MALU号に乗り始めて7年、実は船の窓から少しだけ雨漏りがありました。ホント少しだけなんですが、雨が長く降り続くとキャビンの椅子が濡れているということが何度もあったので、窓の下にハンドレールがあるので、そこにタオルを掛けて下が濡れるのを防いでいました。しかし、スタボ側だけだったのが、ポート側からも同じような漏れが始まり、今年はゲリラ豪雨も全国各地で頻繁にあったので、これはもしかしたら雨漏りがひどくなってキャビン内が濡れてカビだらけなっても嫌なので、ついに窓枠のコーキング作業をやりました。仕事柄、現場でコーキングしている職人さんの手元を見れる機会はたくさんあるので、見て覚え、コーキングガンとクリアのコーク材をアマゾンで買い、窓枠のマスキングをしっかりやって曇り空の日に一気に作業しました。結果は、もっと早くやっておけば良かった…笑。まあ、やったことのない作業は、なかなか重たい腰を上げるのが更に重たくなり、先送りにしてしまうのですが、梅雨時に突入する前に重たい重たい腰を上げて正解でした。梅雨の間も船に何度か行きましたが、水をきちんと弾いている窓を見てはニンマリしています。
ヨットに乗っていれば、このような雨漏りの悩みは多かれ少なかれ殆どのヨット乗りは経験するわけですが、このヨットの窓のことをポートライトというのですが、「ポートって港?、なんでポートライト言うんだろう」って思い始めたら、悪い癖で調べずにはいられなくなりました。

そこで今回は、その調べた結果などを含め、ヨットの窓について書いてみたいと思います。

ハッチとポート

ヨットにはいろんなところに窓がついてます。キャビンの両舷や天井面、更に喫水線より上ですが、ハルの部分にも付いていたりします。また、スーパーヨットなどは喫水線より下の水中部分にも窓があったりします。まあ、我々のような一般的なセーリングクルーザーだと最近の傾向では、デッキ上のコーチハウス部分だけでなく、両舷のハル部分に窓が付いていたりします。
このヨットに付いている窓ですが、「窓」と言っても話は通じるのですが、ヨット用語では「窓」”window”とは言いません。何故、ヨットでは「窓」と言わないのかと言うと、建築物についている窓”window”の目的は風を通す目的があるから”wind”というわけです。しかし、ヨットの場合の窓は開けっ放しにできないし、主目的は採光や外を見るという目的から建築物の窓とは別の言葉で表現されるようになったというわけです。他のヨット用語に戸惑うシリーズの文中でも説明しているように船にまつわる様々な言葉は用途や機能によって明確に言い分け(使い分け)されているわけですが、特に船の場合には、言葉の使い方次第でそれが命に直結することから、ぱっと見が窓でもいろんな言い分けがされています。
その中でもヨット初心者だと絶対に解らないのが、ハッチとポートです。

ポートホールとポートライト

ヨットの窓についてよく使われるヨット用語は「ポートライト」”portlight”です。しかし船舶用語では「ポートホール」”porthole”という言葉が他にもあります。
ポートホールやポートライトのポートの語源は、16世紀ごろにフランス語の「porte」(ドアやゲート)から由来する言葉です。実は港を意味するポートも同じ言葉が語源で海に向かう扉とかゲートという意味合いから来ています。
「ポートホール」(porthole)の「ホール」(hole)の語源は、英語の「hole」(穴)から来ています。この単語は、古英語の「hol」(穴、くぼみ)に由来し、さらにインド・ヨーロッパ祖語の「*kel-」または「*kol-」(穴、くぼみ、空間)に遡ることができます。つまり、「ポートホール」という言葉は、16世紀ごろにフランス語の「porte」(ドアやゲート)と英語の「hole」を組み合わせて作られた造語です。これら語源からポートホールは文字通り「開口部の穴」や「ドアの穴」といった意味になり、船の側面に開けられた小さな穴(開口部)を指し、外の景色を見たり、光を取り入れたりするための窓としての機能を指す言葉です。
「ポートライト」(portlight)の「ライト」(light)の語源は「光」を意味します。窓を通して自然光を取り入れる役割があるため、この言葉が付けられています。つまり、「ポートライト」(portlight)は「光を取り入れるための開口部」や「光を通す窓」という意味になります。ポートホールと似た役割を果たしますが、ポートライトは特に開閉可能なタイプです。こうしてみると、ポートホールもポートライトも同じように感じますが、窓の形や設置する場所の点でもポートホールとポートライトでは若干の違いがあります。

