以前にこのブログで「ヨットと帆船の違い」以前の記事はこちら について書きました。結論は、ヨットと帆船に違いはないと書きました。この結論は法規的にヨット(セイリングクルーザー)と帆船に違いはない、つまり帆の力だけで走ることができる船は全て「帆船」だと言うということをお伝えしました。この結論が間違っているわけではありませんが、多くの人たちがネット検索で「ヨットと帆船の違い」を調べたとき、この結論だけでは満足してもらえないだろうなって、正直なところ自分が書いた記事を読み返して感じるようになりました。

実は、僕たち夫婦がヨットの魅力にハマった最初のヨットでは、ヨット界でとても有名なヨットレースの「タモリカップ横浜大会」に毎年出艇していました。その時にタレントのタモリさんが乗る本部艇として横浜の海に姿を現したのが「帆船みらいへ」でした。練習帆船として有名な日本丸や海王丸は世界最大級の4本マストの大型帆船ですが、その設計思想をそのままに一回り小さくしたような「帆船みらいへ」の姿を見て「一度でいいからあの帆船に乗ってみたいね…」なんて夫婦で話していました。それから数年後、神戸に帰省したときに神戸港のポートタワーの麓に「帆船みらいへ」が係留されているのを見つけて記念写真を撮ったり…。

それから更に数年後… 僕たち夫婦はその想いを遂げることができたのです。

そう、僕たち夫婦は「ヨット乗り」としてだけではなく「帆船乗りの端くれ」(ホンモノの帆船乗りの方々に失礼なのでホント端っこの端…)として、実際に帆船に乗るようになったのです。このあたりの話はまた最後にするとして、実際に帆船に乗って体験することができたからこそ解った「ヨットと帆船の違い」を今回はお話したいと思います。

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1.「帆船」その言葉の本来の定義

先ずは、前回のおさらいになってしまいますが、「帆船」とは、帆の力だけで航行することができる船のことを言います。エンジンを積んでいても、エンジンを停止して帆の力だけで航行することができれば帆船になります。逆に海外では純粋な帆船(エンジンを持たない)も多く存在します。
つまり、セイリングできる船は全部「帆船」ということです。

しかし、これでは疑問に対する解決になっていないですね。

2. 一般の人の「?」に応えるための分類

このブログでのヨットの定義は、セーリングクルーザーのこととしていますが、ここでは一般的な解釈でのヨットとしてお話を進めます。セイリング(帆走)することができる船は全て帆船という事は先に書いた通りですが、多くの人たちのイメージではヨットは見た目に小さくて、帆船は大きいという感じではないでしょうか。
しかし、ヨットにも大きなものは大型帆船並みの巨大ヨットが存在することは、以前にご紹介しました「世界最大セーリングヨットランキング」にご紹介した通りです。つまり、大きさでの分類ではヨットと帆船の違いを説明することは難しくなっています。
それでは、何を基準に分類すれば一般の人たちの「?」に応えることができるのかという事になります。それが今回のテーマである「実際に体験すると解る」なのです。
なんだ一言で分類してもらえないの?って落胆されてしまいそうですが、厳密に分類しようとすると、やっぱりヨットも帆船も今や同じなんです。しかし、ヨットと帆船では体験できることが大きく異なってくるのです。

3. 帆走技術の進歩

ヨットと帆船の外見的な違いは、沢山の帆の数かもしれません。僕たち夫婦が乗ることができた「帆船みらいへ」の場合、帆の数はマスト3本にフルセイル状態だと13枚、帆を開いたり閉じたり調整したりするために必要なロープの数は、驚きの108本です。
因みに僕たち夫婦のヨット「MALU号」は、帆の数がマスト1本にフルセイル状態だと2枚、ロープの数は12本です。
一見、「帆船みらいへ」の数は凄そうに思えますが、帆1枚あたりに換算すると、そんなに物凄い違いではありません。まあ、2,3本の違いという事なります。しかし、これが船のサイズが同じでも数が変わらないとなると違いは明白です。

つまり、この違いは何なのかと言うと、それは帆走技術の進歩なのです。

「帆船みらいへ」は全長およそ52メートルですが、MALU号と同じようなマスト1本で世界最大のヨットは、およそ77メートルもあります。つまり、13枚もの帆がたった2枚で帆走できるようになったのです。コントロールする108本ものロープも12本と少なくすることができるようになった、このことこそ帆走技術の進歩なのです。そして、2枚の広大な帆を出し入れしたり調整するのは、今や機械の力によって行いますが、「帆船みらいへ」の場合、これを全て人手(人力)で行うのです。

この「すべて人手を使って帆走すること」こそ、帆走技術の大きな進歩によって失われたことなのです。
つまり、ヨットと帆船の大きな違いは、帆走技術の進歩によって失われた人手(人力)によるセイリング(帆走)だという事が言えるのです。

