単独無寄港ヨットレースの Vendée Globe(ヴァンデ・グローブ)について先日ご紹介しましたが、2020年開催のこのレースに日本から出場を目指す海洋冒険家の白石康次郎さん(DMG MORI SAILING TEAM 所属)の新艇”DMG MORI Global One” が9月11日に進水したと、彼のホームページでニュースリリースがありました。
これまで彼の世界でのチャレンジは、師匠である多田雄幸さんの残した艇から始まり、アラウンドアローンではフィノデザインのOPEN 40クラス艇、そして前回のVendée Globeでは初の本格IMOCA 60艇での参戦ではありましたが、既に地球を3周分も帆走した中古艇でのチャレンジが仇となったのか疲れ果てた艇は世界一過酷なレースに耐えることが出来ずマストが折れるという致命的なトラブルでリタイアとなってしまったこともあり、今回は初の新艇「IMOCA 60 オープンクラスのモノハルフォイリング艇」という名実ともに世界トップクラス艇で世界と互角の戦いを繰り広げることができる最新艇でのチャレンジとなります。
今後、フランスやポルトガル海域でのトレーニングを経て、Vendée Globe 2020 の出場資格の要件となる予選レースへの出艇が予定されていますので、Vendée Globe までのこれからの道のりなどについて、お話してみたいと思います。
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Vendée Globe への出場資格の要件
Vendée Globe への出場にはIMOCAの基準に則ったレース艇の準備だけでなく、その艇によって世界一過酷なレースにシングルハンドで参加できる技量があることを証明する必要があります。そこで、主催者側は参加資格として、以下のレースうち少なくとも1つを完走する必要があると定めています。
1. VendéeGlobe 2016-2017
前回のVendéeGlobe 2016-2017大会での完走者には、2020の参加資格が与えられています。
白石康次郎さんは、残念ながら途中リタイアという事で参加資格を現段階では持っていないということになります。
2. La Route du Rhum – Destination Guadeloupe 2018
「ルートデュラム-ディスティネーション グアドル―プ」は、フランス最大の大西洋横断シングルハンド・ヨットレースで2018年に行われた大会では11ヶ国から6つのフリート(ヨットのデザイン別クラス)に124人のソロ(シングルハンド)スキッパーが出艇し、2018年の11月4日にスタートしました。
このレースはフランス北部にある港町であるSaint Malo(サン-マロ)をスタートし、カリブ海のフランス領であるGuadeloupe(グアドループ)県の主要都市であるPointe-à-Pitre(ポアント・ア・ピートル)までの間の3,542マイル(海里)で競う大西洋横断ヨットレースです。
3. Transat Jacques Vabre 2019
「大西洋横断ジャックヴァブレ」は、フランスのコーヒーメーカーであるJacques Vabre社が1993年に、フランスとブラジルの間をコーヒーを貨物としていた帆船(クリッパー)の航海をイメージして開始されたヨットレースです。当初はシングルハンドレースとしてスタートしましたが、1995年の第2回レースからダブルハンド(2人乗り)ヨットレースとなり現在に至ります。レースはフランス北部の港町Le Havre(ルアーブル)からブラジル北東部にある港湾都市 Salvador de Bahia(サルバドール・デ・バイア)の間の4,350マイルで行われます。
2019年のこのレースは10月27日にスタートの予定ですが、白石康次郎さんの出艇の予定は今のところ無さそうです。
4. The Transat 2020
「ザ・トランサット」は、世界最初の大西洋横断シングルハンドヨットレースです。レースの起源はイギリスの船員が大西洋をシングルハンドでアメリカまで誰が最も速く航海できるかを確かめるために賭けをしたことから始まります。最初のレースは1960年に5隻のヨットによって行われました。2016年のレースはイギリス南西部Plymouth(プリマス)からアメリカのニューヨークまでの3,500マイルで行われ、2020年の次回レースはフランス西部、ブルターニュ半島西端に位置する港湾都市であるBrest(ブレスト)をスタート、ゴールはレース史上初のアメリカ サウスカロライナ州の Charleston(チャールストン)の間の3,500マイルで2020年5月10日より行われる予定です。
5. New York – Vendée Les Sables d’Olonne 2020
「ニューヨーク-ヴァンデ」は「IMOCAグローブシリーズ 2018-2021 チャンピオンシップ」”IMOCA GLOBE SERIES 2018-2021 CHAMPIONSHIP”全8戦のうちの第7戦目にあたるTransat(大西洋横断)レースです。このレースは、シリーズ第6戦の THE TRANSAT でアメリカ側に行ったIMOCAレーサーのフランス側への戻りレースであり、またこのレースでVendée Globe本戦への出場艇がスタートの地であるフランスのLes Sables d’Olonneに集結し本戦への準備を始める直前レースでもあります。また、Vendée Globeへの出場資格を賭けた最後のチャンスとも言えます。このレースはその名のとおり、アメリカのニューヨークからフランスのサーブル=ドロンヌの間、3,100マイルで行われ、2020年6月16日より行われる予定です。
最後に…
白石康次郎さんにとって Vendée Globe への戦いは、前回のリタイアした時から始まっていました。新たなスポンサー探しや、更に彼の活動を世間に知らしめるためにリタイアした前回出場艇「Spirit of yukoh号」を日本に戻し、全国各地の港を巡るキャンペーン活動などを行っていました。その活動の中でDMG森精機社長との出会いがあり、日本初のプロセーリングチームができるキッカケとなったわけです。DMG森精機と言えば、産業用金属加工機の世界トップメーカーであり、自動車レースのWEC世界耐久選手権で2014年のル・マン24時間レースにワークス体制で復帰するポルシェチームのメインスポンサーとして、LMP1-Hクラスレースカー『ポルシェ919ハイブリッド』のシャークフィンに大きく『DMG MORI』のロゴが掲げられ、2017年のシーズン終了までポルシェとのスポンサー関係が続いていたのが記憶に新しいところです。この様子を見てヨットファンの僕としては、是非とも白石さんのVendée Globeへの挑戦にこういう企業が力を貸してくれたらなぁとDMG MORIのロゴが入ったポルシェがルマンなどを走る姿をテレビで見ながら思っていました。それが現実のものとなり、こうして最新艇が進水した今、ようやく準備が整い、本格的なVendée Globeへの挑戦が始まったと言えます。
来年5月と6月の行われるTransat(大西洋横断レース)で出場資格を賭けて参戦予定です。国家的イベントでもある東京オリンピック直前となりますが、ヨットファンのみならず、日本の全ての人たちに、この白石さんの挑戦を知ってもらいたいですし、白石さんへの応援をお願いしたいと思います。
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