始めてヨットに乗せて頂いたとき、そのヨットオーナーから「ライジャケ着けてね」って言われ、ヨットの船内に置いてあったライフジャケットを貸して頂き、生まれて初めてライフジャケットなる物を身につけました。その時、船内にはライフジャケットが三種類置いてあって、黄色っぽい色のベスト式、赤いお坊さんの袈裟のような首掛け式、そして、赤いベルトのような腰巻き式がありました。腰巻式は、その艇の他のクルーの方の私物だそうで、それが一番良さそうだとは思ったのですが、赤い首から掛ける膨張式のものを着けました。そう、当時の僕には膨張式のライジャケがカッコよく見えたんですよ。その後、しばらくして夫婦で自分たちのライジャケを買った時にはベルト式の物にを着けてました。その後、自分たちのヨットを持った時にも、これなら何があっても絶対安全そうな、オフショアレース認定品の外国製膨張式のライフジャケットを買って着けていました。しかし、一昨年(2018年)の3月から、小型船舶のライフジャケット装着の義務化に伴い、着けるライフジャケットは国交省承認品(船検対応品)でないと装着しても違反になるということから、折角持っていた高級ライジャケはお蔵入りとなり、ネットで買ったヘリーハンセンのベスト式(TYPE-D)のライフジャケットを買って着けるようになりました。

それまで、ベスト式のライフジャケットはカッコ悪い、何だかスマートじゃないって敬遠していたんですが、実際に着けてみると…「あれ?ん?これイイなぁ~」って感じで、ホント意外なことに、ベスト型のライフジャケットが気に入ってしまいましたとさ…。

…と言うことで今回は、ベスト型ライフジャケットの思わぬ効能?と題して、書いてみたいと思います。

ベスト型ライフジャケットは何故ダサいのか?

このライフジャケットは、1個2500円という破格の安さのライフジャケットなんですが、これで船検対応、そしてTYPE-Aですから、全ての小型船舶で使用可能なものです。

これ、何がダサいのかと言うと、「色」ですね。

実はライフジャケットは、落水して救助をしてもらうまでの間に海面にいる間に救助者が探し易い目立つ色でないといけないというのがTYPE-Aの基準にあるんですね。その目立つ色と言うのが「黄色またはオレンジ」ってわけです。これ以外の色ではTYPE-Aの認定を受けることができないのです。

膨張型の場合には、落水して膨張した時には、中からこの2色のうちのどちらかの色の浮き具が展開されるわけで、折り畳んで入っているカバーの色は自由ってわけです。

でも、実はお金を出せば、黄色とオレンジでも、ちょっとカッコイイ感じの物はあります。でも、お値段は最初の物の6倍以上です。黄色もちょっとお洒落っぽい黄色で、黒い縁取りがしてあります。

残念ながら、色は黄色かオレンジしかダメなんですが、赤っぽいオレンジから緑っぽい黄色まで、実は範囲があって、デザイン性を考慮した色を使えば、もっとお洒落っぽくすることが出来る筈なんです。つまり、これまでメーカーがデザインを頑張っていなかったんですね。それが答えだと思います。

ベスト型ライフジャケットの型式承認試験基準

ちょっと専門的な話になってしまいますが、どうやったらお洒落っぽいライフジャケットに出来るかということを真剣に考えているライフジャケットメーカーは今のところ殆ど無いと思います。しかし、努力すれば、そこそこお洒落な物は造れるはずです。
桜マーク
そこで気になるのが、どういう基準があるかということなんですが、基本的な考え方は、「環境試験」として、耐久性と耐油性、船という環境に置くので、温度や油類などで変化して使えなくなっているということを避けたいわけです。次に「性能試験」として、浮力、強度、着用、水中性能、外観、反射材、色度、表示とあります。そして、「材料・部品」として、布地、縫い糸、ベルトやテープの破断強度、バックル等の締め具、ファスナー類、金属部品、、気密性、老化、耐圧などの項目があります。

小型船舶用救命胴衣(膨張式及び呼気併用式以外のもの)の型式承認検査基準

しかし、これらの試験項目、従来メーカーなら既にこれをパス出来るものを作っているわけですから、単純な話、もうちょっとカッコイイ色合いに代えるだけもかなり見た目は違うと思うんですよね。材料メーカーに、この生地の色違い、このベルトの色違い、って言うだけの事だと思うんですよね…。
全く難しい話じゃないと思います。
そして、色については…
マンセル色相環
「JIS Z 8721 (三属性による色の表示方法)による色の 7.5RP~2.5GY に相当するもので、明度/彩度が次の範囲のものを標準とする。」とあるように、結構な振れ幅があるんですよ。これに明度が加わるんですが、それは置いといたとしても、赤紫から黄緑っぽい色まで、実はダサい色使いをわざわざしなくても、視認性が良くてお洒落っぽい色相にできるんですよね。
今どきの人気アウトドア用品メーカーさんなら、カッコよく見えるカラーコーディネートしてもらえると思うんですけどね…。

“TYPE-A”で無ければ色柄に制限は無い”TYPE-D”

僕たちヨットマンとしては、制限なく使える”TYPE-A”が良いように思います。まあ、面倒なことが一切ないという意味でも、”TYPE-A”を選ぶ人は多いと思います。
しかし、それは面倒なことが無いというワードで縛られてしまっていて、実際にはどうなのよって部分があります。

多くのヨットオーナーさんにお聞きしたい、あなたの船の航行区域はなんですか?

