僕たち夫婦がビギナーだった頃、毎回のように頭を悩ませていたのが服装です。ヨットは優雅でのんびり…というのはイメージの中の話だけで、実際には冷静に考えてみると「風の力で走るんだから風対策しなくちゃいけないよね」とか「海の上なんだから潮を浴びたりすることもあるよね」…といろいろ考えを巡らせては、どんな格好でゆくのが一番いいのか思案していました。まだヨットウエアなんて持っていなかったので、手持ち衣料でとりあえず使えそうなものや濡れても構わないようなものを選び、そのうえ、着替えも持っていったりと、いろいろと当時は工夫していました。

初心者の時は何をどう組み合わせれば良いかわからないもの、そこで今回はヨットに乗るときの服装について触れてみたいと思います。

セーリングってどんなもの?

セーリングは基本的に帆を使って海上を走ることです。ヨットのセーリングも帆を上げ風を受けて海上を船で走りますが、船は大きい方なので水に浸かったり、海中に落水することは殆ど無いと考えて良いです。ヨットは追い風でも向かい風でも、その風の力を有効に使って船を動かすので、基本的にはセーリング中は常に風の中にいると考えればいいです。セーリングできない時は風の無い時ですが、セーリングで船が走っている限り風の中に常にいるという事になります。また、セーリング中は基本的にヨットのデッキ上(コックピットも含む)に居ます。中には寝不足でキャビンに降りて寝ている人がたまにいますが…。パワーボートの場合、移動中大きくバウンドしたり高速で走るので挙動が激しく危険性が高いことから乗船者は基本的にキャビン内に居ます。言い換えると単なる移動手段ですが、ヨットは移動手段は勿論ですが、風を使って走ること(セーリングすること)が目的のアウトドアスポーツですから乗船者はセーリングを楽しむためにデッキ上に居るというわけです。

風を考える

ヨットでは何事においても風が一番意識すべきポイントになります。服装を考えるうえでも、風を意識して考えるべきなのです。ヨット上では、止まっているときに感じる風に対して、走っているときの風の感じ方は異なります。風上側に向かって走っているときは止まっているときに感じる風よりかなり強く感じます。また、風下側に向かって走っているときには、止まっているとき感じる風よりも弱く感じます。また、風を真横から受けて走っているときには、実際には真横から吹いていても、斜め前から吹いているように感じ、止まっている時に感じる風よりも強く感じます。風に対してどういう向きで走っているかによって、風の感じ方はかなり違いますが、風に対して上りで走っているときは、かなりの強い風を感じるということが重要になります。

風があると、体の体温を奪います。真夏の猛暑時以外は、春秋の過ごし易い時期でも船上では風の影響で肌寒く感じます。夏でも最盛期以外は長時間のセーリングで長く風にあたっていると肌寒く感じることがあります。小型のディンギーやウインドサーフィンなどは確実に水に浸かってしまうことがあるのでウエットスーツなどを着ます。ウエットスーツは体から体温が奪われるのを防いでくれますが、ヨットの場合には外気温と風の関係で着る物を随時調節する必要があります。

波を考える

ヨットはセーリングすることが目的のアウトドアスポーツだと書きました。その通り、セーリングは殆どの時間をデッキ上で過ごします。セーリングするということは海の波を切ってヨットは走るということです。風が強ければ大抵は波も大きくなります。風があっても海面が波立っていないこともあります、そういう時は水面に抵抗が少ないのでヨットはよく走ります。そうすると小さな波でも船がぶつかると飛沫(しぶき)が飛びます。これをヨットではスプレーと言います。当然、風が強く波が高い場合のスプレーはかなりの量になります。更に、風上に向かって走れば、風波に向かって走ることになるので、更にスプレーは強くなります。普段のセーリングでスプレー以上の波を直接被ってしまうということは少ないですが、外洋に出てセーリングする場合には、波を被ってしまうことも少なくありません。

波があるとスプレーで確実に濡れます。直接スプレーを浴びるだけではなく、スプレーはデッキやコックピットにも掛かるのでデッキやコックピットは濡れます。濡れているから座れないのでは揺れる船上では非常に大変な思いをするので、気にせず座れるような準備が必要になるわけです。

光を考える

風と波は考えますが、意外に忘れがちなのが光です。ヨットはアウトドアスポーツなので、先にも触れたように長時間デッキ上にいます。海面は太陽の光を反射し、水面はキラキラ光ります。当然、空から陽の光が降り注ぎます。日焼けを気にするのは夏場だけではありません。また意外に日焼けするのが曇り空です。暑くないのにしっかり日焼けだけはしてしまいます。ヨットの場合、年中通して日焼けを意識する必要があります。

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最後に

ヨットでの服装は「風」「波」「光」の3つに留意して着るものを考えれば、あとは季節ごとの気温との関係を意識すればよいわけです。ヨットの世界では現在の季節よりも1段寒い季節の服装を準備するのがセオリーになっています。陸上では暖かくても先に説明したように、海上は涼しいです。船上で常に動き回っているわけではないですから、徐々に体温を奪われ寒くならないように気を付ける必要があります。

また逆に、真夏は脱いでも脱ぎきれない程暑くなります。だからといって裸でいると酷い日焼けになってしまいます。風があるのでセーリング中は日焼けしているのに気付かないのですが、陸に上がってから日焼けに気付き痛い思いをします。あとは、船上は狭くて人が多いので、あまり嵩張り過ぎず、動きやすいものを選んでみてください。

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