僕たち夫婦のMALU号は、前オーナーから直接購入しました。前オーナーさんは関西に住んでいらっしゃる方で船は岡山県に係留されていました。岡山からホームポートとなる静岡県清水港までの回航は、前オーナーさんは長距離クルージングの達人、岡山~沖縄を2往復もされたという猛者ということもあり、東の方には行ったことがないので行ってみたいから手伝うよと言われ、お言葉に甘えさせて頂き自力回航しました。初の瀬戸内海から鳴門海峡を通り紀伊半島を回って遠州灘を越え駿河湾に至る回航4日間、大荒れの海を乗り越えながらも本当に楽しく回航することができました。また、前オーナーさんにお付き合いいただいたことで、船の扱い方などを詳しく回航中に見聞きすることができたので、回航後も直ぐに夫婦でセーリングを開始するときにも戸惑うことなくスタートできました。

MALU号をホームポートの自バースに係留し、お手伝い頂いた前オーナーさんを見送ったあと、僕は暫くMALU号の中で放心状態というか、自分がヨットを本当に持つことができたんだっていう気持ちと、数日間の回航の余韻に浸りながら艇でしばらくぼんやりしていました。
自分のヨットを持ちホームポート(母港)に初係留すると、ついに自艇でのヨットライフが本格始動します。

さて今回は、ヨットを持って最初にやったことを、当時の話を交えてお話したいと思います。

回航完了、まずは整理と掃除からはじまる

MALU号の場合、現状渡しが条件の購入でした。前オーナーさんは、船に搭載している殆どの物も含め、艇を引き渡してくれました。新艇を購入していたなら、必要で買わなくてはいけない係留用具から工具類、予備部品、材料類、ギャレーの食器類や調理用具に至るまで、とにかくそのままでもセイリングは直ぐにできる状態でした。しかし、長年乗ってこられたその艇は、徐々に掃除も行き届かなくなっていますし、ロッカーや戸棚の中など、何が入っているのかも全部出してみないとわからないほど大量にいろいろなものが入っていました。

先ずは、全ての物を出して、使う物、使わない物、ゴミの選別からスタートです。
回航直後だったので、数日家を空けていますから、早く帰りたいところですが、ホームポートに着いたのは早朝だったので、夕方までは作業をして帰ろうと決め作業しました。でも結局、搭載物の選別はあまり進まず、長旅の潮を流したり、キャビン内外を整理し掃除するのが精一杯、それでもゴミ袋に5袋分くらいの不用品ゴミが出ました。その後も艇に行く数回はセーリングしたあとは、掃除と片付けに明け暮れる毎日がつづきました。

床板全部を外してみる

船内の掃除や整理が終わり、最初にやったのが、まだ見ぬ自艇の隠ぺい区画である床下です。床はタッピングビスでネジ止めされていますから、電動ドライバーを使ってネジを抜き、前部の床板を外してみました。
床板を全て外すという事は、船底の状態を全て見ておくという事です。
完全にドライな区画もあれば、水が溜まっている場所があったり、ビルジが溜まっている個所など、いろいろとありましたが、先ずは水が溜まっていた場所の排水と水が何処から来ていたのか、その水は海水か真水かを確認しました。水はとりあえず舐めてみるしかありません。
水が何処から来ているかは、実は直ぐには解りません。なので、一旦完全に排水してみて、経過観察する方法でとにかく完璧に排水作業をしました。おそらく、最初の排水でバケツ10杯分くらいの水が排水されたと思います。前オーナーからは、この艇はスルーマストだから幾ら防水処理ををやってもマストを通じて船底に水が溜まるんだよと言われていました。なので、長い間排水作業をしていないなら仕方ないなと思っていましたが、実はそうではありませんでした。

ベッドやベンチシート下を全て開けてみる

床板を外してみたことで、意外に水が船底に溜まっていたので、バウバースやクォーターバースのベッド下も全て開けて、マットは天日干ししました。ここで事件が起きます。バウバースのベッド下がプールになっている!
MALU号バウバースのベッド下には、ステンレス製の清水タンクが収まっています。購入前に見た時には、ここは奥深いので物入にも使えるなって思って、特に問題ないことを確認していたのですが、水がプールのように溜まっているのです!もう驚きました。ここから溢れて床下に行った水も少なくないようで、なるほど床下の水の前半分はここから来ていたことが判りました。

クォーターバースのベッド下は幸いにもドライ。中にはバッテリーとインバーターが収まっており、ここに水が入ったら電気系統は一発でアウトだなって思いました。ここも買うときに一度は見ていたのですが、マットや蓋の板を完全に外して中を見たのは初めてだったので、ついでに配線や配管がどのように通っているかを確認しておきました。
キャビンの両舷にあるベンチシート下も確認してみましたが、ここは船底よりも少し高い位置になるので水は見られず、スターボード側はポリ製の清水タンクが入っていました。ポート側は、ビルジポンプ、温水器があった跡だけで、大きな物入空間となっていました。

水漏れ問題は、ここから完全解決まで1年間を要して、現在は完全に解決しました。もう、マジで憂鬱でした。水漏れ解決ストーリーについては、また別の機会にお話ししますね。

