MALU号で迎える2度目の冬となりました。今年は去年の試行錯誤を経て、割と快適なウインターヨットライフを送っていますが、去年の冬は初めての事ばかり。ヨットに泊まる度に暖房器具を買いに行ったり、寝具も試行錯誤しながら追加したりと、日に日に(実際にはヨットに行くのが毎週末なので、週ごとに)寒さが増してゆくのに対応しながら、なんとか一冬超すことができました。冬を終えて考えてみると、冬のセーリングは空気が乾燥して澄んでいるので周囲の景色は最高に綺麗、特にMALU号のある清水港は真っ白に雪化粧した富士山を正面に見ることができるので気分は晴れ晴れした感じになり冬場のセーリングも辛いばかりではありませんでした。風が無いと面白くないヨットですから、冷たい風を受けてのセーリング、それも冬場の海には他のヨットは見ることもなく、貸切の海を喜ぶべきか悲しむべきか、ちょっと複雑な気分だったのが1年目の冬の感想です。

冬場はセーリングする時間もどうしても短くなりがち、そして多くの時間をヨットハーバーの自バースに居てキャビンの中で過ごすのが冬のヨットでの主な過ごし方ですが、そんな時に欠かせないのは暖房です。

スポンサーリンク
そこで今回は、ヨットの暖房ついて、僕たちの経験も踏まえてお話をしてみたいと思います。

そもそもヨットにはどんな暖房設備があるのか

ヨット備え付けの設備暖房と言うと、最初から設定されているのは大体30フィートオーバーの中型艇以上になってくると思いますが、先ずはヨットの設備暖房にどういう物があるかから見てみたいと思います。

FF式ヒーター(ディーゼルヒーター)

ヨットの暖房設備と言うと「FF式ヒーター」がスタンダードです。
家庭用のFFファンヒーターと原理は同じで、ヨットの場合にはヨットのエンジンで使うディーゼル燃料(軽油)をヒーターの本体ユニットに配管して暖房の燃料として使います。
日本でFF式ヒーターと言うとミクニ(エバスペヒャー ミクニ クライメットコントロールシステムズ株式会社)のエアヒーター(エアトロニック)という製品が最もメジャーです。これはドイツのエバスペヒャー社の製品です。もう一つ、大きなメーカーとしては、これもドイツのベバスト社で日本ではキャンピングカーの分野では日本の代理店が存在します。


FF式ヒーターはキャビン内の空気を本体内を通して温めてキャビンに戻すことでキャビン内の空気を温める方式です。空気を温めるだけなので空気を汚したり、酸欠、一酸化中毒の心配はありません。船の燃料(軽油)を燃やして空気を温めますが、燃料を燃やすための空気は別系統になっているので、エンジンと同じく燃やした後の排気は屋外に排出される構造になっています。
ヒーター本体は非常にコンパクトで航行中に揺れる船内でも安定して動作します。

スポンサーリンク

ディーゼルストーブ

古いヨットの暖房設備と言うと海外ではこれをよく目にします。「ディーゼルストーブ(ヒーター)」です。国よってはストーブと言う言葉はキッチンのコンロの事を指す言葉として使われているので、ディーゼルヒーターと呼んでいる地域もあります。
「ディーゼル」はディーゼル燃料のことで基本的には軽油で燃焼させます。灯油やケロシンなどの燃料でも使うことができます。
昔の輸入ヨットなどにはこのタイプのディーゼルストーブがそのまま付いていたヨットもあるようですが、日本国内ではこのタイプの暖房機器の流通は無いようです。

外見的にミニ暖炉のようでとっても雰囲気があり、のぞき窓から炎も見えるのでクラッシックなヨットには雰囲気的にもとてもマッチしていて良いと思います。

海外ではこの形のストーブの愛好家も多いのですが、写真でご覧いただけるとわかるように、熱源は室内に設置されるので排気用の煙突穴をデッキに開ける必要があり、更に燃料配管も行う必要があることから設置作業がとても面倒なのが難点です。更に、航行中に使うことが出来ますが、あまり艇をヒールさせ過ぎると(メーカーでは20度以内)燃料供給が不安定となり消えてしまったりするようです。