おそらく、殆どのヨットが「限定沿海」ではないでしょうか?
船舶検査証書の航行区域又は従業制限という項目に「沿海区域」とあって、「ただし、」と書かれていたら、それは「限定沿海」ということです。

この「限定沿海」って何のためにあるのかと言うと、全速力で片道1時間で岸に行き着くことが出来るんだったら、5海里超えても大丈夫だよっていう特例で、島や半島などで囲まれているエリアなら、5海里超えても向こう側の岸に1時間以内で行けるんだったら、それ行っても大丈夫ですってことなのです。(実際には母港をベースにして厳密に区域は定められているので、自分の船が何処までの航行できるかはここで確認してみてください。

この限定沿海区域内なら、ライフジャケットは必ずしも”TYPE-A”である必要は無いので、”TYPE-D”という設定があるわけです。そうすると、こんなにマリンっぽいお洒落なライフジャケットも着用することが出来ます。どれも、国交省承認品です。

ベスト型ライフジャケットを着て気付いたこと

さて、ちょっと遠回りしてしまいましたが、ここからが今回のテーマの本題です。
あまりにダサいと言ってしまった従来品のベスト型ライフジャケットですが、実はこれもいいところあるんです。

いいところ、その1:とっても軽い

これ、身につけるものとしては、とても嬉しいことです。膨張式をずっと使っていた人なら、その違いが直ぐにわかります。膨張式って実はちょっと重たいです。それは、ガスで浮力体を膨張させるため、小さなガスシリンダーと、それに使う機械がライフジャケットに仕込まれています。これが小さいけれど、何気に気になる重さです。そして、浮力体は平常時には折りたたまれているのですが、何気に嵩張る。もう、ペラペラって物をたまに見かけますが、今度は膨張させたときにホントに大丈夫なのか心配になるような圧縮度の古い膨張式ライジャケは、いざという時に本当に浮いてくれるのか?ちょっと心配で怖いです。

いいところ、その2:もたれても痛くない

セーリングクルーザーって、ヨット上に長時間乗っているわけですが、セーリング中ってコックピットで踏ん張ったり、ロープ類を引いたり出したり、ウインチ回したり、まあ結構疲れるわけです。そんな時に何処かにもたれ掛って休憩したいわけですが、ヨットのコックピット周辺は痛いところだらけで、クッションが欲しいって思ってしまいます。しか~し、ベスト型のライフジャケットを着ていると、クッションを体に巻いているようなものですから、何処にもたれ掛っても痛くな~い!
これは、正直、目からうろこ…でした。

ライフジャケット

いいところ、その3:とっても安全

デッキ上が濡れて滑ったり、足を引っかけて、転んじゃったりすることがあります。でも、先にも言ったように、体にクッションを巻いているようなものですから、不慮の転倒で怪我を防いでくれたりします。体バージョンのヘルメットのようなものです。落水時だけでなく、船上でも安全具としての役目を果たしてくれます。

いいところ、その4:そのまま海に飛び込める

夏場はライジャケを浮き輪代わりに海へドボン! 楽に海に浮いて水遊びできます。
勿論、落水した時に、どんな感じになるのか気軽に試すこともできるというわけです。

いいところ、その5:気兼ねなく洗える

膨張型のライジャケは、水でじゃぶじゃぶ洗うってことが気軽にできません。それに比べて、ベスト型はいつでも気兼ねなくホースの水でじゃぶじゃぶ洗うことができます。勿論、ライジャケ着たままで水浴びだって気兼ねなくできます。

いいところ。その6:動作不良なし

ベスト自体が浮力体のベスト型は、正しく着てさえいれば動作不良は皆無です。落水してとっさに操作しなければならななんてことなく、浮力を得ることができないということも絶対にありません。更に、メンテナンスも特に不要です。安心は何事にも換え難いですね。

最後に… セーリング中の肩凝りが無くなった

どうでしたか? 少しはベスト型のライジャケ、見直してもらえましたか?
実は、僕たち夫婦も法改正するまでは、膨張型のライジャケしか使ったことありませんでした。でも、膨張型を使っていた頃は、ベルト型だと何だか腰のあたりがゴロゴロするとか、袈裟型だと胸の辺りに違和感が的な、ガスシリンダーや機械があたって違和感があったり、セーリングで肩凝りするなんてこともありました。
ライジャケをベスト型に変えて最初に感じたのは、軽くて肩凝りしないってことでした。確かに見た目はゴツイ感じがするのですが、見た目のゴツさに反して物凄く軽いのです。コックピットからバウまで行くのにも、何だか体が軽くなったような感じで、全く気になりません。そして、フィット感もあるので体の一部のようです。僕は物凄く暑がりなんですが、夏場は上半身はライジャケだけです。暑くなったら、そのまま水を掛けちゃったりして、セーリングが終わったら、ホースで水洗いして干しておくだけで、割と清潔に使えます。これいいなぁ~です。

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前から積んであった船検対応のダサいライジャケも、実際に使ってみると割といい、そして驚いたのが、最近はその値段が物凄く安くなってるので、ちょっと汚れてきたら気軽に使い捨てにできるなって思ったりしています。
今は、ヘリーハンセンの”TYPE-D”を使ってますが、船検対応用のオレンジ色の”TYPE-A”がいっぱい積んであるので、スペアはこれでいいなって思ったりもしています。

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“ヨットのベスト型ライフジャケットの思わぬ効能?” への1件のコメント

  1. 私もベスト型ライジャケの方が好みです。一番の理由は保温になり一石二鳥だからです。冬はもちろん、夏でも風が吹いて冷えるときベスト型は胴体に一枚着ていることになります。座布団代わりにもなります。ダサいのが気になりますが、オシャレなのもあるんですね(6倍だすかは考えてしまいますが)。

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