日本での2018年クルーズ船利用者数は32.1万人となり、2年連続の30万人超えで過去最多を更新したそうです。また、クルーズ船の日本の港への寄港回数も過去最多の2930回という統計が国交省より発表となりました。
利用者のうち、外航(海外を航海する)クルーズの利用者は21.5万人で前年比9.1%の増加、国内クルーズの利用者は10.61万人と前年比で10.2%減と言うことで、国内利用した人たちが海外利用にシフトしているような結果も見て取れます。また、日本発着の外航クルーズ船利用者数は18.2万人(うち外国人利用者数は8万人)で、海外での外航クルーズ船利用者数は3.3万人で全クルーズ利用者の10.2%とクルーズ利用者の10人に1人は海外でクルーズ船に乗船して旅を楽しんでいることになります。
このように、ここ数年の日本におけるクルーズ船旅行の人気は更に増加傾向で、それによりクルーズの種類も様々なバリエーションが紹介されるようになってきています。
そんな中、以前にスーパーヨットスタイルのクルーズ船であるフランスのポナンをご紹介しましたが、今回は本格的な帆船スタイルのクルーズ船を専門とするクルーズ会社が、以前より世界最大のクルーズ帆船を有していたところ、更に大きなクルーズ帆船を建造しフルセイルで試験航海する姿を見せてくれました。
そこで、今回は本格的な帆船スタイルのクルーズ船会社をご紹介すると共に、世界最大の帆船型クルーズ船についても触れてみたいと思います。
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本格的な帆船とは
帆船とは、帆を用いて帆走することができる船の総称で、我が家のMALU号も船検証には帆船と記載があります。帆の力だけで走る事が出来る船のことを帆船と定義しています。しかし、一般的には帆船と言うと、大型で帆が沢山ある船のことを言っています。そんな帆船として日本で有名なのが、4本マストの日本丸や海王丸です。このような大型帆船のことを英語ではトールシップ “Tall Ship” と呼びます。
トールシップは、主にトレーニングシップ(練習船)として世界中で現在も現役で使用されています。日本の有名な2隻の帆船も同様に航海練習船としてプロの船乗り養成のために使用されていますが、一般の人は見学会や体験乗船の機会はあっても長距離航海に乗船できる機会はほぼありません。それは諸外国も同じで、大型の帆船で優雅にのんびり船旅を楽しみたいと考えても、本格的なトールシップによるクルーズを行っている会社は非常に稀な存在です。
帆船専門クルーズ会社 “Star Clippers”
世界に数々のクルーズ船会社はありますが、スター・クリッパーズ “Star Clippers” はトールシップ専門のクルーズ船会社です。
トールシップを知る人にとっては、トールシップの船内は豪華なクルーズ船とはかけ離れた世界であるというのが常識ですが、このスター・クリッパーズのコンセプトはオーナーズヨットに招かれたかのような豪華な船内でゆったり寛ぎながら帆船クルージングを楽しむというもので、その船内は一般的なクルーズ船に引けを取らない帆船ならではの豪華さがあります。悪天候や微風時、港への出入港にはエンジンで航行しますが、航海における7割以上を帆走だけで航行することからも、本格的な帆船クルージング船だという事が言えます。
スタークリッパーズには、現在3隻の大型帆船が就航中です。また、2019年度中には超大型豪華クルーズ帆船がデビューする予定となっています。
Star Flyer / Star Clipper
この2隻のクルーズ帆船は、4本マストに16枚セイル(うちフォアマストの5枚が横帆)のバーケンティン型帆船で1991年、1992年に相次いで就航した同型姉妹帆船です。
全長:115.5メートル、全幅:15メートル、総重量:2298トン、マストは4本で最も高いマストの高さは63メートル、帆16枚のセイルエリアは3665㎡、4層のデッキには81の客室キャビンがあり乗客170人を収容することができ、クルーの数は74人です。
(サイズ的には、日本の練習帆船、日本丸や海王丸と同じくらいのサイズ感になります。)
パブリックスペースは、メインダイニング、バーカウンター、ライブラリーラウンジ、アウトバーカウンター、サンデッキ、プールは小さないながらも2つもあります。
