ヨットが欲しいと思い始めると、コストの事がやはり気になると思います。僕たち夫婦の場合には、そのあたりのことはある程度クルーをやっていた関係で知っていたので、コストをできるだけ低く抑える工夫を購入当初からできましたが、初めてとなると、そう容易いことではないですね。ランニングコストのことを日本では一般的に維持費と言いますが、僕はこの維持費という表現が好きではありません。だって、ヨットは走らせて楽しむものなのに「維持する」=「船を持ち続ける」ために必要な費用を払うなんていう考え方はとてもネガティブに感じるからです。ヨットは楽しむためにあるのですから、楽しむために必要な費用という考え方であった方がとても前向きで、そのために頑張って稼ごうと言う気持ちにもなれると思うのです。
ヨットの所有を考えるときには、ランニングコストだけでなくイニシャルコスト(初期費用)も考えておく必要もあります。
そこで今回は、ヨットの所有を考えるときに気になるコストの事についてお話したいと思います。

コストには2つある

コスト(費用)には、購入時にだけ一時的に掛かるイニシャルコスト(購入時の初期費用)と所有し続ける限り継続的に必要となるランニングコストがあります。ここでは船の本体や初期に船に取り付ける追加装備品などの費用は省き、経費として掛かるものについてお話を進めます。

イニシャルコスト

ヨットを購入するには、購入と同時に必要となる費用が幾つかあります。

  1. 保管場所の確保に掛かるコスト
    保管場所はヨットハーバーやマリーナなどになるかと思いますが、保管場所が決まっていないと船を登録することができません。保管場所を確保するための費用としては、マリーナやヨットハーバーに支払う申込金保証金、更に年間の保管料を先払いすることになります。また、陸置きの場合には、船台の購入費用も必要です。ヨットハーバーやマリーナによってはレンタルがあるところもありますが、船の大きさや船底の形状によって船台のサイズ等が変わってくるため、殆どの場合は新規で購入して製作を依頼することになります。
  2. 保険料
    ヨットハーバーやマリーナと契約するには、多くの場合、プレジャーボート保険に加入していることが契約条件となっています。自動車保険と同じように、事故の際の各種補償のために加入します。
  3. 登録費
    船の名義を前オーナーから自分に書きかえるための費用です。また、船にも自動車の車検と同じく船検の制度があります。船の場合には6年に一度の定期検査があります。また、中間の3年目に中間検査という適正状態が維持されているか確認のための検査があります。この何れかの検査期限を越えて検査を終えてない場合には、検査費用も必要となります。また、法定搭載物の中には検査毎に更新しなくてはならない物もありますので、その更新費用も必要になります。
  4. 回航費用
    購入したヨットが契約する保管場所以外の港にある場合には、ヨットを契約する港まで回航する必要があります。近隣であれば、自分で回航することもできるかと思いますが、遠距離の場合には回航業者に依頼するか、陸送する必要が出てきます。陸送の場合にはマストを抜いて運びますので、専門の業者に依頼することになります。MALU号の場合には、岡山県から現在の母港である静岡県の清水港まで前オーナーのご協力を得て自力で回航しましたが、お付き合い頂いた前オーナーの帰りの交通費や回航期間中の燃料代や飲食費用、その他諸経費などを含むと回航費用は20万円程度は必要となりましたが、岡山から清水港まで楽しいヨットでの旅でした。業者に依頼していたら50万円以上は掛かっていたと思います。

参考例のご紹介

  • 30フィートのヨットの場合(およそ総額200万円)
    保証金が105万円、年間の利用料金73.5万円の合計178.5万円です。
    保険料は年間で20万円前後(500万円の船体保険を含む)。
    登録費は業者に頼んだ場合には3万円程度、自分でJCI(日本小型船舶検査機構)で行った場合には大体1万円以内です。(船検の期限が来ていない場合)
  • 25フィートのヨットの場合(およそ総額110万円)
    保証金が60万円、年間の利用料金42万円の合計で102万円です。
    保険料は9万円前後(100万円の船体保険を含む)。
    登録費は業者に頼んだ場合には3万円程度、自分でJCI(日本小型船舶検査機構)で行った場合には大体1万円以内です。(船検の期限が来ていない場合)

