スマホの普及で一気に広がったGPSマップですが、この恩恵は非常に大きく、普段の生活で紙の地図を見ることは殆ど無くなりました。そして、自分の位置が解らなくなった時には、スマホの地図アプリを立ち上げれば、自分の現在位置を表示してくれるだけでなく、カーナビのように目的地を設定すれば、道案内までしてくれます。勿論、カーナビ機能だって今では車に搭載される専用機よりもスマホアプリの方が便利だったりします。

では、海上ではどうなんでしょうか?

プレジャーボートであるヨットには昔からGPSプロッタと言うのがあります。しかし、最近はスマホもGPS受信機能を搭載していることから、ヨットのGPS事情は大きく変化してきています。

そこで今回は、ヨットのGPSに関することについて、お話してみたいと思います。

そもそもGPSとは?

「GPS」と一般的によく聞くようになった言葉ですが、「GPS」はアメリカの測位衛星システムのことを言い、”Global Positioning System”を略して「GPS」と言っています。このアメリカの人工衛星は、グローバルの名の通り、世界中で使用できることを目指した衛星システムで世界中をカバーしています。元々はアメリカ独自の物として軍事目的で開発され、他国に利用されないように衛星から発射される電波にはスクランブルが掛けられていたことから、それを利用しても測位誤差が数十メートルから数百メートルと言う時代もありました。衛星から発信される電波には、衛星の軌道情報・原子時計の正確な時間情報などが含まれています。

GPS衛星イメージ
現在、GPS衛星は6軌道30機の衛星が上空およそ2万kmを周回し世界中を飛んでいますが、測位精度を上げるためには衛星からの測位電波を最低でも4波以上受信する必要があり、更に正確な測位を行うためには8波以上の受信が必要となります。しかし、アメリカの衛星ですから、日本の上空に常に8機の人工衛星が飛んでいる状態にはできないことから、日本で独自にGPS衛星と互換性のある「みちびき」と言う衛星を2018年から順次飛ばし始めており、2023年までには7機体制になる予定です。そうなればGPS衛星と共に8波以上の受信が可能となり測位誤差は6センチにまで縮小される予定だそうです。
因みに測位方法は、衛星から発射された電波と地上にある基準点をGPSプロッタ内で演算して算出しています。日本は国土地理院が設定した基準点が全国におよそ13000箇所あります。

ディファレンシャルGPSとは?

GPSは意外に昔から使われており、先に書いたようにGPS衛星から発射される電波にアメリカが故意にスクランブルを掛けていたことから測位誤差が大きかったのをうけて、1997年に海上保安庁が管理する基地局からFM波を使って測位誤差を補正するための情報(ディファレンシャル情報)をFM波で発信していました。これが、古いGPSに付いているディファレンシャル機能というもので、船のGPSプロッタにFM波用のアンテナが接続されて受信しています。このディファレンシャルデータの送信はGPS波の開放と静止衛星によるSBAS(MSASと呼ばれる静止衛星型衛星航法補強システム)の運用開始などにもより、2018年3月1日で運用を停止しました。

GPSプロッタについて

GPSプロッタと言うと、画面に地図が出ていて自分の位置や各種情報が表示されているものと思いがちですが、これは「GPSチャートプロッタ」と言います。今では位置情報(緯度経度)だけを表示するプロッタはあまり見ませんが、元々は緯度経度表示だけを見て、チャート(海図)で実際の位置関係を確認していたわけです。現在では、海図表示があるのがあたりまえなことから、GPSプロッタと言っています。

GPSチャートプロッタ
また、航法支援装置としてのGPSプロッタだけではなく、魚群探知機機能を併せ持った、魚探GPSプロッタのことも、最近では単にGPSプロッタと言ったりします。GPSプロッタのカタログに出力によって同じ製品でも価格差が付いていますが、これは魚探機能の海中へ発信するソナーの出力のことを指しています。

GPSアンテナの内蔵式と外付け式

GPSプロッタのカタログを見ると、GPS受信アンテナが内装されている機種と外付け式の機種があります。最近では、スマホにもGPSアンテナが内蔵されているので、アンテナ内蔵式は一般的ですが、船に設置する場合、船の天井などが金属製であったりすると、GPS波を受信することができないため、アンテナを外付けにするわけです。ヨットの場合には、FRPや木造の船なら、特にアンテナは不要だと思われます。船内で使用するときに不安に思う場合には、スマホのGPS機能が使用できる場所で動作するかを確認してみれば、その場所でのGPS波の受信の可否が判断できます。
(※MALU号でアンテナ内蔵式のGPSプロッタを使っていますが、船内でも問題なく動作しています。)

