僕たち夫婦がヨット(MALU号)に乗り始めておよそ1年半が過ぎようとしています。MALU号を係留しているマリーナを使い始めた頃は空きバース(桟橋)がチラホラあって、マリーナは割とのんびりした雰囲気でした。

しかし、今年に入って冬の終わりから春先に掛け大型のパワーボートがどんどん増え、みるみるうちにマリーナの大型艇バースは大型パワーボートで満員御礼。聞くところによると他のマリーナでも同じような状況で、今やボートを買っても置くところが無い状況になりつつあるようです。
また、ボート業界では新艇がバックオーダー状態の嬉しい悲鳴という事で、ユーザーサイドから見れば注文しても直ぐに手に入らないので中古艇市場まで活況を呈しているようです。更に、レンタルボートの利用が増え、マリーナのレンタルボートは毎週末、ボート免許とりたてと言う感じの人が乗って出港してゆくのを見かけるようになりました。

それに比べてヨットはと言えば、横這いか若干下降状態のようにも感じます。既存オーナーの乗り換えなどで船が入れ替わることはあっても新しく増えるということは殆どない。逆に周囲のバースに係留していたヨットが突然なくなったと思ったら、オーナーが高齢でヨットを降りてしまわれ、艇は売りに出されてしまったという寂しい話まで耳にします。

ヨットはどうしてこうも増えないんだだろう。(溜息)

 

1. 「何がいいのかさっぱりわからない」

この言葉は、以前に大型のパワーボートを所有されているという方とお話をする機会があった時に出た言葉です。
「ヨットはいいですよ」って話をしたら、「何がいいのかさっぱりわからない」…(絶句)
いろいろとお話をする中で気付いたことは、そもそもヨットのことをよくご存知ではないということ。だから「何がいいのかさっぱりわからない…」になるんだなあと感じました。

ヨットのことをよく知らないのは日本人だけ?

先進国の中でヨットがこれほど一般の人に知られていないのは日本くらいではないかと感じることがあります。欧米ではヨットがかなり身近な存在で、青少年の教育にもヨットや帆船が多く用いられています。また、欧米では若いカップルが古いヨットを時間を掛けてレストア(自分たちで修繕)し、少ない予算でヨットの旅を楽しんでいる様子をYouTubeなどでよく目にします。おそらくセーリング(帆走)に対する考え方や知識の違い、そしてヨット文化の違いが大きく影響しているように思います。

セーリングできることのメリット

ヨット(セーリングクルーザー)にもエンジンは付いています。エンジンを使って走る(機走)時はパワーボートと同じです。しかし、ヨットはエンジンだけでなく風の力でも走ることができるというプラスアルファーがある乗り物です。
ちょっと考えてみれば誰でも解りそうなことなのに、それをメリットと捉えている人は日本ではかなり少ないように感じます。
パワーボートは移動するためには常にエンジンを回し続けないと何処にも行けません。遠くに行くには大量の燃料を積んでゆかなければなりません。更に早く到達する為にはかなりの燃料を使います。一回の出港で使う燃料の量はヨットとボートでは天と地ほどの違いがります。

2. ヨットと言ってもディンギーとクルーザーではかなり違う

ヨットというとセーリングクルーザーだけでなく小型のディンギーがあります。このディンギーでよく目にするのがちょっとした強風で横転するシーン。ヨットは必ず転覆するという間違ったイメージがヨットを面倒な乗り物に仕立て上げているように思います。でもそれはあくまでもディンギーだけの話です。セーリングクルーザーが転覆することはまずありません。何故なら総重量の1/3近くの重さが船底にバラストキールとしてぶら下がっている。バラストキールは風を帆に受けて走る時に、風で船が倒れようとする力を船の推進力に変えるために必要な重りですから、風には簡単に負けないくらい重く設定されているのです。ですから、仮に完全に横倒しになったとしても復元性は非常に高いのです。荒天時の巡航性能はパワーボートに比べてかなり高いと言えます。

つまりセーリングクルーザーはパワーボートに比べてはるかに安全な乗り物だということなのに、これらのこともあまり知られてはいません。安全の証拠に海外から遠路遥々クルージングでやってくるボートの殆どがセーリングクルーザーです。

3. ヨットは安全かつエコな乗り物

ヨットはパワーボート並みのスピードは出せないけれども、港を出て風があれば帆を上げ風の力だけで走ることができるので、燃料を大量に積んでいなくても目的地に風の力で到達することができるにで、とても省エネでエコな乗り物です。欧米でヨットが人気なのは、このコストパフォーマンス性の高さや安全性が高いからです。

スピードは風任せの部分があるので、時間通りに目的地に到達したいときにはエンジンをかけ機帆走で走れば良い。パワーボートのように高速では走る事が出来ないけれど、少ない燃料でかなり遠距離まで行けるヨットの経済性には是非とも注目すべきだと思うのです。

安全そしてエコ、自炊も宿泊もできる。海で風と遊ぶ究極のアウトドアアイテムとも言えるセーリングクルーザーは、今の時代に最もフィットしているアイテムだと思います。

4. 最後に…

ここではヨットのメリットばかりを書いてきましたが、デメリットもあります。
最も大きなデメリットは、スピードがそんなに出ないという事です。風が強ければ早く帆走できるかと言えば、実はそうではありません。パワーボートのように強力なエンジンを積めばどんどんスピードアップできるという乗り物ではないヨットは、なんでもキッチリ時間通りに行動する日本人には、ちょっと不便に感じるのかもしれません。私の乗っているヨット(MALU号)は、エンジンでも風の力でも、大体7ノット(時速に換算すると、おおよそ13キロ)のスピードがマックスですから、駿河湾を横切って清水港から西伊豆の最も近いところ(大瀬崎)まで到達するにも片道およそ2時間半くらい掛かります。
つまり、時間に余裕をもってと言うのがヨットでは必要になるわけです。目的地に行って何かしたい、釣りをしたい、海水浴したいなど、マリンスポーツを楽しむ、行った先で何かしたいという、メインの目的がクルージング以外にある場合、交通手段としての乗り物としてはヨットは不向きかもしれません。

ヨットはセーリング自体を楽しむ乗り物で、風や波、自然と一体化することで楽しむ乗り物ですから、目的地に着いて上陸した時の達成感はパワーボートでは味わえないものがあるかと思います。
この辺の感覚がおそらく経験してみないと解らないことです。何事もどんどん便利でスピーディーになっている現代に、便利から逆行する遊びと言うのがヨットではないかと思います。
このあたりの話題は、このブログでおいおいご紹介して行ければ考えています。

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