Royal Clipper
このクルーズ帆船は、帆船の世界では最大級のトールシップで、1902年に世界最大で5本マストの全装帆船(Full-rigged ship)であったドイツのプロイセン号をイメージして建造され2001年に就航し、同年に世界最大の帆船としてギネスブックに登録されました。
全長:134メートル、全幅:16メートル、総重量:4425トン、マストは5本で最も高いマストの高さは54メートル、帆42枚のセイルエリアは5000㎡、4層のデッキには99の客室キャビンがあり乗客227人を収容することができ、クルーの数は106人です。クルーズ船として見た時には、小型のクルーズ船程度の数値になりますが、帆船としてはこれ以上の大きさは過去にありません。
船内の設備としては、2つのプール、ジャグジー、メインダイニング、ライブラリーラウンジ、バーカウンター、サンデッキ、大型クルーズ船おなじみのフィットネスジムやマッサージ(エステ)コーナーまで完備しています。また、船尾にはマリナプラットフォーム(開閉式プラットフォーム)もあります。停泊時に海gあ穏やかな時は、ここから直接海に入ることもできます。
帆船クルージングならではの楽しみ
大型クルージング船を見慣れてしまった人にとっては、これらの帆船クルージング船は小さく思えてしまうかもしれません、しかし、この大きさの帆船だからこそできることもあります。小さな港に入って行くことができますし、より陸に近い場所にアンカリングすることもできますので、テンダーの上陸にも時間をすることなく上陸ができます。
また、帆船ならではの楽しみもあります。
毎日出港時にはセットセイル(帆を上げる)作業を体験することが出来ますし、、バウネットの上でくつろいだり、マストクライムでクロウズネスト(「カラスの巣」と呼ばれる見張り台)まで上がって360度のパノラマも楽しむこともできます。また、アクティビティーにもロープワークのレッスンや、オープンブリッジでいつでも操舵室を見学することもできます。更に、美しいトールシップを船外から見てみたいという人は少なくないと思います。スタークリッパーズでは、フォトテンダーと題して、船の写真を撮るためにテンダーを下ろして船の周囲を回るアクティビティーも準備されています。
最後に…(さらに大きな新造帆船が間もなくデビュー)
クルーズブームは日本に始まった話ではなく、日本よりも欧米ではクルーズ船がとても流行っています。超大型のクルーズ船に乗り飽きた人たちは、徐々に小型のクルーズ船で変わった目的地へゆくクルーズが流行り始めています。また、以前は小型船は揺れるとか、エンジンが近いのでうるさいなどのイメージがあったようですが、造船技術の真価により、今では小型船でも揺れや音の問題がないクルーズ船が新造されています。
そんな中、スタークリッパーズも新造船が間もなくデビューしようとしています。
この写真は新造帆船 フライング・クリッパー “Flying Clipper” がクロアチアでフルセイルの状態で試験航海する様子をとらえたものです。この帆船は、図面だけが作られ実際に造船されなかった「フランス2世号」の図面を利用し、現代技術を投入した最新型のトールシップです。
全長:162メートル、全幅:18.5メートル、総重量:8770トン、マストは5本のバーク型帆船です。帆は42枚でセイルエリアは6347㎡、5層のデッキには150の客室キャビンがあり乗客300人を収容することができます。また、74のクルーキャビンにクルー150人を収容します。この最新帆船は、北極圏や南極圏など、世界の全ての海域を航海できる”Ice Class”の要件に準拠しています。帆走時は16ノット(最大20ノット)での帆走が可能です。また、IMO 2020 SOx規制にも対応する2機のディーゼル発電式電気モーターに可変ピッチプロペラを組み合わせた最新式の動力システムにより17ノットでの航行も可能です。
フライング・クリッパーは、ロイヤル・クリッパーを上回り世界最大帆船としてギネス世界記録に登録されます。
既に2年以上造船所からの引渡が遅れている状態ですが、いよいよ2019年中はデビューする見込みのようです。豪華な船内設備などのニュースが出るのが今から楽しみですね。
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