ヨットを持って丸2年、僕たちのMALU号も台風シーズンを2度経験しました。一昨年の台風は、直撃こそ無かったのですが、毎週のように台風がどんどん発生し、日本の南岸にある多くのヨットハーバーやマリーナでは大きな被害が出ましたが、何とかMALU号を係留しているマリーナは被害を免れ、我がMALU号も特に問題ありませんでした。しかし、昨年の台風はマリーナを直撃、風速は50メートルを超え、マリーナに設置してある風速計が壊れてしまう程の台風が直撃し、桟橋が壊れたり、係留しているヨットにも多数の被害がでました。我がMALU号は船首が桟橋にぶつかって傷が付いてしまい、桟橋に取り付けていたフェンダーも大きく割けてしまっていました。マリーナの人に話を聞くと、とにかく波がバチャバチャ、セイルを出していなくてもヨットは全て大きくヒールしていたそうです。また、船の舫はどの船も50センチ以上伸びる程の風でどうしようも無かったと語っていました。

船の傷やフェンダーの割けなどは、後日補修して何とかなりましたが、船によってはマストごと折れたり、ジブセイルが開いてセイルが破れたりと、我がMALU号はこの程度で済んで良かったと思うのですが、全く無傷だった艇もあるわけですから、係留の舫い方が良くなかったと反省するしかありません…。ということで、今年も既に台風が幾つか発生し日本に上陸していますが、本格的な台風シーズンはこれからです。到来時には十分な準備をしておきたいものです。

そこで、今回はヨットの台風対策について、お話をしたいと思います。

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台風対策のポイントは「取り外し」と「固縛」

台風時には何と言っても風と波の影響を最も受けます。荒天に強いと言われるヨットですが、係留しているという事は、洋上に出ているのとはちょっと具合が違います。先ず、風や波でヨットが移動してしまってはいけません。つまり舫のやりかたを普段以上に考える必要があります。また、デッキ上の物についても、飛ばされたり、暴れた動いたりしないように、また壊れてしまわないように十分な固定が必要です。固定するには、ロープで縛るしか方法はありません。つまり、固縛をきちんとしているかどうかです。
しかし、固縛するよりもっと確実なのは、外せるものは外してキャビン内に入れてしまえば、先に書いたようなことを心配する必要は無くなります。デッキ上にある物はできるだけ外せば、壊れる心配はありませんし、風の抵抗がそれだけ小さくなるので、船にとっても良いわけです。更に、舫われている艇が風や波で上下左右に大きく揺れます。この時に桟橋に舫われているので、動きは想像を超える動きになることを想定して対策する必要があります。

それでは、部分別に気を付けた方が良い部分を列記します。

バウ側

アンカー

船首にアンカーローラーが付いている艇の場合、アンカーは多くの艇が付けっ放しになっていると思います。これは台風時に非常に危険なので、できればアンカーはアンカーウェルの中に格納するか、アンカーだけ取り外して収納してしまった方が良いと思います。風波の影響で艇が大きくバンビング(大きく上下に振れる)ので、桟橋に近づいてしまった時に当たってしまうと、桟橋が壊れるばかりか、艇も壊れる可能性が出てきます。外して格納するのが最も安全です。

ジブセイル

最近のヨットでジブセイルを完全に外すのはレース艇くらいのもので、殆どのヨットはファーラーでフロントステイに巻かれていると思います。ファーラーはコントロールロープでコックピットまで引き込まれ、セイルを巻き取った状態だとコントロールロープが目一杯引き出された状態でロックされていると思います。コントロールロープはコックピット周辺でフレーキングしてスターンのパルピットやライフラインに吊るしていると思います。巻き取った状態でもセイルの隙間に風が入ると非常に大きな力になり、コントロールロープが切れてセイルが開いてしまいます。できればジブセイルを外せればベストです。外せない場合には、スピンハリヤードを巻き取った状態のジブセイルの上から下まで均等間隔で巻き付け、下側を固縛しておけば、風が入ってセイルが開こうとするのを抑えることができます。この時に、セイルの巻き取りの向きと反対向きにスピンハリヤードを巻き付けることをお忘れなく。勿論、スピンハリヤードのロックも忘れすにしてください。

