これまで MALU SAILING では何度かに渡って、世界最大のセーリングヨット関連の記事をご紹介してきましたが、少しリサーチなどの活動を止めていたら、数年前から欧米ではちょっとした騒動と共に世界最大のセーリングヨットがローンチされたという情報を見つけてしまいました。そしてその船を造ったのが、日常的に凄くお世話になっているEC業界世界最大企業である Amazon の創業者で会長でもある”ジェフ・ベゾス氏 (JEFF BEZOS)”が新造したというから驚いてしまいました。

世界最大セーリングヨットランキング・2018


…と言うのも、彼は既にメガヨットを所有しているという話は以前から知っていたのですが、これまで彼の所有するスーパーヨットは流行りの近未来的なデザインの動力船で、セーリングヨットには全く興味ないと思っていたのです。しかし、昨年ローンチしたメガヨットはと言えば、なんと!驚き 3本マストのスクーナー型、それも外観は昔風と言うかトラディショナルな帆船スタイルデザインのセーリングヨットということで、これは MALU SAILING に情報として加えておきたいと思いました。

そこで今回は「世界最大スクーナー型セーリングヨット」について、書いてみたいと思います。

OCEANCO PROJECT Y721

Oceanco(オーシャンコ)と言えば、オランダのスーパーヨット造船所でダイナリグという独自のスタイルのセーリングヨットを製造しているスーパーヨットメーカーです。ダイナリグのスーパーセーリングヨットとしてはブラックパールが有名です。プロジェクトコードY721と銘番されたオーシャンコ製セーリングヨットなので、当然ダイナリグが採用されたセーリングヨットが造られるとヨット関係者の中では予想されていたようですが、出来上がってみるとその姿は予想を覆し、クラッシックスタイルのスクーナータイプのスーパーヨットとなりました。
Y721
船のサイズは、全長410Ft(125.82m) 全幅56Ft(17.2m) 総トン数3493GT で純粋なセーリングヨットとしては、世界最大となります。(ハイブリッドセーリングヨットを含むと“SAILIG YACHT A”が世界最大)セイルエリアは2877㎡でわずか7分でフルセイルの状態に展開、最高速度は30ノットに達するそうです。乗員数は、クルー36人、ゲスト18人が乗れるキャパシティーだそうです。

オーナーはAmazonのジェフ・ベゾス氏

ジェフ・ベゾス氏がスーパーヨットの建造を始めたということをほのめかしたのが2020年頃の話で、彼がどんな船を何処のスーパーヨットビルダーに発注したのかなど一切の情報が秘密裏に進められていました。そして、どうやらベゾス氏の船では無いかといううわさが流れたのが、2021年10月にオランダのズウェインドレヒトの造船所でオーシャンコの新造ヨットが公開されたことで、これがベゾス氏の船ではないかとの報道が流れました。
また、その後に同造船所でマストを立てる予定でプロジェクトは進行していましたが、マストを立てた状態では橋の下を通ることができないため、オーシャンコはロッテルダム市にある国の歴史的建造物にも指定されている昇降式鉄橋を一時解体して船を通す許可を申請したことで、市民などからの反対運動を起きてしまい、「ベゾスの船を卵を投げつけてやろう!」と言った抗議活動まで計画される事態になりました。その後、オーシャンコは計画を変更して、マストは運河を抜けた海沿いの港で取り付けることとなり、また騒動の橋を通ることなく船体は運ばれました。

船名は”KORU”

ネイビーの船体に赤いブーツストライプ、二層構造で四角い窓が並ぶ木造のコーチハウスを備え、バウ側を見ると長いバウスプリット、スターン側を見ればクラッシックなカヌースタイルの船尾とデッププールが備えてあるベゾス氏のヨットの船名は”KORU”と命名されています。KORUはマオリ語(ニュージーランドの先住民であるマオリが使っていた言葉)で「新しい生命や成長の象徴」とされる言葉、ハワイ語では「3」を示す言葉でもあります。ベゾス氏にとって3隻目のスーパーヨットでもあるKORUは、まさにこの2つの意味を兼ね備えた意味を持つ船名なんですね。

KORU
KORU

クラッシックスタイルヨットのKORU

KORUは見た目の通り、クラッシックでトラディショナルな外観のとおり、サイドが開いたりヘリポートがあると言うようなスーパーヨット特有の設備は持っていません。内部は公開されていないので、どのような内装になっているのかは伝えられていませんが、Jクラスヨットのようなクラッシックヨットをレストアしたような伝統的なスタイルをモチーフにした船内装飾がされているのではないかと(勝手に)想像します。そして、現代のスーパーヨットにある様々なガジェットや機能が詰め込まれた船ではないようです。その理由は、流麗な船体とウッドデッキが象徴しており、KORUにはそれ以外の物が写真からは見当たらないからです。そういったガジェット類は別に搭載したサポート船が別にあるそうです。サポート船の名前は“ABEONA(アベオナ)”という船名で、ローマ神話の「航海と出発の女神」であるアベオナから由来しているそうです。全長75m、全幅12.6m、総トン数1900GTでD14規格ヘリコプター用のヘリポートと格納庫があり、その他にもテンダー、小型潜水艇なども搭載されていると言われています。こちらにもクルーを含む45人が宿泊可能な設備があるそうです。このサポート船はKORUと一緒に運航されるため、KORUは純粋なセーリングクルーザーヨット(セーリングや居住性に重きを置いたヨット)として製作されていると考えられています。また、船首には女性を象ったフィギュアヘッドがつけられていて、このような装飾からも純粋な帆船としての拘りを感じます。

KORUのフィギュアヘッド
KORUのフィギュアヘッド
KORU
KORU

最後に… 海王丸より大きいKORU

今回ご紹介しましたアマゾンの創業者で会長であるジェフ・ベゾスのスーパーセーリングヨット”KORU”ですが、何か比較できる船が無いか探してみたところ、日本の練習帆船である海王丸が比較しやすい船であることがわかりました。海王丸は、全長110.09m、全幅13.8m、総トン数2556GT です。最大搭載人員数は、199人と実習船だけあって詰め込み気味ですが、こちらは平成3年に進水したクラッシックスタイルの帆船です。このデータから見てもKORUは海王丸より大きいことになります。KORUは現代の最新艇ですから船体はアルミで軽く作られているものと思われますが、ディーゼルエンジンは海王丸と同じく2基搭載しており、居住性向上のために今や電気設備は欠かせないことから、船底にはバッテリーを敷き詰めるように搭載しているものと思われます。この巨大なプライベートヨットで多忙なベゾス氏がどんな航海を楽しまれているのかは想像もつきませんが、豪華かつ快適な船旅ができることは確かだろうと思います。今後少しずつ詳細な情報がゴシップ誌などを含めて徐々に出てくると思われますが、どんな船内なのか覗き見してみたいものです。

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