世界最古の国際ヨットレースとも言われるアメリカズカップは、アメリカズカップの起源であるワイト島1週レースでアメリカから参加したニューヨークヨットクラブの有志たちで造ったヨット、アメリカ号の勝利したことによりカップはアメリカに持ち帰られ、アメリカ号の勝ち取ったカップであることから”America’s Cup”(アメリカズカップ)と呼ばれるようになったことはとても有名な話です。
アメリカ号のオーナーたちはこのカップを自らが所属するニューヨークヨットクラブに寄贈することとし、その際にカップと共にカップの扱い等を定める贈与証書が添えられました。
この贈与証書にある内容が、ヨットレースであるアメリカズカップの基本的なルールとなっていますが、アメリカズカップで使用するヨットの規格について「マスト1本場合は水線長が44フィート以上、90フィート以下」「マストが複数の場合は水線長が80フィート以上、115フィート以下」とだけしか書かれていなかったことから、 この範囲内であれば防衛艇と挑戦艇の合意があればどのような規格のヨットを用いてもよい ことになっています。また、「挑戦者は自走によりヨットを回航しレースに参加しなければならない」とあります。
このルールにより、防衛側であるアメリカはスポーツ界全てを見渡しても最も長い期間(132年間)に渡りこの優勝カップを保持し続けることになります。しかし、このルールにイギリスの紅茶王と言われたサー・トーマス・リプトンは、紳士的かつ粘り強い交渉によってレース艇規格及び周辺ルールの緩和を求め、現代のアメリカズカップ艇ルールの基礎となるものがつくられました。このことによって最初にできた規格のヨットが “J class” です。
(Jクラスヨットについては、これも興味深い話がありますので、また別の機会に書きたいと思います。)
アメリカズカップの面白いところは、1対1のマッチレースで勝敗を決めることから、挑戦者も防衛者も各1艇に絞り込まなければならず、挑戦者を決めるシリーズ戦の他に、防衛国となる国内でも防衛艇を決める予選があることです。これにより、挑戦艇と防衛艇の数は、アメリカズカップに出場するためにかなりの数が造られることから、1度の開催で1つのヨットレースカテゴリーが出来るほどになってしまうという訳です。
前置きが長くなってしまいましたが、このようにアメリカズカップで使用されるヨットの規格が大きく変わると、莫大な費用を投じて開発建造されたヨットの活躍する場が失われてしまいます。特に次回2021年3月にニュージーランド(オークランド)で行われる第36回のアメリカズカップでは、これまで使用されてきたカタマラン(双胴船)タイプからモノハル(単胴船)になることが既に決定しており、この大きな変化によりこれまで使われたいたカタマランタイプ艇による新たなヨットレースイベントがつくられました。それが、”Sail GP” です。
今回は、この “Sail GP” に日本チームも参戦し、初シーズンでありながら大健闘しており、この記事を書いている今日現在でポイントランキング2位という好成績で年間チャンピオンシップ決勝戦に出ることがほぼ確実な状態となりました。そこで、今回は”Sail GP”について書いておきたいと思います。
“Sail GP”艇について
この新たなカテゴリーのレースの起源は、冒頭に書いたような流れで創設されたレースです。アメリカズカップで使用されていたマルチハルのフォイリング艇である”AC50″を大幅に改良しリメイクされたワンデザインクラス艇の”F50″を用います。
アメリカズカップでは6人乗りでしたが、Sail GPでは5人乗りとなり、世界中を転戦できるようにコンテナに収納し輸送が容易な形に改良されています。
F50艇の詳細を笠谷選手が説明している動画がありますので、ご覧ください。
“Sail GP”のレース形式
レースの基本は国単位のチームで争われ、世界5つの都市でレースが行われます。
レース形式はアメリカズカップと異なり年間を通じたシリーズ戦形式で行われ、シリーズチャンピオンには賞金100万米ドルとトロフィーが授与されます。各地域戦は2日間に渡って行われ、初日は全艇が一斉にスタートするフリートレースを5レース、2日目は上位2チームよるマッチレース形式の決勝レースが行われるというプログラムになっています。各地域のレース結果によるポイント制でシリーズ最終戦でトータルポイント上位2チームのマッチレースによる決勝レースで優勝チームが決まります。
2019年シーズンの参加チームは、イギリス、アメリカ、オーストラリア、フランス、中国、日本 の6か国です。
2019年度のレース開催地
2019年のシーズンは5箇所での開催となります。残念ながら日本での開催はありません。
初戦:オーストラリア(シドニー)2月15-16日
第2戦:アメリカ(サンフランシスコ)5月5-6日
第3戦:アメリカ(ニューヨーク)6月22-23日
第4戦:イギリス(カウズ)8月11-12日
最終戦:フランス(マルセイユ)9月20-22日
ファーストシーズンの2019年、日本チーム総合優勝なるか⁉
最終戦のマルセイユがちょうどこの記事を書いている時に開催されており、シーズンポイントで日本がオーストラリアに次ぐ2位をキープし、最終のチャンピオン決定戦への可能性が非常に高まっています。
シリーズ戦では第2位になった日本、一発勝負100万ドルを賭けた決勝レースは惜しくもオーストラリアに負けてしまいました。
“Sail GP” のこれまでのレースの様子は こちら(YouTube) からご覧いただけます。
最後に…
“Sail GP”はチームメンバーの国籍に関するルールが非常に厳しく、この種の艇の経験が少ない国に限って、外国人を入れて良いというルールになっています。
ファーストシーズンの今年は日本人が40%、以降毎年その比率を20%ずつ上げてゆき、最終的には2022年シーズンには100%日本人だけのチームで参加しなければなりません。このあたりが日本における今後の課題となそうですが、先ずは今シーズンのシリーズチャンピオンの行方がどうなるか、そして来シーズンも目が離せないシーズンとなりそうです。
maybeanさん、コメントありがとうございます。日本チーム、ホント惜しかったですね。来シーズンは日本人クルーの数を更に1人増やしての参戦になるかと思いますが、今年同様にファイナルまで勝ち上がって欲しいですね。
決勝惜しかったですね。
最終レグで失敗しなければ行けたかも。
駿河湾で繁盛にブログ書かれてる方はKAKESUさんとMALUさん位しか存じ上げないので
これからも末永く頑張って下さいませm(__)m