マスト&ブーム周辺

マスト

マストを縛るわけにはゆきませんが、スタンディングリギンの緩みなどは無いでしょうか? 台風前には一度緩みが無いか確認しておくだけでもかなり違います。緩みがあるとマストが風で揺れてしまい、折れる原因になります。セーリングしている時よりも、係留状態の方がマストに掛かるストレスが大きいのです。何故なら、風が吹いても船が固定されて進めないのですから、セイルが開いてなくても風速が普段のセイリング時の何倍もになるという事は、セイルを開いていなくても開いている時以上にマストには風圧がかかっているという事です。この力を船が進んで逃がしていますが、船が固定されているのでマストには普段の何倍もの力掛かることになります。

メインセイル

メインセイルもジブセイル同様に、完全に外してしまっている艇は非常に少なくなりました。レイジージャックなどでブーム上にセイルを折り畳んでセイルカバーを閉じた状態の艇が殆どだと思います。又は、最近はメインセイルもファーラー式の物も多いです。マストの中に収納するマストファーラータイプだと、セイル全てをマストの中に収納すると、次に出てこなくなるため、セイルの端を少し出していると思います。この端っこだけでも風を受けるとセイルを引き出すには十分な力が台風時には掛かります。つまり、セイルが出ないようにマストにロープを巻いたり、バンドを掛けるなどしてセイルが出てこないようにしておくべきです。できれば、メインセイルのクリュー側のアウトホールを外しておくと更に安心です。
では、レージ―ジャックとセイルカバーでブーム上にメインセイルが折り畳んで乗ったままになっているのはどうすれば良いかと言うと、できれば、セイルもセイルカバーも外せればベストですが、外さない場合には、セイルカバーの上からブームごとロープで固縛するのがベストです。マスト側からブームエンドで、等間隔に風に煽られてもバタつないようキツ目に固縛しましょう。
セイルカバーは、ブームの上とマストにも巻き付ける形でセイルヘッドのカバーがあると思います。ここもロープを巻きつける形でカバーを固縛しましょう。

ブーム

ブームはトッピングリフトで引き上げている場合には、下ろしてしまうのがベストです。ガスシリンダー式またはバネ式などのブームバングが付いている場合には、ブームを降ろすことができないので、この場合にはブームが振り回されないように固縛します。ブームを下ろした場合も、十分に固縛するようにしましょう。

コックピット

ドジャー&オーニング

ハードドジャーは外すことが出来ませんが、ソフトドジャーの場合には外してキャビンに入れましょう。同様にオーニングは本体から取り外してキャビン内に入れましょう。フレームは倒せる場合には倒してしっかり固縛するようにしましょう。
ドジャーとオーニングをつけたままにすると、その分空気抵抗は大きくなります。そうすると船は煽られやすくなるので、外してしまっておくのがベストです。また、折角のドジャーやオーニングが台風で破れたりしては被害がでてしまいます。やはり外すのが一番です。

ラットカバー

風でバタつくと破れの原因になるので、カバーの上からロープを巻いて固縛するのが良いと思います。又は、カバーも外してしまえば、破れる心配はありません。

コックピットテーブル

取り外しができない場合には、コックピットテーブルも固縛しましょう。

スイミングラダー

スターンにスイミングラダーが付いている場合、ラダーもきちんと固縛するようにしましょう。

シート、コントロールロープ類

コックピット上に残ってしまうロープ類は、フレーキングだけでなく風で飛んで解けないようにウインチに巻くなどして固縛しましょう。

その他

コックピット上に置いたり、吊るしたりしているものなどがある場合には、コックピットロッカーやキャビン内に収納しましょう。忘れがちなのが救命浮環など簡単に外して投げれるようにしている場合には、風に飛ばされないように固縛するか、収納してしまいましょう。
ライフスリングを付けている艇が非常に多いですが、カバーの固定に心配がある場合には、外してキャビン等に収納した方が良いです。
また、デッキ上にも置いているものがあれば、全てキャビン内に収納しましょう。

キャビン内

キャビン内は普段のセイリングの時よりも船が上下左右に振られると考えるべきです。キャビン内で物が飛んだり、食器などが割れたりしなように再確認しましょう。

スルーハルバルブ

係留時にはスルーハルバルブを閉めておくのは、ごくごくあたりまえのことですが、係留時の嵐の中でスルーハルバルブが仮に開いていたら、水が上がってきてしまいます。台風の前には、確実に閉まっていることをチェックしましょう。

