ヨットのトイレのイメージは?と言うと、汚れていて、臭くて、セーリング中にトイレに入ると必ずと言ってよいほど船酔いしてしまう… とヨットの中で一番イメージが悪い場所にあげられます。確かに、僕もいろんなヨットに乗りましたが、そのヨットのトイレが綺麗かどうかには関係なく、できるだけヨットのトイレは使いたくないって思っていました。しかし、海に出ていてどうしようもない時は必ずあります。そんな時に、少しでも気持ちよく使えるようにしたいと思えば、日頃からマメにトイレを清潔な状態に保っておく必要があります。
これは結構大切なことで、特に女性がヨットに乗った時、トイレに行って船酔いが始まるというケースが多いのです。そして、ヨットに奥さんや家族が乗らなくなってゆく理由もトイレにあると言っても過言ではありません。流行りの店や流行りの商業施設なども、流行る理由の一端にトイレの清潔さが挙げられるほどですから、やはりヨットのトイレも清潔で快適であることは大切なことだと言えます。
そこで今回は、ヨットのトイレをに匂わないように正しく使う方法について、お話してみたいと思います。
ヨットのトイレはエマージェンシー用
ちょっと言い過ぎかもしれませんが、ヨットのトイレは船上でどうしてもトイレをしたい時に使うものであって、港に居る時やヨットハーバーのバースに係留している時には、ヨットのトイレは基本的に使いません。それは、日本のヨットの多くが、直接海に排出するタイプのトイレしかヨットに設備していないからです。欧米のヨットには、必ずホールディングタンクがあって、停泊や係留中でもヨットの中のトイレを使うことができ、沖に出た時にホールディングタンクの中に溜まったものを放出するわけです。(ホールディングタンクについては、「ヨットを家にとして住むときの問題点」で説明していますので、そちらをご参照ください。)
つまり、多くのヨットが付けているトイレは、海上でどうしてもトイレに行きたくなった時に使うエマージェンシー用というわけです。
ヨットの個室型タイプのトイレが問題
ヨットのトイレと言っても、家のトイレのように個室になっているものだけではありません。小型のセーリングクルーザーの場合には個室をとるスペースが無いことから、多くの小型ヨットはバウバースなどに便器が付いています。まさに、こういうスタイルのトイレはエマージェンシー用と言えます。しかし、こういう露出型トイレの場合には、キャビンと一体になっているので、綺麗に掃除され、匂わないように十分なメンテナンスされています。しかし、個室型になった途端にそうではなくなってしまう傾向にあります。
ヨットのトイレが匂う二大要因
家のトイレはそんなに匂わないのに、ヨットのトイレは何故匂うんだろう?と思う人はトイレ掃除をしたことが無い人だと言えます。また、家のトイレの匂いが気にならない人は、ヨットのトイレもかなり匂う傾向にあります。しかし、ヨットを滞在型利用しているオーナーのトイレは匂わないように十分に対策されています。対策と言っても、マメな掃除と幾つかの工夫です。トイレが匂う原因は主に2つです。この2つを改善するだけで、トイレの匂いはかなり抑えられます。
男性の立位でする小用
トイレの匂いの原因の最も大きな理由は、これです。そもそもヨットのトイレの便器は家のものより一回り以上小さく、底も浅いです。そうすると、たとえ便器のど真ん中に入ったとしても、トイレの周囲に飛び跳ねて飛沫し、それが悪臭を放つ要因になります。
これについては、トイレ掃除用洗剤などのメーカーであるライオン株式会社が、「知らなきゃ良かった トイレの秘密シリーズ」というプレスリリースで詳しく説明しています。是非、ご一読してみてください。
トイレの尿ハネ実態と男性の小用スタイルの関係 トイレにまつわる驚愕の真実を一挙公開! 知らなきゃ良かった トイレの秘密シリーズ 総集編
つまり、ヨット内のトイレでも同じことが言えるわけです。つまり、ヨット内のトイレでは、家のトイレ以上に気をつけて小用するようにすることです。
便器を洗い流した海水が腐る
家のトイレでは水道水が接続されていて、トイレをした時には水道水を流しているわけですが、ヨットのトイレは海水を取り込んでトイレを流す水としています。用をたして流す水は海水で充分に便器を洗浄すれば良いですが、家のトイレのように便器内に溜め水をする必要はヨットのトイレの場合には必要ありません。この溜め水した海水には細菌の栄養素となるものが多く含まれているので、細菌が増殖し、更に暫く使わないと溜め水が腐ってきます。勿論、便器の表面についた海水も匂いを発するようになるのです。頻繁にヨットのトイレを使えば、そういうことはある程度は回避できますが、たまにしか使わないヨットのトイレでは、この海水の溜め水が匂いの原因となってしまいます。
匂わないヨットのトイレにする対策