スポンサーリンク

マリンエアコン

今では家の暖房もエアコンという家庭が少なくありません。それと同じようにヨットでもマリンエアコンを暖房にしているのを見かけるようになってきました。エアコンは電気が必要ですので航行中の使用には別途ジェネレーター(発電機)を搭載する必要があります。大型のヨットであればジェネレーターと一緒に利用できそうですが、中型艇以下だとスペースの問題からジェネレーターの搭載が難しいので、係留時に陸電があるところでしか利用できない欠点があります。

ヨットの設備暖房とは

日本ではヨットを通年に渡ってやっている人は非常に限られます。マリンスポーツ全体が冬場はオフシーズンとして寒い冬は避けて春を待つを言う傾向にあるので、小型艇などを中心に暖房設備が無いヨットが多い傾向にあります。
では、元からヨットに暖房設備がついている艇というと、基本的には中型艇以上になってきます。中型艇以上になるとキャビンの居住性が高く、それに対応して空調設備も設置される傾向にあります。また、冬場のロングクルージングでは、航行時でも冷えた体を温める暖房は必須になることから、走っているときでも安定的に動作してくれることが重要になるわけです。
そういった意味において、上に紹介した3つの暖房設備うち、最も優れているのは「FF式ヒーター」ということになります。

スポンサーリンク

日本におけるFF式ヒーターのあれこれ

ヨットの暖房でFF式ヒーターがベストであることは間違いありません。しかし、このFF式ヒーターの大きな問題点と言うと、手軽に設置できないことと、それも相まって導入コストが非常に高いことです。特に正規品と呼ばれる物については、システムの購入で数十万、設置に十数万円と言うコストが掛かり、更に以前は投資に見合わない程頻繁にトラブルに見舞われるなんてこともありました。

昔は不人気だった

FF式ヒーターを使ってみると解りますが、スイッチを入れるだけで数分後には温風が流れ始めキャビンの中全体が暖かく、とても快適なのですが、日本では一昔前まではあまり人気がありませんでした。と言うのも、毎年のように不具合が出るのと、メンテナンスコストも非常に高いという難点があったからです。この最大の原因は、一昔前の日本の軽油は品質が諸外国に比べ低かったからです。どんなトラブルが起こるのかと言うと、品質の低い軽油を燃やすことで燃焼室内にススが大量に溜まり燃焼不良を起こしてしまっていたのです。どんなものも燃やせば多少のススは出るのですが、昔のディーゼル燃料(軽油)にはサルファ(硫黄)が諸外国に比べて10倍近く多く含まれていたからです。(東京都の石原都知事がススを入れたペットボトルを記者会見で振って見せたアレです。)欧米では古くからサルファフリーが進んでおり、その先進国ドイツのFF式ヒーターですから日本の軽油に硫黄が多く含まれていることまでは考慮されていなかったわけです。10倍の硫黄が含まれていたという事は通常の10倍ススが出て10倍早くトラブルが出るということです。
現在、日本の軽油は諸外国と遜色ない品質のサルファフリーとなり、それに伴ってFF式ヒーターのトラブルも聞かれなくなっています。

アイドリングストップと車中泊ブーム

ヨットの世界の話ではありませんが、キャンピングカーの世界ではヨット同様にFF式ヒーターは古くから採用さていましたが、世界的な環境負荷の軽減対策として、大型トラックなどのアイドリングストップは今や欧米ではあたりまえになってきています。大型トラックがサービスエリアなどで仮眠をとる際にエンジンを掛けたままドライバーが眠っているという風景を日本でもよく目にしますが、これは世界的にも同じ状態でした。しかし、環境先進国のヨーロッパを中心にエンジンを停止しても暖房ができるシステムとして、FF式ヒーターをパーキングヒーター(パーキング時にエンジンを止めても暖房ができるヒーター)として利用し始めました。また、日本でも車中泊が流行している近年、キャンピングカーに取り付けられているFF式ヒーターを取り付けたいという人は少なくありませんが、ヨット同様に高額で手が出ないという人が少なくありません。しかし近年、安価な中国製のパーキングヒーターがネット販売を中心に出回り始め、中国製FFヒーターに注目が集まり始めています。