コックピットロッカーの中に入ってみる

MALU号のコックピットロッカーはコックピットのポート側とスタン側に2箇所あります。中にはフェンダーや各種ロープ類などがは入ってますが、一度全部出してみて中に入ってみることにしました。出てくる出てくるいろんな物の山。ゴミと言うしかない物もあったりしますが、船底までしっかり掃除することができました。嬉しかったのは、キャビン内の船底が水だらけだったのに対して、こちらは全体がドライだったこと。中は掃除機で掃除できるほどにドライな状況で、直ぐに綺麗になりました。しかし、配線類の処理が不十分で縦横無尽にと通っていたので、物の出し入れで引っ掛けて断線なんてことは絶対に嫌なので、配線整理は勿論行いました。中には使っていない配線がそのまま付いたままになっていたりしたので、不要な配線は全て外しました。とにかくシンプルが一番ですから。
スタン側のロッカーは、かなり深く、操舵系のメカが壁板1枚で区画されていたので、そこも一度外して中を見てみました。ラットからラダーにつながる部分を全て見ることができ、そろそろグリスアップやり直しだなって感じだったので、見ておいてよかったです。後に、舵を切ると鳴くようになり、一度見ておいたことで、メンテナンスを直ぐにすることができました。

ガス庫を開けて掃除する

スタン側のコックピットロッカーはスタンのポート側半分にありますが、スターボード側半分はガス庫になっています。MALU号は購入前からプロパンガス設備は外して無い状態で、ガス庫の中には予備燃料がポリタンク4本分備蓄されています。ポリタンク、ガス庫共に汚れていて、コックピット上に来た水は、ガス庫を通じて船外に排出されるようになっていたので、ゴミ溜まりにもなっていました。また、スタン用のアンカーもここに入ってたので、中身全部を出してとにかく掃除、掃除、掃除…。

コックピットの床とスノコの汚れとり

ガス庫が汚れているということは、コックピットのスノコの下も長年、スノゴを上げて掃除されていないようだったので、上げてみると凄い状態でした。スノコも藻がついて、乾いて、と繰り返したような感じで、デッキブラシで水を掛けながら掃除すると、スノコは物凄く綺麗になりました。藻でコーティングされていたのかと思う程でした。コックピットの床は堆積した汚れをデッキブラシでゴシゴシ…。これも物凄く綺麗になりました。どしても床に格子状のスノコを置いていると、汚れが溜まりがちになりますが、停泊時などは裸足で気持ちいいので、やっぱりスノコあった方がいいんですよね。また、夏場はデッキ上が熱くなってしまいますが、スノコがあると熱も防ぐことができます。デッキの下はバウバースですので、バウバース内の居住性にも一役買っていると思います。まあ、マメにスノコも床も洗うことだなって思いました。

アンカーウェルの中身を全て出す

アンカーウェルの中って、意外に砂やゴミが入っているものです。それはクルー時代から他の艇でもそうだったので、MALU号は凄いことになってるかも…と思いながら、アンカーロープやチェーンを全てデッキ上に出してみました。案の定、中は長年の汚れで排水用の穴も詰まっており、水を入れてもなかなか抜けない状態でした。中を掃除して、アンカーロープとチェーンもデッキブラシで水を掛けながら洗浄しました。殆どこれだけでセーリングを終わった後の半日仕事でした。

船名を貼りかえる

掃除が終わってようやく船名の貼り替えをやることにしました。船名は貼る場所の大きさを測ってカッティングシート屋さんにネットで注文。原寸大のデータを送って切り抜きしてもらいました。
古い船名もカッティングシート貼りだったので、先ずは前の名前剥しからです。結構、手間取るかと思いきや、プラスチック製の小型のヘラで端っこからシートを起こしてゆくように剥してゆくと、糊残り無く綺麗に取れてくれました。MALU号は3オーナー目となるので、前の名前の仕方からは、その前の名前の跡も見えます。まあ、この辺はコンパウンドで磨いて消えるかなって思ってましたが、前の名前の後は消えましたが、その前の名前の後を消すにはかなり気合を入れてやらないと落ち無さそうだったので、無理に落とすのを止めました。
船名貼りは、一人作業ではなかなか大変なので、位置関係と角度を見てもらえる人が居るとうまくゆきます。バウ側の両舷と船尾にも船名を貼りました。

最後に ~見たことがない部分をなくそう~

最初にやったことの殆どは、掃除、掃除、掃除ばかりですが、僕にとってこの掃除作業は自分の艇の隅々までを知るという意味で重要な作業でした。外してみないと、入ってみないと中が見えない部分は意外に多いです。見たことがない部分を無くすことで、何か起きた時にいろいろと考えることも直ぐにできますし、役にも立ちます。ヨットに乗ることは、ヨットの状態を常にモニターして、何か不具合を見つけたら常にメンテナンスをすることでもあります。乗るだけではなく、メンテナンスすることもヨットライフの一部として楽しんでするくらいでなければ、ヨットを持っても大変なだけだです。新艇で購入されても、4-5年経ってくると、いろんなところがガタが出たり外れてきたり、汚れが溜まったりと、クリーンナップ、メンテナンスが必要になってきます。メンテナンスと言っても素人仕事で十分できる部品の交換や補修作業も多いので、そういう作業をヨットの楽しみの一部としてやることで、常に自分にとって快適な艇を維持し続けることができると思います。

個々の作業については、今後少しずつご紹介してゆきますので参考にしてください。

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