ヨットを始めて十数年、最初はヨットのことなど全く知らないまま、興味本位で誘われるがまま、生まれて初めてヨットという乗り物に乗ってみたのですが、その最初のヨットに乗った時から今まで、トラベラーはヨットに欠かせない物だと僕は思い続けてきました。最初は使い方や動かす理由など全く知らないまま、トラベラーを右に左にと言われ言われるがままに動かしてました。だから、僕にとってヨットのトラベラーはセーリングで必ず使う物というのがあたりまえになっていて、今も無意識のうちにトラベラーを動かしセーリングしてます。

しかし、最近になって気付いたと言うか知ったのが、トラベラーがそもそも無いヨットがあることやトラベラーがあっても全く使っていないヨット乗りがいること。なるほど、考えてみればトラベラーが無くても、積極的に使わなくても、ヨットを走らせる事は出来るわけです。でも、僕がトラベラーを使っているのは、使うのがあたりまえだと思っているからということ、そして、僕の船のトラベラーの位置が大きく影響しているようです。本来のトラベラーの機能ではないけれど、メインセイルを下ろし、係留している時にキャビンの出入りにメインシートが邪魔になるのでトラベラーを使ってメインシートの位置を動かさないと邪魔なんです。言い換えればトラベラーを使ってどうしても動かさないといけないということもあってトラベラーを動かさざるを得ない状況だから、あたりまえにトラベラーを使うようになったとも言えます。まあ、そんな理由はどうでもよいことなのですが、今回はあまり使われていないらしいトラベラーについて諸々書いてみたいと思います。

トラベラーとは?

トラベラー(traveller) は、正式名称はメインシートトラベラーと言います。ブームを左右に移動させて角度を細かく調整するための装置です。
トラベラーは、船に対して横向けに設置されたレールとレールの上をスライドするカー、そしてカムクリートにより構成されており、ブームとカーをメインシートでつなぎ、カーはその左右から出ているコントロールロープを引いてブームを左右に移動させるようになっています。

トラベラーを使う作業上のメリット

トラベラーが無くてもブームに直接コントロールロープを付けて引っ張ればブームを左右に動かすことはできます。ブームには既にメインシートが付いていますので、メインシートをブームを中心に左右に引き出すことでブームの角度を変えることができるようにしているトラベラーを持たないセーリングクルーザーも最近では多くなりました。この形ではブームの左右の振れはメインシートでコントロールしますが、上下の振れは常にバングで調整することになります。この時、メインシートを引いてブームの左右の振れ角度を変えるためにはメインシートにかなり大きな力が掛かっているため、メインシートをウインチで巻き上げるという作業が必要となります。しかし、トラベラーがあればトラベラーを動かすだけで素早く、且つ細かくブームを動かす(調整する)ことができるようになるのがトラベラーのメリットです。

どんな時にトラベラーを使うのか

トラベラーを使うシーンは大雑把には2つあります。
軽風時:トラベラーを風上側に引き上げ、ブームをセンターに近づけて推進力を確保する。
強風時:トラベラーを風下側に下げ、ブームを風下に逃がしヒールを抑える。

舵社発行のヨット百科には、トラベラーの項目に以下のように記述されています。
“メインシートトラベラーとメインシートを併用することで、シーティングアングルとツイスト量を自在にコントロールすることができる。メインシートはそのままに、メインシートトラベラーを風下に落とせば、ツイスト量を変えずにシーティングアングルを保ったまま、ツイスト量だけを変化させることも可能だ。”
と言うように書かれています。
これを読んでもツイストやシーティングアングルなどの語句、セールトリムについて深く理解していないとトラベラーの利用方法がわからないですが、トラベラーの基本は風を力にしたり、風の力を抜いたり素早くできることにあります。

最後に… トラベラー雑学

トラベラーですが、小型のセーリングクルーザーやレースなどは意識せずにゆったりクルージングを楽しむ向きのクルーザーにはトラベラーがありません。小型とは20フィート台の小さなクルーザーですが、そもそもレールを取り付けるスペースが無かったり、トラベラーを付けることで使い勝手が悪くなったりする事を嫌がって付いていない船があります。逆に小さくても競技用の470級などはトラベラーが付いています。大型の方は、そこまで細かくセールトリムしない、大雑把に簡単に乗りたいという指向のクルーザーはトラベラーを付けない傾向にあります。最近はシブのサイドカーもない、オートタックだとか、とにかくイージーセーリングを目指した船にはトラベラーがありません。逆にバリバリのレース艇は必ず艤装されていると言う具合です。

このトラベラーの語源は、「移動する」とか「動く」と言う意味のトラベルからそのまま来ている言葉で、昔の帆船には現代のトラベラーのような金属レールに動くカーが付いた艤装は未だありませんでしたが、ロープを張ったところにブロックを走らせるような艤装方法が初期のトラベラーだったようです。このブロックが移動する(動く)事から、トラベラーと呼ばれるようになったそうです。

また、トラベラーを使うメリットとしては、軽風時と強風時の2つを書きましたが、欧米の教本などでは、シブとメインセイルをの間の空気の流れを良くすること(ジブとメインの間隔が充分に離れている事)が、風の力を最大に利用できるという考えもあり、トラベラーを使ってブームを引き込む事で風の流れを適正化できると言う効果もあるようです。

ヨットは風を掴んで船を走らせる遊びですから、風の掴み方や流し方をセイルをコントロールして適切に調整する事で気持ちよく船を走らせるという事ですから、それを簡単に調節するための艤装のひとつがトラベラーだと言う事です。

我がMALU号の場合には、キャビンへの出入口(スライドハッチ)の前にメインシートとトラベラーがあるので、メインシートが真ん中にあると出入りの邪魔です。なので係留している時などはトラベラーを使ってブームを右いっぱいに振っています。キャビンから上がってコックピットに立った時にブームに頭をぶつけることも防げるので、トラベラーを使ってブームを移動させてると言うわけです。

まあ、折角付いている物ですから、遊び道具として動かしてみて楽しむと言うのがヨットの楽しみ方とも言えますね。

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