スポンサーリンク

停泊時だけなら石油ストーブ

近年、日本のアウトドアブームでは、冬場のキャンプに石油ストーブをテント内で使うのがトレンドとなっています。ヨットの世界でも石油ストーブをキャビン内で使う人が少なからずいました。その際、セーリング中にはストーブを使わないとしても、万が一ストーブが転倒しても石油が漏れないというストーブに人気が集まりました。それがフジカ・ハイペットです。
フジカ・ハイペット
フジカ・ハイペットの優れている点は燃焼効率が高く暖房能力が高いこと。満タンで10時間から12時間の使用が可能なこと。メンテナンス性が高く故障が少ないこと。耐震自動消火と万が一の転倒時でも石油が漏れにくい構造になっていることです。転倒しないようにキャビン内に固定しておけば、ヒールしたくらいでは石油漏れの心配は無いのでヨットに積むには安心なストーブですね。
しかし、キャビン内で使用する場合、石油ストーブですので酸欠や一酸化炭素中毒の可能性は否めませんので、充分な換気等の対策や一酸化炭素アラームの設置はしておいた方が良いかと思います。

陸電があればセラミックファンヒーター

電気を使える環境が整っていれば、最も安全なのはセラミックファンヒーターです。空気が汚れる心配や酸欠、一酸化中毒の心配もありません。また、小型でもかなりの暖房能力があり、夏場のキャビン内収納も場所をあまりとりません。動作中に転倒した場合、電源がオフになる機能や過熱保護機能のあるものを選べば安全性も高く電源をいれたまま就寝しても安心です。
セラミックヒーターは1200Wが最高出力になりますが、1200Wで充分な暖房効果を得ることができる部屋のサイズは6畳以下となります。製品の説明では6畳から8畳用と書かれている製品もありますが、この目安はあくまでも気密性が高く、断熱効果の高い場合を想定しています。ヨットのキャビンの場合には面積に対して天井が低いので35フィート前後のキャビンであれば充分な暖房性能が期待できると思います。

上の写真は実際にMALU号で使っているセラミックファンヒーターです。決して有名メーカー品ではありませんが、マリーナの近所のホームセンターで三千円台で購入しました。写真の白いセラミックファンヒーターの上に黒いFF式ヒーターの吹き出し口が見えますが、FF式ファンヒーターと同程度の温度&吹き出し量と同程度をこのセラミックファンヒーターで実現できています。外気温が7度くらいの日でも、キャビン内はおよそ20度くらいの温度をキープすることが出来ていました。
FF式ヒーターを使用すると燃料を消費しますが、陸電を使えば係留費に含まれていますから、実質無料で暖房を使えるので、ホームポートではセラミックファンヒーターを使用しています。

スポンサーリンク

最後に ~楽しみ方に合わせて暖房を選ぶ~

MALU号にはFF式ヒーター、エアコン、セラミックファンヒーターの3通りの暖房があります。何れの暖房も実際に使ってみましたが、何処でどのように楽しむかによって暖房の選び方は変わると思います。
僕は石油ストーブはキャビン内で使ったことがありませんが、万が一の消し忘れなどで眠ってしまったりすることが不安で躊躇しています。しかし、換気をきちんとすれば、暖房性能はかなり高いですし、お湯を沸かしたり、料理に使ったりと、確実に管理できる人ならばストーブを使って楽しむこともできると思います。
また、FF式ヒーターもいろいろ調べてみると中国製の製品でもかなりしっかり使うことができるようです。最近では全国各地に設置施工できる業者のネットワークまででき始めているようです。現段階では自動車への取付メインですが、船用の排気用パーツまで品揃えされ始めていますので、以前のような超高額なものではなく、かなり期待できる状態になりつつあります。
是非、其々の楽しみ方に合った暖房選びをして、冬場のヨットを楽んで頂きたいと思います。

コメントを残す