我家のMALU号は30年以上前のデザインのヨットなのでバッテリーが2個しかなく、バッテリー2個は何となく心許無いような気がしたのもあって、このヨットを手に入れた頃は電気関係を一新してやろうと思いを巡らせていたりしていました。しかし、結局今までにやったことと言えばキャビンの照明器具をLED化した程度で、バッテリーの数を追加したり容量を増やしたりというような面倒な作業は未だ全く手をつけていません。マリーナのバースには陸電もあるので家電製品は問題なく使えるし、セーリング中の不便もそれほど無いので、そのままでいいかという感じになってきたんですね。しかし、最近になってハウスバッテリーの電圧降下が早くなってきたので、試しにハウスバッテリーをディープサイクルのタイプの物に交換してみました。

セーリング中に最も使う電気機器は計器類とGPSなので、これで気にせずつけっ放しで使えるようになりました。

バッテリー
しかし、ハウスバッテリーは出来れば陸電が無い場所でも数日なら安心して使える容量が欲しいですし、セーリング中も冷蔵庫を動かしたままにしておきたいって思ったりもします。そんな時に思うのが、ハウスバッテリーの容量は増やして、それもリチウムイオンバッテリーを積んでみたいって思うわけです。そして、充電も陸電からだけではなくハウス用の電源は日中の帆走時くらいはソーラーパネルからの電気で賄えたらいいな… なんて思ったりもしています。どうしてそんなことを考え始めたのかと言うと、最近のアウトドアブームでポータブルバッテリーがどんどん進化しており、どんどん新しい製品がリリースされ、どんどん大容量のものが出てきて、かなり使えそうな感じのレベルにまできているからです。また、ソーラーパネルも発電出力が1枚で150Wを超える物も出てきたので、これまたそろそろ使い時かな?って感じ始めたからです。

そこで今回は、ヨットにリチウムイオンバッテリー設置について考えてみたいと思います。

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そもそもリチウムイオンバッテリーとは?

2019年のノーベル化学賞にリチウムイオンバッテリーを開発した3人の科学者が選ばれ大きなニュースになりました。
ニューヨーク州立大学のマイケル・スタンリー・ウィッティンガム(Michael Stanley Whittingham)教授 、テキサス大学のジョン・B・グッドイナフ(John Bannister Goodenough)教授、そして 旭化成の名誉フェローである吉野彰さんらの3人です。

ウィッティンガムさんの発見

リチウムイオンバッテリーは、1970年代にアメリカの6大石油会社の1つであるエクソンで働いていたウィッティンガムがリチウムをアノード(負極)の材料として使う手法を発見、リチウムは非常に軽く反応性が高いことから電子を放電し易く、更に電子を蓄えることができるということを発見をしました。しかし、反応性が高いという特性から破裂し易いという弱点があり、この電池は実用には程遠いものでした。

グッドイナフさんと吉野さんの研究

1980年にオックスフォード大学に勤めていたグッドイナフは、この弱点を解消するコバルト酸リチウムをカソード(正極)材で用いることで安定した電池がつくれることを発見します。また、これと時を同じくして、旭化成の吉野研究チームは炭素素材の中にリチウムイオンを封じ込めながら電池にする複雑な方法を研究していました。その研究チームの一員であり、リチウムイオン電池の諸問題点(主なものとしては、静止状態で安定していても外部からの強い衝撃でも破裂しにくくすることや電池としての防爆性など)を解決し広く商用化できるレベルにまでに確立したのが旭化成の吉野さんというわけです。

リチウムイオンバッテリーの普及

1991年にリチウムイオン電池は商用化され、一般の人が最初によく目にするようになったのが携帯電話のバッテリーパックではないかと思います。しかし、この平たいバッテリーになる以前から既にリチウムイオン電池は広く使われていました。乾電池と同じような円柱型や円柱型のものを束ねたようなものから電線が出ているタイプのもので、メモリーが必要な電子基板に割と昔から取付られていました。この「超小型」「軽量」「リチャージブル(充電することで繰り返し使用することができる)に加え、「起電力4V以上」(これまでの乾電池は1.5Vなので、2倍以上の起電力)ということがリチウムイオン電池における最大の特徴であり利点で、これにより小さな電池1本でモバイルIT機器を動かせるようになったことがモバイル機器の急速な普及につながっていったわけです。