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4. 体験できることの違いとは

帆走技術の進歩によって失われたものは、現代では機械に置き換わったため、多くの人手を要することなく帆走することが可能になりました。帆船に乗るという事は、この多くの人手が必要だった作業を乗船した人たちが実際に体験的に作業することになります。
多くの人手が必要だった作業とは、やはり力仕事になります。数多くの帆の開閉作業はまさにその作業の中でも象徴的なものです。運動会の綱引きと同じような具合で、1本のロープに複数の人手が必要で力を合わせてロープを引きます。
この作業の他にも、現代の大型ヨットでは、帆は収納式が殆どですが、昔の帆船は帆を畳むのも人手でマストやブーム、ガフ、ヤードなどに縛り付けていました。つまり、帆を広げるときには、縛り付けた帆を解いてからロープを引いて帆を展開します。帆を畳む際には、広げる作業の逆を行います。帆を縛り付けたり、解いたりする作業は高いマストの上に上って作業をします。
現代の大型ヨットでは、マストのメンテナンス以外にはマストに登ることはありませんが、昔の帆船では帆を広げる、折り畳む、いずれの作業でも海上で荒れた海でもマストに登る必要がありました。

このように、帆船では集団作業が必要で、ヨットと帆船の明らかな違いは、ここにあるという事が言えるのです。

5. 日本では帆船、海外ではトールシップ

これまでの書いてきましたように、日本では古い帆船の事を一般的に「帆船」と呼んでいると言えます。しかし、海外ではこのような古い形の帆船のことを「トールシップ」 “Tall Ship” と呼んでいます。では、現代の大型帆船のことを海外では何と呼んでいるのかと言えば、「セイリングヨット」”Sailing Yacht” です。

日本では、このあたり明確な呼び分けが無いのは寂しいばかりです。セイリング文化が深く根付いている欧米に比べ、日本ではこういう面でも呼び分けをする必要性が無い程にセイリングの世界はマイナーなのだと感じさせられるばかりです。しかし、様々な情報を海外から容易に得ることが出来る時代ですから、そろそろ日本も欧米に倣って国際標準に合わせるべきではないかと思うばかりです。

最後に…「ヨットと帆船の違い」結論

僕たち夫婦がタモリカップで帆船みらいへを見て以来、あの帆船に乗ってみたいねという願いはその数年後に叶うことになります。そのキッカケとなったのは「日本一楽しい航海をする帆船乗り集団」のキャッチコピーで活動を展開している Spirit of Sailors という帆船乗り団体との出会いです。世界ではトールシップを用いたセイルトレーニングが非常に盛んで、人間教育や青少年の体験教育がとても盛んにおこなわれています。(セイルトレーニング関する詳細はこちらで詳細をご覧ください。Tall Ship Challenge Nippon HOMEPAGE セイルトレーニングとは

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彼らは、帆船によるセイルトレーニングや体験教育、更に帆船を用いた野外活動をもっと日本の人たちに体験してもらいたいという考えで活動しています。僕はこの団体の活動に共感し活動を応援したいと考えたのです。また、彼らは日本で唯一の民間セイルトレーニングシップある「帆船みらいへ」や民間のチャーター帆船である「帆船Ami号」とも協力提携関係を結び、活動を幅を広げています。僕たちは Spirit of Sailors のメンバーとして参加することで、帆船みらいへに乗船する願いを叶えたのです。それは単なるゲストとしてではなく、正規に体験活動セイフティーリーダーの講習会に参加し認定を受け、更に帆船みらいへでの実地トレーニングを受け「帆船乗りの端くれ(の端の端ですが…)」として帆船体験活動をサポートするという形でした。

帆船みらいへ

ヨットと帆船の違いは、この活動を通して見えてきたもので、現代のヨットでは人の力を補うためにロープを引くときにハンドウインチを使用します。大型のヨットの場合には、電動ウインチなど、より大きな力を人の代わりに出すことのできる機器を用いています。帆船(トールシップ)は、このような装備は一切ありません。大航海時代と同じく人の力だけを結集してロープを引き帆をコントロールするのです。そこには、一つの目的地に向けて協働することや、チャレンジすること、更に小さな社会とも言える船上生活を通して協調性や自分が小さな社会において何ができるのかということを見出す社会性を養う事までできるのです。単なるレジャーやアクティビティーとしてではなく、チャレンジすること、冒険することなどのエッセンスも含まれたトールシップを用いたセイリングは、普段自分たちのヨットでは味わう事のできないものを僕たちに教えてくれたのです。

ヨットと帆船の違いは、これまでの説明でイメージして頂けるようになったと思います。その結論は「人の力を結集してセイリングする船の事を帆船と言う」のです。ヨットはより現代的に多くの人手を要さずともセイリングできる船のことだという事です。

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