最近のGPSプロッタ流行は”iPad”

最近のセーリングクルーザーに乗っているGPSプロッタを見ると、専用機を付けずに”iPad”を積んでいるのをよく見るようになりました。確かに新艇ならば、最近はオートパイロットとも連携もできる専用のGPSプロッタが付いているものですが、後付けで付けようとすると非常に高額、そこまで要らないという人にとっては、何か他にも利用出来てセーリングの時にはGPSプロッタに変身してくれれば良いと思うのは当然ですね。
実は、昨年から電子海図情報システムである「new pec(ニューペック)」に新たに「new pec smart」という、スマホやタブレット端末用のアプリが月額で980円で使用できるようになったことで、利用が拡大しているのです。

new pec(ニューペック)smart とは

「new pec smart」は「新たな “personal electronic chart”」と言う意味で主に小型船舶向けに開発された(一財)日本水路協会が発行する航海用電子参考図です。小型船の使い勝手に即して開発され、日本全国の沿岸部を完全にカバーし、2m/5m/10mの等深線データや定置網、漁具、航路標識なども表示します。
new pec smart」は、new pec のiPhone,iPad 向けにつくられたアプリで、スマートホン、タブレットでの使用を前提とした仕様になっています。内容はnew pec を完全に再現し、電子海図以外にも、AIS表示機能や全国1,100図以上のSガイド(港湾や漁港の入出港時に注意が必要な障害物や漁港や港湾事務所などの連絡先など、海図上では表せない情報をテキストとして付加した小型船舶用の港湾案内図)を搭載し、航海計画を立てたり、潮汐や海況を調べることもできます。沿岸小型船舶用の法定備品(海図の代替設備)に認可もされている国内唯一の電子海図です。
new pec に関する詳細はこちらnew pec smart の詳細はこちらから、何れもリンクしています。

new pec smart を利用するうえでの注意点

このアプリは、iPhone、iPad 専用アプリとして開発されていますが、iPad で利用する場合には、Wi-Fi専用モデルの場合、GPS受信機能を内蔵していないので、外付けのGPSレシーバーが必要になります。最近は、カーナビアプリやドローンのコントロールなどGPS利用が増えているので、外付けGPSレシーバーも沢山発売されています。

Garmin (ガーミン) GLO 2 Bluetooth GPSレシーバー 010-02184-01
ガーミン(GARMIN)
Garmin GLO 2 Bluetooth GPSレシーバー 010-02184-01
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最後に… MALU号にはGPSプロッタが2台もある

実は、我が愛艇のMALU号には、以前のオーナーとそのまた前のオーナーが付けたGPSプロッターがそのまま付いています。前オーナーの付けたものは、脱着式でセーリングの時にはコックピットに取り付けて使えるようになっていますが、その前の
オーナーのものはチャートテーブルの横の電源パネルに並んで付いていて、かなり古いGPSチャートプロッタなので、動きも遅いし、地図も古いということで、緯度経度の表示程度しか使えません。

GPSプロッタ
まあ、わざわざ外して捨てる理由も今のところの無いので、そのままにしています。コックピットに付けているものは、可動式のアームに付けて、タックが変わるごとに向きを変えられるようにして使っています。チャートプロットだけでなく、速度や、現在速度で港までかかる時間など、いろいろと便利機能もあるので重宝しています。しかし、最新の海図を見ることができるnew pec smart の登場は正直驚きました。また、カーナビアプリなどは、電波が届かないところで地図情報が動かなくなるのですが、new pec smartの場合には、事前に地図情報をダウンロードしておけるので、通信ができない海域でもGPS電波さえ受信できるようにしておけば使い続けることが可能です。これは物凄く便利です。また、家で航海計画が立てられるようになったのは嬉しいですね。同じアップルIDの端末間ならiPhoneとiPadの両方で使うことができるので、これも便利機能です。
これからGPSプロッタの導入を考えている方なら、先ずはこのアプリの使用を考えてみては如何でしょか?

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