ポートホールとポートライト違い

ポートホールとポートライトでは、その特徴と設置場所について異なる部分があります。
ポートホール(Porthole)の特徴は、①丸い形状であること ②開閉できずガラスは固定されている ➂強化ガラスや金属のフレームで構成され防水性と耐久性が非常に高いことなどです。また、設置場所の違いとしては、①船室やキャビンで自然光を取り入れ、外の景色を見るために設置される ②デッキハウスや操舵室、船橋などに取り付けられ操船の視界を確保するために使用される ➂貨物室など通常は開閉することが無く防水性を重視して設置されるなどです。
ポートライト(Portlight)の特徴は、①様々な形状(丸、楕円、矩形など)があること ②通常は開閉可能で換気の役割も果たす ➂防水性と耐久性を備えた強化ガラスやアクリルで作られていることなどです。設置場所の違いとしては、①キャビンや居住区で自然光を取り入れたり、換気を行ったりするために設置される ②サロンやダイニングエリアと言ったより快適な居住環境を提供するために設置される ➂バスルームやトイレなど換気を重視して設置されることなどです。

上記の違いは、主に大型船舶における使途の違いとなるのですが、ヨットの場合には「ポートライト」と言われているのは、この違いからも明らかでヨットの基本設備はキャビンやサロン、ダイニングエリア、シャワールーム、トイレなどであることや、採光の目的だけでなく開閉を可能として換気の目的で設置されるからです。
最も大きな違いは、ポートホールは開閉しない丸窓であるということ、それに対してポートライトは開閉が可能な窓のことを指す言葉であるということです。

丸窓

ハッチ

ヨットの窓と言うと、もう一つ天窓のようなキャビンの天井面、デッキ側から言うと、デッキ面に付いている窓のことをハッチと言います。しかし、このハッチですが、本来の意味は窓ではありません。船用語のハッチの正しい意味は、人や物を出し入れする開口部分のことをハッチ”hatch”と言います。つまり、人や物が出し入れできないほど小さな窓をポートと言うわけです。
現代では、ハッチは開閉する扉自体のことをハッチと言いますが、人や物を通さないところは現代でもハッチとは呼びません。
ヨットだと、キャビンに降りる出入り口部分のことをコンパニオンウェイと言いますが、その上面のスライド式のガラスは、スライディングハッチ”sliding-hatch”(日本ではスライドハッチ)と呼びます。また、デッキ面についている四角い跳ね上げガラス戸が付いている物やガラスではなく蓋のような部分も人や物を通すものは全てハッチと言います。

スカイライト

船で採光用の天窓のことをスカイライト”skylight”と言います。ヨットでも天窓のガラス面が大きくとられているデザインの物があり、それもスカイライトです。
また、開閉式で人や物が出入りできるものは、スカイライトハッチ”skylight-hatch”と言います。

フィックスドライト

ヨットだとポートライト以外にキャビンのコーチルーフ(キャビン上部のデッキから1段上がった天井面のこと)の立ち上がり面の部分に前後に長く開閉できない採光窓が付いていたりしますが、これをフィックスドライト”fixd-light”と言います。(開くことができない天井面からの明り取り)最近では、フィックスドウインドウ”fixd-window”と言ったりもするようです。このフィックスドライトは、現代船にしかない物なので古い船用語ではないことから、ウインドウと呼び始めたようです。
英語のカタカナ読みでかいていますので、フィックスドライトとか、フィックスドウインドウとかな書き表記していますが、実際には口語体で「フィックスライト」「フィックスウインド」と言うのが一般的なようです。

最後に… ヨットのハルに付いている窓は?

最新のヨットでは、ガンネル(船の側面のフチ)より上ではなく、ガンネルより下であるハルの両舷に開閉できない窓が付いているデザインの船が増えてきました。これは、キャビンの居住性を高くするために、船体のガンネル自体を高くして、キャビン全体の容積を大きくするために、コーチルーフ部分だけを上げるのでなくデッキ全体の高さが上がっているデザインになっていることから、デッキより上に窓が付くというデザインではなくなってきているからのようです。ではハルについている細長い窓はと言うと、これが昔の船ではコーチルーフのサイド面にあったフィックスドライト(フィックスライト)がハルに移動したようです。ハルについているので、大きくヒールすると水中に入ってしまう窓なので、セーリング中にキャビン内に居て窓から外を覗くと水中の様子が見えたりすることがあります。すごいですね。
これを昔ながらの形で造ろうとすると、ポートホールを取り付けるということになるのだと思います。しかし、デザイン性を考えると、長四角やひし形、楕円形などの方がスマートで現代的ですから、現代の最新ヨットに丸いポートホールは敬遠されてしまうのでしょうね。でも、デザインでもし丸い窓がハルに着いたら、そのヨットはポートホールのあるヨットということになりますね。
クラッシックなデザインのスーパーセーリングヨットなんかであれば、わざと丸い窓を使ってクラッシックなイメージを演出するということになるんだと思います。しかし、昔の船のような窓ではなく、丸くても凹凸のないスムージングされて、更にガラスは見た目はハルの色と同じように見えるような処理がされた丸窓になるんでしょうかね。妄想はつきません…。

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