僕たち夫婦がまだまだヨット初心者の頃のこと、気持ちよく風上に向けてクローズホールドでセーリングしていると、他の船を避けたり、岸に近づいて行ったりと、進路を変える必要が出てきます。そこで、クローズホールドでセーリングを続けるならタックするわけですが、今ではタックなんて別に大したことではないのですが、当時の僕たちはウインチに巻いてあるジブシートを解くだけでも一苦労、当然逆側のタックのジブシートをタイミングよくスムーズに引き込むことも上手くできません。
スキッパーはヨットの舵を切り、艇の向きが変わってゆくのにジブシートをタイミングよく解くことができないと、ジブセイルの裏側に風が入ってしまい低速が一気に落ちてしまいます。そんな時、スキッパーが「あーぁ、ヒーブツーだ…」なんて感じで言うのですが、ヒーブツーの意味を知らない初心者時代の僕たちにとって、その言葉の語感からあまりよくない出来事を指す言葉のように思っていました。
しかし、ヒーブツーは別に悪い意味を指す言葉ではなく、海上で艇を安定して停止させることだという事を知ったのは、ヨットの事に興味を持ち始め、いろいろなヨット本を読み漁るようになってからのことでした。
そこで、今回は「ヒーブ ツー (Heave to)」について書いてみたいと思います。
Contents
「ヒーブ ツー」とは
風のある海上で帆を下ろすことなくヨットを安定させて停止させるテクニックのことを「ヒーブ ツー (Heave to)」と言います。
日本語では、踟躊 ( ちちゅう )と言います。
「ヒーブツー」の必要な場面
ヒーブツーは、 風が吹き水深が深くてアンカーを打つことが出来ない場所 で艇をを停止させたい場合や荒天帆走時に艇を安定させて止めたい時に用います。
上の絵は、「ヒーブツー」している状態の絵です。波が横筋に描かれ、波に並行に艇が止まっています。風は波の筋から見ると、スターボード(右舷)側からの斜め前方60度からアビーム(真横近く)で吹いているというような様子の絵です。セイルはできるだけリーフ(縮帆)した状態で、フォアセイルはストームジブ、メインはトライスルか2ポイントリーフってところでしょうか。舵はティラーが右一杯に切られています。
風のある海上で艇を止めるというニーズ
ヒーブツーをするという事は、シングルハンド時にトイレに行きたい時、食事をしたい時、クルージング中に休憩したい時、トラブルで艇の修理を海上でしなければならなくなったときなど、風や波がある状態で艇を安定させて止めたい時に使うテクニックです。
主にヒーブツーは荒天帆走時(海が荒れている状態でのセーリング時)に用いられるテクニックです。荒天時のセーリングで疲れてしまい休息をとりたい時や艇に不具合が発生した時にヒーブツーで艇を止めることで、波や風で艇が上下に煽られたり(ピッチング)、左右に揺られたり(ローリング)することなく、安定し静かに海上に止まることができるので、料理をしたり、トイレに行ったり、修理作業を静かな状態で行ったりすることができるようになります。
また、濃霧や豪雨時の視界不良時や、入ったことの無い港に夜になってしまったために沖合で朝まで待つ場合などのその場に止まるときに役立つテクニックです。
「ヒーブ ツー」の方法
冒頭のエピソードでも書きましたが、ヒーブツーの状態をつくるのは非常に簡単で、クローズホールドの状態から更にタックを変えた状態の時にヒーブツーとなります。
ヒーブツーは、フォアセイルとメインセイルで生み出される力が相殺しあうことと、風とバラストキールによる力で海上でも艇を安定させることができます。
ヒーブツー状態にする方法を4つのステップに分けて以下に説明します。
Step-1:クローズホールド状態
Step-2:タック開始
絵ではポートタックでのクローズホールドからスターボードタックへ回頭していますが、通常のタック時にはジブシートをフリーにして反対側のジブシートを引き込みますが、ヒーブツーではジブシートはそのままにして触りません。
Step-3:ジブセイルに裏風を入れる
艇ごとの特性により若干挙動が異なりますが、艇が後退しながら風に対して立とうとして再びタックしてしまわないように、舵で艇の向きを若干風下向きに落とします。絵では舵を直進から右に切ることで再びタックするのを防ぎます。また、舵を右に切ることで艇が停止します。
Step-4:ヒーブツー状態
これでヒーブツーの状態です。
ジブセイルは風に押され、メインセイルは風に上ろうとするので、力が相殺されます。また、また、ラダーは艇が押し下げられる力を抑えています。風に押されることで若干ヒール状態になり、艇のロールを防ぎ安定させています。
ヒーブツーへの一連の動作
ヒーブツーへのコントロールの様子がよくわかる動画がありましたので、ご紹介しておきます。
また、この動画ではヒーブツー状態からセーリング(帆走)に復帰する手順も入っています。
ヒーブツーの注意点
➀ ヒーブツーは風に対して斜め横向きからほぼ横向きの状態になるので、波が崩れる程の高さになる場合には適していません。
➁ ヒーブツーをするときには、できるだけ風に対して最もセイルが小さい状態でヒーブツーします。風の強さが強くなるほど、セイルエリアを小さくします。
➂ 停止すると言っても、若干風に押さるような形で移動しますので、ヒーブツーする時には周囲に十分なエリアがあることを確認しましょう。
➃完全なヒーブツー状態を保つには、セイルを微調整してください。また、セイルエリアが広いとヒールが大きくなるので、できるだけリーフ(縮帆)するようにしましょう。
最後に…(必要になる前に練習しておこう)
ヒーブツーが必要になることは、そう頻繁にはありません。しかし、自分の艇の特性によりヒーブツーを完成させるための調整ポイントは若干異なってきます。また、ヒーブツーはマンオーバーボード(落水)発生時にもとても有効です。できるだけ早くヒーブツーすることで、落水者から一気に離れてゆくことを防ぐこともできますので、手順を知っておくだけでセイルを下ろすことなく素早くスピードダウンすることができ。是非マスターしておくと良いテクニックですので、必要になる前に練習しておきましょう。
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はじめまして、ランキングから来ました!
ヨットのことなんて、全く知らないのに、
コメントしてすみません。
風があるのに、停止できるんですね。
いろんなテクニックがあるんでしょうね。
広い海で思い通りに操れたら気持ちいいでしょうね!
また読ませてもらいます!