると言うのと同じです。
5. 水分や食べ物の補給
水分の補給はとても大切です。暑い日差しの下では尚更です。ゲストには水を飲むように勧めましょう。遠慮は無用で自分のペースでいつでも自由に水分補給してもらうようにします。また、空腹を感じたら、スナックなどを準備しておいて、自由に食べてもらうようにします。空腹は船酔いに繋がります。「我慢しないでね」って一言話しておくことも忘れずに。
6. ドッキングの手伝いが最も危ない
セーリングをして戻ってきたり、行き先で着岸するときは、初めてのゲストに着岸の手伝いはさせないと言うのが安全を考えた時には正解です。
舫の準備やフェンダーの取付にしても、いつもやっている自分にはなんでもない事が、ゲストだと何をどうすればいいのか全くわからないのですから、初めてのゲストにやらせることは無いようにしましょう。
最後に… 「楽しい」がポイント
ヨットに乗ったことがあっても続かない人が多いとよく聞きます。それは、結果として「楽しい」が足りなかったのだと思います。「辛い」「怖い」があると続ける気にはならないですね。風速が強くても、ゲストを怖がらせないようにヒールはそこそこにしましょう。ヘッドセイルを小さくしたり、メインセイルを開いて風を逃したりリーフするなどで、ヨットの傾きを抑え快適にします。
実は、うちの妻のヨットデビューは、雨の日のクラブレースでした。私はそれ以前に数回乗っていて、とにかく楽しくてたまらなかったのですが、レースを終えて桟橋に舫った時には下着まで雨でビッショリ濡れて寒かったです。それは妻も同じことで、その場は楽しそうに終たように見えても、もう2度と来ることは無いとオーナーや他のクルーの人たちは思ったそうです。だって、デビューが雨の中でのセーリングでヒールしまくり、雨でびしょびしょなんですから…。
でも意外なことに、妻もとにかく楽しくてたまらなかったそうです。辛さより楽しさが勝ったわけです。しかしその裏側には、僕たちは夫婦で常に参加していたことや、僕がヨットのことについて色々と事前に話したり、準備したりしていたことで、予備知識による不安が少なかった事が酷いデビュー戦でも実際にセーリングしている時の楽しさが勝った最大の理由だと思います。つまり、予備知識と心構えがあったから、不意打ちでは無かったのが良かったという事ですね。
ちょっとした準備と心遣いが初めてセーリング体験する人を「楽しかった」にするポイントなんだと思います。
もう少し若かったら、⛵持ちたかったです。
ヨット⛵ってユメがありますよね(^_^)
マイレディ25なんて今、買い時ですもん…
当時のオーナーさんも歳とって、手放す方も多いですから。自分も歳とりましたorz