ヨットを見て回った時にエンジンや設備関係のチェックは素人の僕には難しいから、プロに意見を仰ぐしかないなと考えていました。しかし、ヨットのオーナーになればセーリングに出て何らかのトラブルが起きれば船長として自分で全て対処しなくてはならないのに、購入の段階で人任せではダメだなって気付いたのです。クルー根性が染みついたというか、船長としての責任を感じたことが無かった自分にとって、自分の船を持つ心構えができていなかったという事です。そこで、見に行った業者の方に、エンジンや設備関係のチェックはどんなふうにすれば良いのかを聞くようになりました。また、ヨットを持ってからもメンテナンスなどがある度に、来て頂いたメカニックの方に質問したり、作業の様子を観察したり、という事で、結構いろいろと知識がつきました。

さて、今回は前回に続き、中古ヨットを見に行ったら必ず確認すべきポイントの「エンジン」についてお話をしたいと思います。尚、ここではセーリングクルーザーに多い船内機のディーゼルエンジンについてお話します。

ヨットのエンジンの稼働時間は短い

ヨットのエンジンの多くは出入港時や風の無い時の機走時にしか使われないため、オーナーの使い方にもよりますが概してエンジンの使用時間はボートに比べてとても少ない傾向にあります。アワーメーター(時間計)が付いているエンジンの場合には先ずは稼働時間を確認してみてください。新艇時から10年や15年が経過していても、大抵のヨットの場合には3000時間(125日)を超えていることは稀です。数千時間と言うと驚かれる方が多いですが、自動車のエンジンに比べればヨットのエンジンの稼働時間は物凄く少ないのです。必ず暖機を充分にしてから出港する、オイルチェックやメンテナンスをこまめにしていれば、本来そんなに壊れるものではありません。

最初にエンジンを見るポイント

最初にエンジンを見るポイントは、見た目の第一印象が美人であるかどうかです。美人なんて擬人化した言い方ですが、見た目に美しいエンジンはオーナーさんが十分にメンテナンスを施して大切にされている証拠です。おそらく大きな問題を抱えていると言うような心配はまず無いと思われます。
しかし、見た目だけで中身に問題があるエンジンが無いわけでは無いので、ここは慎重に確認を進めたいところです。

エンジンルームを開ける

エンジンは船内にありますので、まずはエンジンの位置を確認し始動前にエンジンルームを開けて内部の状況を確認します。
エンジン本体に極端な汚れや錆、オイルや冷却水、燃料等の漏れが無いかを確認してください。その場で液漏れが確認できなくても、普段から漏れているエンジンの場合には、漏れ出た跡が残っていたりします。また、エンジンの周囲全てを見るようにしてください。

エンジンのペイント剥がれは問題のシグナル

エンジンは全体をペイントしてあります。ヤンマーならシルバー、ボルボなら緑、いすゞだとブルーなどなど、このペイントしてある理由は、何かの漏れがあるとペイントが剥がれたり落ちてくるのです。ペイントの剥がれなどが出ている場合には、そこに何かが漏れ出してペイントが反応している証拠ですので、よく見るようにしましょう。

エンジン下の漏れは問題あり

エンジンの下にオイル溜まりや冷却水、ビルジなどが溜まっていないか確認してください。
エンジンの周囲や下が見にくい場合には、スマホを動画モードにして手を突っ込んで撮影して、その場で再生すれば見ることができます。できれば小さな懐中電も持参すると確認し易いと思います。
この段階で漏れや液だまりが確認できた場合には、エンジンの何処かから漏れているという事です。ビルジが多い場合には、海水を取り込んでいる冷却水ポンプやホースの劣化が考えられます。オイルが多い場合には、エンジン本体のシールが劣化、燃料臭がする場合には燃料ラインからのリークの可能性が高いです。ここで最も大きな問題となるのは、オイル漏れです。オイルシールを修理するにはエンジンを分解する必要があります。冷却系や燃料系はエンジンの外側に付いているので割と簡単に安価で修理ができます。
また、ビルジを汲んでみて色などを確認してみてください。燃料漏れの場合にはビルジの表面に軽油が浮いているのが確認できる筈ですのですぐにわかります。
また、燃料漏れの場合にはエンジンルームを開けたら直ぐに燃料臭がすることでも燃料漏れの判断ができます。

ホースや配線類の劣化が無いか確認する

エンジンの周囲にはホース類や配線がありますが、劣化や亀裂が無いか確認します。また、配線がぶらぶらしていて、エンジンン何処にも刺さっていないものがあれば、オーナーや業者に確認してみてください。漏電する可能性があります。

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出港前点検と同じようにチェックをする

オイルが入っているか?クーラントの量はどうか?冷却水フィルターに詰まりは無いかなどですが、ここでは始動前の状態でエンジン内部の状態を推測するために見ますので、ちょっと見方が異なります。

オイルを確認する

オイルレベルゲージを抜いて先端に付いているオイルを拭き取り、再度レベルゲージを差し込んで抜き出し、オイルの量や色、実際に指にオイルをつけてみて指で伸ばしてみてください。オイルに金属粉などのスラッジが多い場合にはざらざらした感触があると思います。オイル中にスラッジが多い場合には、かなりエンジンが消耗している可能性があります。また、オイルレベルが少ない場合には、オイル上がりやオイル下がりが起きている可能性があります。始動後に排気を見ればはっきりします。

