先月あたりからマリーナのお隣さんのエンジンの調子が悪いと言う話が出始め、話を聞いてみるとオイルプレッシャー(油圧)低下の警告ブザーが鳴るようになったそうで、出航を取り止めて直ぐに戻ってくるなんてことが起き始めた。原因は何なんだろうと色々話をする中で、オイル添加剤を入れたのがよくなかったのかとか、とにかくオイル交換してみても一向に改善しない、次にオイルポンプが悪いのかもと交換しても油圧は戻らない。もう、マリーナのメカニックさんも原因が分からず困り果ててしまったといった具合になった。
このお隣さんのヨット、今年の春前に上架整備して船底塗装やオイル交換など、春から全開で遊べるようにメンテナンスをされた。うちの船は今年は上架せず、貝の着き具合を見てみようと船底はらやずに定期メンテナンスとして同じ頃にオイル交換、オイルや燃料のフィルターの総替えをした。その後にMALU号はオイル漏れがある事に気付き、オイルドレンパイプから漏れているのを発見。これはこのブログでも紹介した通り。そんな修理が終わった頃に今度はお隣さんのヨットで油圧低下トラブルが始まった。互いに悩みは尽きないね…なんて話しながら、とにかく問題解決に向け、僕も色々と調べてみる事にした。
前回のオイル交換から数ヶ月経過していて、急に油圧低下のアラームが鳴り始め、オイル交換してみたり、オイルポンプも交換したけれど直らない、そしてお隣のオーナーさんからLINEが入り、原因がわかったと連絡が入った。その原因は、とにかく予想外の結末だった。
その結末は、最後に回す事にして、このことがキッカケでヨットのエンジンオイルについて、色々調べたりしたので、今回はその調べてわかったことなどをメモがわりに書いておく事にします。
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エンジンオイル交換の目安は?
先ずは、とても基本的な話として、ヨットのエンジンオイルってどのくらい機走したら交換するものなのかという話です。
MALU号の場合には、年に一度、オイルとオイルフィルターを両方とも同時に交換しています。
うちの船は VOLVO PENTA エンジンですが、ヤンマーやその他のエンジンメーカーのエンジンでも、小型艇(5馬力以上40馬力以下のインボードディーゼルエンジン)の場合には、メーカーの推奨する交換時期の目安は50〜100時間、または1年に一度のどちらかが到来した時とあります。
100時間と言うと、とても少ないように感じますが、そもそもセーリングクルーザーであるヨットは、エンジンだけで航行するわけではないので、エンジンを使用するのは出入港の時や風が落ちた時など限られるので、仮にそれで1回の出航で1時間エンジンを回したとしても100回も出航できるわけです。100回と言うと1年365日の1/4以上もヨットを出すことができる回数ですから、僕だと年間に50回程度の出航だと2年分くらいの回数になります。
しかし、1年くらい経つとオイルに水分などの混入もあり、更に酸化などの化学変化等もあることから、オイルの能力が格段に落ちてくるので、あまりエンジンを動かさなくても年に一度はオイル交換して下さいと言うのが、メーカー推奨となっている理由とのことです。
勿論、高回転域で長時間使用したなど、通常とは異なるハードな状態でエンジンを多用した場合などは、もっと小まめにオイル交換して下さいと言う意味合いで、50〜100時間と幅を持たせているわけですね。
(注意:くれぐれも最大回転数以上は回さないようにしましょう。)
エンジンオイルで気をつける事は?
オイルを適正に交換していれば、気をつけることはそんなに無い筈ですが、エンジンは金属製で、その中の部品は金属同士が擦れ(こすれ)合って動いています。
つまり、この金属同士の擦れが摩擦となるわけですが、この摩擦を低減し、スムーズに部品が動くようにするためにあるのがエンジンオイルの最も大きな役割です。
また、摩擦により熱が発生し、熱により金属は膨張します。膨張により部品が動き辛くなってしまいます。潤滑することで熱の発生を抑え、更に部品の熱をオイルが奪って冷やすと言う仕事もオイルは担っています。
しかし、幾ら潤滑させても部品は徐々に消耗して金属カスができます。更に爆発時の熱で燃料に含まれる不純物も燃え、燃えカスが出ます。オイルはこれらの燃えカスを洗い流し、金属部品同士の微細な隙間に目詰まりを起こさないようにする役割も担っています。
その他にもエンジンはシリンダー内部で燃料により爆発することで力を取り出してプロペラの回転に変えてますが、爆発による高温の環境下で化学変化などで生成される不純物などもエンジン内部に堆積します。これらを洗い流しオイルフィルターで濾しとって綺麗なオイルを循環させるためにオイルフィルターがあります。
つまり、エンジンオイルは汚れてくると言うことです。
次にエンジンオイルは微量が燃えて減ってゆきます。
ですから、出港前にはオイルの汚れ具合と減りを確認することが重要となります。
汚れは綺麗な白いウエス(ティシュやキッチンペーパーなどでも良い)でオイルレベルゲージ(デップスティック)に付着したオイルを拭き取ってみて、黒さ(汚れ)を確認すると共に金属のようなザラザラ感を感じたり、目で見てキラキラとわかるようになっていると汚れがかなり進んでいるので、前項で書いた目安時間になっていなくてもオイルやフィルターの交換をするべきです。
また、オイルの量については、ゲージのレベルいっぱいと言うよりは、下限と上限の真ん中辺りにオイルレベルがあるのが理想です。
それより少なければ補充するのが安心です。
上限を超えている場合はオイルを必ず抜く、下限を下回っている時にはエンジンはスタートせずに先ずは補充を優先します。
オイルレベルはとても重要
結論から言うと、エンジンオイルは多過ぎても少な過ぎてもエンジンを壊します。