上記の何れの場合も、横浜ベイサイドマリーナの料金表をもとに算出した場合です。また、船検の期限が来てない場合での登録費用のみ、回航費用等は含んでいません。
5フィートの違いだけで倍近く違うのは、やはり保管費用の差が大きいのですが、保管場所を工夫すれば、コストを抑えることはできると思います。

ランニングコスト

ランニングコストは、掛かるサイクルが物によって異なりますので、ここでは項目ごとに掛かるサイクルにも注意して見て頂けるとよいと思います。

  1. 保管場所に掛かるコスト(年払い)
    イニシャルコストで前払いした年間保管料は翌年になれば、またその先の1年間の前払いを行います。保管料には施設利用料等も含まれている場合と別になっている場合もあります。また、陸置きの場合には、上下架料(船を海に上げ下げする費用)がその都度必要なところもあります。
  2. 保険料(年払い)
    これも保管場所と同様に毎年更新契約することになります。
    尚、支払いについては、毎月の分割払いもできる保険会社はあります。
  3. メンテナンス料
    エンジンオイル、オイルフィルター、燃料フィルター、インペラ等の消耗部品の交換
    これらは適宜という事になりますが、最低でも1年に1度は実施すると考えておけば間違いないと思います。ヨットのエンジン稼働時間は非常に少ないので、年間に複数回することは稀かと思います。エンジンを多用する人は、メンテナンスマニュアルにある頻度で行うと良いと思います。
    船底の清掃及び船底塗料の塗り直し
    これは、係留している場合に必要になってきます。大体、年に1度から2年に1度の割合で行う人が多いようです。
    上記以外のメンテナンス
    ヨットの場合、セイル(帆)やロープ類、リギン、ブロック(滑車)、ウインチなども消耗してきます。中でもよく使うロープ類は数年に一度は交換になるかと思います。セイルは材質にもよりますが、特に高性能なセイルでなければ一般的なものであれば10年から15年、扱い方が良ければ20年もつと思います。これは新品時から数えての年数ですので、購入する際にそれぞれが何年前に新品だったかを確認しておく必要があります。リギン、ウインチ、ブロックも同様です。
    エンジンについては、使われ方にもよりますが、漁船などは6000時間使用しても全く問題ない船もあります。ヨットで6000時間も新造時から使用されているエンジンは日本では殆ど存在しないと思いますが、黒煙や白煙が出始めたエンジンはオーバーホールが必要になると思います。購入時に稼働時間だけで判断せずにエンジンを回してみて、できれば走らせてみると状態が解ると思います。
  4. 船検費用(3年ごと)
    イニシャルコストの部分でも出てきましたが、船検が中間検査及び定期検査が3年ごとにやってきます。業者に任せた場合、中間検査が3万円前後、定期検査が6万円前後の検査費用となります。船が適正な状態に整備されていれば、それ以外にかかる費用としては、信号紅炎(自動車に積んでいる発煙筒のようなものの船版)には使用期限があるため2本は毎回受検時に準備する必要ありますが、2本で大体7千円から9千円くらいです。

最後に

ヨットのコスト面で最も大きなウエイトを占めるのは、やはり保管料金関係です。これを如何に抑えるかを工夫できれば、コストは大きく違ってきます。僕たちの場合には、東京に住んでいますがMALU号のホームポートは静岡県の清水港です。車で高速道路を使って2時間くらい掛かりますが、ちょっと小旅行気分でいつも行ってます。また、こんな人も居ます。関西方面は関東圏に比べて格段に保管料が安いので、飛行機に乗って行っても年間で考えれば安くなるし、瀬戸内海はセーリングのフィールドとしてとても良いので、遠くても関西に置いているそうです。このあたりは以前にも書きましたが、どんなヨットライフを送るかを考えて置き場を決めるという考え方もあります。

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