クーラントを確認する

クーラントは量と色をキャップを開けて確認してください。クーラントはリザーブタンクの量だけで判断せずにエンジン本体上にあるキャップを外してキャップの直下までクーラントがあるかチェックします。本来はリザーブタンクへ戻ったり吸い込まれたりしますので、キャップの直下までクーラントはある筈です。また、色を確認してください。クーラントは青系(緑色など)または赤系のクーラントが一般的ですが、茶色に濁っている場合には、錆が浮いている可能性があります。
エンジン下にビルジが多い場合には、冷却水漏れの可能性があります。また、オイルが混入している場合には、オイル漏れ、燃料の匂いがきつい場合には燃料漏れが疑われます。

海水フィルターを確認する

海水フィルターの蓋をあければザルのようなフィルターが入っていますので、中の汚れ具合を確認します。ここに小魚や稚貝を飼っていたなんてこともあったりします。ちょっと笑えませんが…。

タイミングベルトの確認

タイミングベルトはカバーされているエンジンも最近は少なくありませんが、ベルトに破損や亀裂が無いかの確認は一応しておいた方が良いです。問題があっても、消耗部品ですから交換は容易です。

ドライブ関係

セイルドライブ(エンジンのすぐ下にスクリューがギアボックスを通じてあるタイプ)の場合には、エンジン下のドライブ開口部のシールから水漏れ(海水)が無いか確認してください。ドライブ開口部からの水漏れの場合には、陸上げしてエンジンからドライブを外してセイルドライブを動かしてシールの交換をする大工事になります。
ドライブシャフトが後方に伸びていてスクリューが付いているタイプの場合にはスタンチューブからの水漏れが無いか確認してください。スタンチューブからの水漏れは、スタンチューブの増し締めまたは交換で解消できます。

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エンジン始動する

エンジンは必ず始動させてみてください。この時、最初の始動はオーナーさんか立会人(業者)の人にやってもらって貰うようにしてください。理由は、独特な始動方法があるかもしれないことと、長期間エンジンを掛けていない場合には掛かり辛いのでやってもらうのが一番です。尚、独特の始動方法をとっている場合、何故そのような方法をとっているのかを必ず質問してみてください。
暖機が済んだ頃合いを見て、一度エンジンを止めて、再度始動してみてください。スムーズに掛かれば問題ありません。

エンジンが始動したら、排気管から排気と共に水が勢いよく出てきます。この水はエンジンを冷却するために海水を吸い上げているものが排気と一緒に排出されています。勢いよく出ていれば問題ありませんが、出ている水量がちょろちょろと少ない時には冷却系に何か問題があります。

スロットルレバー

エンジンが始動していない状態で、スロットルレバーを動かしてみてください。ニュートラルの状態から前進方向に倒し、そこから更に全速状態までスムーズに動くか確認してみてください。後進も同様です。ここで動きが悪いと、リモートワイヤーに問題があるかエンジンのスロットルに問題がある場合があります。スロットルはエンジンが温まっていないときと、温まった時で動きが変わる場合がありますので、両方を確認してみてください。尚、エンジン稼働時に全速力までスロットルを倒すとオーバーリミット状態になる可能性がありますので、暖機が完了して一旦エンジンを止めてからスロットルの動きを確認してみてください。

暖機完了後の状態確認

暖機が完了した段階での排気の色を確認してください。アイドリング状態で白煙や黒煙が出ている場合には、エンジンに大きな問題を抱えています。また、エンジンの音のリズムが一定でない、エンジンの振動が極端に大きいなどの場合には、複数気筒あるうちのどれかが正常に働いていない場合がありオーバーホールが必要となる可能性が大きいです。

機走の状態確認

機走し始めたら、先ずは排気の色を確認してみてください。3000回転くらいまでの間で色の付いた煙が出ない場合には問題ないと考えて良いと思います。スムーズにふけあがり軽やかに回るエンジンなら問題ありません。尚、走らせていない状態で回転を上げても煙が出ず、走らせると煙が出るというケースも多いので、必ず走らせて確認するようにしましょう。走らせて煙が多く出るエンジンは何れにしてもオーバーホールが必要と考えるべきです。
尚、極端に古いエンジンの場合には、最高出力回転数が3000回転でも、そこまで回さない方が良いです。とどめを刺してしまう可能性があるからです。中回転域(1500~2000回転まで)で問題ないなら、静かに労わって使うしかありません。そこで買う側が納得できるかどうかは別の話ですが…。

港に戻ってきたら

再度、エンジンルーム内を確認して、漏れや匂いを確認してください。エンジンが熱くなっているので注意が必要です。また、ディーゼルエンジンは停止時に排気(ブローバイガス)が給気側から戻って出てきますので、エンジンルーム内に排気の匂いがしても、それは正常です。しかし、通常の稼働中に常にエンジンルームに排気が充満するような状態なら排気漏れしていますので修理が必要です。

最後に

前回の艤装編でもお話しましたが、エンジンはメンテナンス状況がコンディションに顕著にでるものですので、メンテナンス履歴の確認は必ずしましょう。また、修理歴がある場合、その修理理由は何だったのかをオーナーから聞いておくと良いと思います。
エンジンは不具合が出始めると、簡単には解決しないケースが多いので、せっかく楽しむために手に入れたヨットが楽しくなくなってしまいます。是非、エンジンを確認する際には慎重に確認するようにしましょう。

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