ヨットのトイレを匂わなくするには、先ずは匂う二大要因を根絶することです。つまり、男性も便器に座って用をたすことです。それでなくても航行中のヨットのトイレの中は不安定ですから、飛沫どころか便器の外に溢してしまうこともあります。ですから、必ず座って用をたすことです。また、その時にも便器内の水洗できない部分に飛沫させないように十分に気を付けて用をたすことです。普段のトイレではそんなこと気にしたことないかもしれませんが、気を付けるしかありません。
次に、便器の溜め水は海水にしないことです。これについては、ヨットのトイレの構造と共に、使い方についてもご説明したいと思います。
ヨットのトイレの匂わない使い方
マリントイレは図のような構造になっています。基本的には、水洗トイレの水は海水を取り込んで流すようになっています。ヨットのトイレは水面より低い高さに設置されいることから、バルブからの水の逆流を防ぐために給排水の両方にアンチサイフォンバルブが水面よりもかなり高い位置に付いています。仮にバルブを閉め忘れて、そのまま航行してもこれでヒールしたときにも水の逆流を防ぐようになっています。
※トイレを使用しない時には、必ずバルブを閉めるようにしましょう。
マリントイレを家のトイレと同じように使用していると、匂う原因となるため、マリントイレを使う時にはちょっと家のトイレではしないような作業が増えます。
トイレを使い始めるとき
マリントイレの便器の中には最低限の溜め水がしか使用前には入っていません。理由は大きくヒールしたときに溜め水がこぼれてしまう可能性があるからです。ですから、トイレを使い始める前に海水を汲み入れて、便器内の溜め水の量を増やしてから使い始めるようにします。こうすることによって、便器へのこびりつきの防止にもなり、スムーズに排出することもできます。
トイレにトイレットペーパーは流さない
マリントイレの排水管の太さは、家用のトイレの排水管の半分の太さもありません。ですから、家と同じようにトイレットペーパーを流してしまうと詰まりの原因になります。水に溶けやすいマリントイレ用のトイレットペーパーもありますが、家用のトイレットペーパーを使っている場合には別に捨てるようにします。
トイレを詰まらせて溢れさせてしまうと、掃除を完全にしないと悪臭が出ます。
トイレを流すとき
トイレを流す時には、トイレの水が綺麗になるまで何度も流します。この時に、排水する水はアンチサイフォンバルブを越えてやっと下に落ちて排水バルブから船外に排出されますので、便器の中が綺麗になっても排水管の中には残っていて、流す量が少ないと、アンチサイフォンバルブより手前にあるときには逆流して戻ってきます。ですから、何度も完全に流れきるまで、給水と排出を繰り返し行います。
船が走っている時には、アンチサイフォンバルブを越えると、引っ張られるように出て行きます。
便器の内部が綺麗になって、完全に便器の中の水が流れきったら切り換えレバーを給水側に倒し、少しだけ海水を入れます。
その後、給排水両方のバルブを閉じます。
ヨットから降りる前に
毎日ヨットに住んでいるように使っている時には、特に必要ありませんが、ヨットから降りる際(数日はヨットに乗らなくなる際)には、便器の中にある海水を完全に排出します。その後、清水タンクの水を便器を洗うように回し入れます。トイレにシャワーヘッドがある場合には、シャワーヘッドを使い、無い場合にはペットボトルに汲んだ水を便器を洗い流すように入れて、完全に排水します。この動作を数回行い、トイレ便器の洗浄を行います。(この作業を毎回行うようになると、排水管の中も綺麗になってきますので、完全に水を抜いても匂わなくなります。)最後に便器に排水口分の水道水を入れます。
水道水にはカルキが入っていますので、ある程度の期間は腐ることがありません。
マメにトイレ掃除する
便器の中から出る悪臭対策は、以上の手順でかなり防ぐことができます。
あとは、トイレを使用したら、マメに掃除することです。キャビン内のような環境を保つためには、マメに便器の外も掃除することで匂いを防ぐことが出来ます。また、脱臭剤は必ず設置しておくようにしましょう。(匂いのある消臭剤は、ヨットのトイレには逆効果になるので、使わないようにしましょう。)
トイレの窓はマメに開ける
トイレのポートライトやスカイライトハッチは大抵の場合には開閉式になっていますので、ヨットに乗ったらマメに換気のために開けるようにしましょう。特に、トイレを使い終わった時などは、換気を短時間でもすると効果的です。
最後に… 結論はマメな掃除が匂いを防ぐ
家やお店などでも同じことですが、マメな清掃が行き届いたトイレは、部屋のように匂いも無く綺麗です。結局のところ、マメなトイレ掃除が匂いを防ぐわけです。しかし、家と同じような使い方では、ヨット特有の盲点もありますので、そこのところを十分理解した上で使用すれば、清潔で快適なトイレ環境を保つことができます。是非、チャレンジしてみてください。
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