今では、リチウムイオン電池の技術は小さな物に限らず、ハイブリッド車や電気自動車などの大容量バッテリーにも用いられています。これも、従来のバッテリーよりも小さく軽く(起電力が)強い電池だからこそ自動車に搭載することができるようになったのです。少し前まではリチウムイオンバッテリーは非常に高価なものでしたが、様々な分野での利用普及が進むにつれコストも下がり、従来品との性能比較のうえで見合うレベルにまでなってきています。

リチウムイオンバッテリーのメリット

リチウムイオンバッテリーは、従来の鉛バッテリーに比べてエネルギー密度が高いため、同じ体積でおよそ6倍、同じ重さでおよそ4倍のエネルギーを蓄えることができます。また、ハイパワーで充放電回数も多いことから長寿命(鉛バッテリーのおよそ4倍)です。つまり、同じスペースでおよそ4倍の電気容量を蓄えることができ、4倍長持ちし、一度に大量に電気を取り出すことができ、更に大容量充電も可能なので、短い時間で充電が完了することができるというメリットがある電池です。

リチウムイオンバッテリ―のデメリット

「リチウムイオン電池は発火や発煙する危険性がある」と言うのが一般的な定説となっています。発火や発煙の原因は、バッテリー本体の不良または、バッテリーの充放電を制御する回路または装置の不良が主な理由です。つまり、品質不良という事ですね。
そこで、日本では「電気用品安全法(PSE)によるリチウムイオン電池の規制」が敷かれ、PSEマークの無いリチウムイオンバッテリーにおいては安全の保証ができないという形になっています。つまり、PSEマーク付きの物なら安心して使えるということです。PSEマーク
また、従来の充電システムを使用することが出来ません。(専用のバッテリーチャージャーが必要)コスト的にも従来のバッテリーと比べると価格は高いですが、充電容量や寿命を考慮すると、そのデメリットは無くなりつつあります。

ヨットと電気

今やヨットと電気は、日常生活で電気が欠かせないのと同様に電気無しということは考え難い状態になっています。エンジンやキャビンの無いディンギーならまだしも、セーリングクルーザーであればどんなに小さくても電気は必要です。電気の使途はエンジンの始動や法定灯火類、計器のみならず、無線機器やナビゲーション機器、モバイル通信機器と電気は航行中でも常時必要となっています。また、キャビン内での生活設備も今や一般の住まいと同じように家電製品を使う時代となり、必要となる電気容量は増える一方です。

電気の使用量と充電

ヨットは基本的にセーリングをして楽しむものなのでパワーボートに比べるとエンジンを回している時間は非常に少ないです。つまり、電気はエンジンを回していないときでも、様々な機器を使用することで消費されるため、エンジンを回している間の充電量に対して消費量が上回ってしまいます。陸電の無いところに係留している場合には、電気の使用量を極端に気をつける必要があり、補充電するためには、風力発電機やソーラーパネルなどを取り付けるか、補充電のために余計にエンジンを回して充電するなどの対策がヨットの場合には必要になります。

バッテリーの数と充電

電気を使う機器が多くなると、バッテリーの数も多くなるというのが、これまでのヨットの傾向でした。しかし、バッテリーの数が増えると、それだけのスペースやバッテリー容量に見合った充電源が必要になります。大型ヨットであれば、ジェネレーター(発電機)を積むスペースがあるので、充電もジェネレーターで賄うことができますが、そもそもジェネレーターを置くスペースが無い小型ヨットの場合には、エンジンのオルタネーター容量を大きなものに交換したり、増設して2台付けしたりで発電容量を増やすか、又は風力発電機やソーラーパネルなどを設置して対策をすることになります。しかし、従来型のバッテリーには問題もあります。

従来型バッテリーの問題点

バッテリーは大容量にしようとすると、体積が増え重量も重たくなります。これはどんな種類のバッテリーでも同じですが、従来型のバッテリーは鉛を使用していることから、バッテリーを増やすことは、重量が格段に重たくなってしまうというデメリットがあります。しかし、ヨットの中にバッテリーを置くことができるスペースは限られます。また、重量の増加は船のバランスにも影響し、あまり大きなバッテリーはメンテナンス性も悪くなることから、小さなヨットに積むことは難しいことです。そこで注目されるのが「リチウムイオンバッテリー」です。