ハッチ等

ハッチや開閉式のサイドウインドウがキチンと閉まっていないことにより、雨が漏れ出したりすることがあります。普段の雨なら大丈夫でも台風時の大雨や横に吹き付ける雨などできちんと密閉されてないと、思わぬキャビン内への漏水になりますので、キッチリ閉まっているか再確認しましょう。

キャビン内の開閉するものすべて

バースやヘッドのドア、棚、物入などの扉がキチンと閉まっているか確認しましょう。船が大きく振られますので、扉も閉まっていないと破損の原因になります。

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台風対策の舫の取り方

係留している場合には、普段は決まった舫綱(係留ロープ)を決まった位置に掛けるようにしている場合が多いかと思います。しかし、それだけはかなり不安です。それは、強風に煽られて船は動こうとするので、舫綱には普段の何倍もの力が掛かります。そうすると舫綱が伸びるという事を想定しなければなりません。そこで有効な対策が「増し舫」です。
増し舫の一般的な考え方は、今ある舫を二倍にするという事です。(二重掛け)こうするだけで、舫の強度は単純に二倍になります。

船上のクリートには物凄い力が掛かる

船上のクリートには、かなりの力が掛かります。できれば、この力の集中を分散させることも考える必要があります。
クリートの次に強い場所は、マストです。マストの根元から桟橋のクリートに舫を掛けることで、かなりの力を分散させることができます。
更に、ジブシート用のウインチもクリートの代わりになるので、ここから舫を取ることもできます。

舫の長さはある程度長くとれるようにする

船上のクリートから真横の桟橋のクリートに舫を余長無く掛けている様子たまに見かけます。この場合、船が横に振られた場合(つまり、桟橋と逆側へ風によってヒールした場合)、船が桟橋を持ち上げようとしてしまいます。そうすると、船に大きな負担が掛かってしまいます。舫綱はある程度は伸びることで船へのショックを軽減し、触れ回る船へのダメージが少なくなるように考えるべきです。そうすると、舫の長さが長めにとれる引き回しを考える必要があります。
ここでも書いたように、舫綱は伸びます。つまり、それだけ船はバース内で動くという事も考えておく必要があります。その時に櫛型桟橋に係留しているならば、メイン通路となる桟橋にぶつからないように十分に船を後退させておく必要があるということです。

フェンダーをできるだけ付ける

普段ならば片側に数個付けておけば十分ですが、台風時には、船がどんな挙動をするか想像もつきません。その時に持っているフェンダーは全て付けておいても良いと思います。シングルバースなら他の艇と接触することはあまり無いかもしれません。しかし、ダブルバースの場合には隣の艇との接触は充分に考えられます。それもどんな角度で接触するか想像もできませんから、つけれるものがあるなら、できるだけ多く付けておくに越したことはありません。

最後に…(台風対策にやり過ぎはない)

ヨット好きがヨット乗りになっているのですから、台風で自分の係留しているヨットハーバーに台風が直撃しそうだとヨットハーバーに泊りがけで行ったりする人がいるようです。その心配な気持ちはよく解りますが、私はあまりそれには賛成できません。何故なら、台風が来てしまったら荒れる桟橋の上で作業なんて危険で命が危ないからです。桟橋に出てゆくオーナーをヨットハーバーの管理人が「危ないから行かないで下さい」と何人の管理人がヨットオーナーに言って静止できるのでしょうか? また、台風が直撃している中、桟橋に出て行って怪我でもしてしまったら、誰がそれを助けに行くのでしょうか? それを助けに行く人も命がけです。

何が言いたいのかと言うと、船よりも命の方が大切なのです。ですから、台風が直撃する、その直前までが勝負です。ここでどれだけ事前の対策をとっておけるかしかないのです。物凄い風で船が暴れ、引っ張られている中、いくら人の手で引っ張ってみても、自然の力には到底及びません。ですから、事前の準備を十分にしても船が壊れてしまったら、これは諦めるしかないのです。

つまり、できる限りのこと、考えられるすべてのことを、やり過ぎかもしれないと思う程にやっておくしかないのです。あとは、運を天に任せるしかありません。 なにかあって後で後悔するくらいなら、十分に台風対策するようにしましょう。そうすれば、何かあっても諦めもつくのではないでしょうか。

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