レベルゲージ自体に安全マージン(幅)があるのですが、エンジンオイルをレベルゲージいっぱいまで入れるのはエンジンにとってあまり良くないという意見をネット上のヨットフォーラムやヨット関連ブログなどで目にします。まあ、OKの範囲内でも適量が最もエンジンにとって良いという理論には賛成です。何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」ですから。
オイルが少な過ぎるのは、前の項目で書いた、潤滑、冷却、洗浄のどれもが不足すると言うことでエンジンによくないのは誰でも容易に想像できます。
しかし、多過ぎるのはなぜ良くないのか?と思われる人も居ると思います。
そこで、オイルが多過ぎると何が起きるのかについて、以下で説明しておきます。
1. クランクシャフトがオイルをかき回す
オイルを入れ過ぎるとクランクシャフトの回転部分がオイル面に直接触れてしまいます。その結果、クランクシャフトがオイルを攪拌して泡立ち(エアレーション)、液状のオイルが不足して油圧が不安定になり潤滑不良が発生します。これによりベアリングやメタルに油膜が維持できず、焼き付きにつながります。
この現象、分かりやすく解説すると、ビールを一気にグラスに注ぐと泡が多くて液状のビールはコップの下の方に少しだけしか入りません。そうなると飲めるビールの量が少なくなるのと同じで、泡立つ事により潤滑に使えるオイルの量が減ってしまうわけです。泡立ったエンジンオイルをオイルポンプで吸い上げることが出来なくなるのです。
2. クランクケース内の圧力が上昇
オイル量が多過ぎるとクランクケース内の空間が少なくなり、温度上昇と共にブローバイガスやオイルミストが急増し内圧が上昇、オイルシールやガスケットが吹き抜け、オイル漏れなどの破損を招きます。
3. 燃焼室へのオイル流入
オイルを溜めているクランクケース内の圧力上昇で吸気系やブローバイ経路からオイルが燃焼室に吸い込まれ、オイルが燃料のように燃える「ディーゼルランアウェイ」が発生し、エンジンが制御不能で暴走してしまいます。これによって最悪の場合、コンロッドの破損やピストン溶損などでエンジンが壊れてしまいます。
4. ターボや排気系への悪影響(ターボ付きの場合)
過剰オイルがターボチャージャー軸受に流入し、焼き付き・オイル下がりを加速。排気系にオイルが流れ込み、黒煙・白煙・触媒やDPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼル微粒子捕集フィルター)の目詰まりを引き起こすこともあります。
最後に… 油圧が落ちた理由
エンジンオイルのことを色々調べてみて勉強になったことは、オイルレベルがとても重要だと言うことでした。
オイルなんてレベルゲージの上限一杯まで入っていれば、大丈夫だってニンマリしていたんですが、ヨットの場合、何故そこまでキチンとした方がいいのか? それはヨットが波などで揺れ動くからです。先の項目でオイルはクランクケース中で油面がクランクに直接触れないレベルまで満たされているのです。これがオイルにとって大切な事で、入れ過ぎはエンジンを痛める可能性が大きくなるからです。
なので、オイルの量はデップスティックの真ん中辺りを常にキープできるようにしておくのがベストと改めて思いました。
もう一つ気になっていたのが、メーカー純正オイルがとても値段が高く、純正で無いとダメなのか?純正と市販のオイルはどう違うのかと言う事も調べてみたのですが、これは次回に書きたいと思います。
さて、冒頭の話「油圧が落ちてしまった理由」ですが、なんと驚きの結末でした。
実はオイルフィルターを取り付ける場所に燃料フィルターを付けてしまっていたそうです。
オイルフィルターと燃料フィルターは、本来なら形も違えばねじ込みのネジ径も違う筈。つまり付け間違いしないようになっていると思っていたのですが、お隣さんの船のエンジンはたまたまオイルフィルターと燃料フィルターのねじ込みの規格が同じでついてしまったとのこと。更に、フィルターの外見も同じで小さく燃料と印字されているだけだそうで、付け間違いに気付けなかったそうです。
燃料フィルターは油水分離器側の一次フィルターとインジェクター直前の二次フィルターの2つあるうちの二次フィルターがオイルフィルターとそっくりだったらしいです。
オイルフィルターを交換して直ぐに油圧が落ちれば、付け間違いに気付けた筈なのに数ヶ月後に急に油圧が下がったので、フィルターが違う物が付いているとは全く思わなかったそうです。
しかし、謎は深まるばかりで、燃料フィルターはサラサラの軽油を濾すための物で、燃料フィルターをオイルフィルターとつけ間違えるとオイルは目の細かいフィルターを通過することはできずに異常な状態になる筈なのに、数ヶ月は問題なく稼働していたと言うのは、理論的にはあり得ない謎です。
つけ間違いによりどうなるのかというレポートは何処にも無く、理論的にこうなる筈だと言う推論しか無いので、今回の事でつけ間違えても直ぐには不具合が起きないと言うことはわかったので、フィルター交換の際には付け間違えのないよう、必ず取り付ける時にはオイルフィルターである事を確認してから取り付けなければならないと言う事です。
また、燃料やオイルのフィルターは一度はセットで並べて確認しておいて、分かりにくそうであれば間違えが起きないように、フィルター本体にマジックか何かで大きく「オイル」とか「燃料」とか書いておくと安心かもしれません。
更に交換した際には、交換日もフィルター本体に書き込んでいる人もいましたので、それも真似してみようかなって思いました。
外見が似ているフィルターは、くれぐれもご注意… という事で、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。
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