リチウムイオンバッテリーのヨットへの搭載

最近では、自動車やオートバイなどでリチウムイオンバッテリーの搭載が始まっています。また、欧米ではヨットのバッテリーシステムをリチウムイオンにするのが流行しており、多くの導入事例が紹介されています。理由は、先に書いたように、電気の使用量が増えたからです。従来のバッテリースペースで4倍近くの電気容量を持つことができることから、これまで使うことが出来なかった電気機器すら使えるようになるからです。

ヨットへの搭載の問題点

これまでの従来型のバッテリーの場合、新型のバッテリーが出てきても、そのまま交換するだけで使い始めることができました。しかし、リチウムイオンバッテリーに置き換える場合には、従来型の充電システムは使うことが出来なくなり、充電システム全体を見直す必要があります。
また、リチウムイオンバッテリーの場合は、深放電させてしまうとリチャージブルの回数(バッテリー寿命)が極端に短くなってしまう性質があることから、充電だけでなく放電も管理する必要があるので、リチウムイオンバッテリー専用の充放電システムを新たに導入する必要があります。

簡単にヨットに導入する方法

リチウムイオンバッテリーの導入は、デメリットもありますが、導入することでのメリットも捨てがたい部分があります。そこで簡単にリチウムイオンバッテリーを導入できる方法があります。
それは、第3の電気回路を独自に作ってしまう事です。既存のシステムを交換するのではなく、独立したバッテリーシステムを導入してしまうのです。それが、「ポータブルバッテリー」です。
ポータブルバッテリーの中に入っている電池はリチウムイオンバッテリーです。ポータブルバッテリーは、充電・放電の管理を自らが行い、これ1つでシステムが簡単に構築できます。更に、ソーラーパネルを接続するけで充電を行うことができるものもありますから、ソーラー充電用のコントローラーも不要です。
ポータブルバッテリーを使えば、既存の電気システム全体を更新する必要がないことから、新たに追加して使う生活家電だけをポータブルバッテリーで稼働させることで、仮にポータブルバッテリーの充電が無くなったとしても航行には影響を与えないという安心感もあります。逆にヨット側の既存バッテリーが満充電で更にエンジンで電気を生み出している時には、その余った電気を充電することもできます。逆に、船側のバッテリーが何らかの理由で過放電になってしまった時には、ポータブルバッテリーから充電したり、ジャンプスタートすることもできるので、緊急時の補助電源としても利用できる利点もあります。
更に、ヨットに乗らない時には自宅に持って帰り充電することができますし、災害時などの停電時には、非常電源としても利用することもできます。
陸電のあるところならば、そのまま充電も可能なので、あらゆる面で無駄のないバッテリーシステムがポータブルバッテリー1台で構築できるということです。

電子レンジも使うことができるポータブルバッテリー

ポータブルバッテリーもようやく大容量の物が出始めました。

suaoki G1000上の写真の製品を例に話をすると、バッテリー容量は1182.72Wh(44.8V/26400mAh=3.2V/369600mAh)で、計算上では100Wの家電製品を約11時間使えるほどの容量です。このポータブル電源を家庭のコンセントで充電した場合、およそ10時間でフル充電となるそうです。その他にも、シガーソケットを介した充電にも対応し、ソーラーパネルを使った充電にも対応しているので、ソーラー充電システム構築しなくてもソーラーパネルを接続するだけで簡単にソーラー充電ができます。

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最後に… アウトドアブーム

ヨットの電気について、これまでは使用量が増えればバッテリーを増やすということでしか解決できませんでしたが、アウトドアブームの到来で外で電気を使いたいというニーズが高まったことで、ポータブル電源の需要が拡大しています。需要が広がれば、メーカー同士の新機種開発合戦も始まることから、次々に大容量で使い易いポータブルバッテリーが発売されてきています。
また、オールインワンのポータブルバッテリーでは無く、個別にシステムを構築するタイプのリチウムイオンバッテリーシステムでも、様々な物が出始めています。古いヨットに乗っている人にとっては、既存の電源システムを更新することなく、こういうポータブルバッテリーを追加で載せることで、簡単に電気製品をヨットで使い始めることができるようになったのは、とても嬉しいことですね。是非、検討してみては如何でしょうか?

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