初めてヨット(セーリングクルーザー)に乗りに行ったとき、ざっと船内の説明を受けた時「ヘッドはココね」と言われ、扉を開けることなくふんふんとわかった顔をしてスルーしていた。出港してセーリングを始めしばらく時間が過ぎ、トイレに行きたくなったので「トイレは何処ですか?」と質問すると「さっき説明したでしょ?」と言われ、あれ?そうだっけ?って感じに。

僕は確かにトイレ場所の説明を受けていたんですね。「ヘッドはココね」という具合に。

ヨットには長時間航海をするために各種の生活設備が備わっています。生活設備の代表格と言えば、やはりトイレです。「周りは海なんだから海に直接しちゃえばいいんじゃない」と思われがちですが、走るヨットの上で用を足すのはそんな容易なことではありません。男性なら何とかなりそうですが、ヨットには男性だけでなく女性も乗り込みますから、やっぱりトイレは必需品ですね。

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船のトイレはヘッドという

船のトイレのことをベテランのヨットマンや船員の人たちは「ヘッド」(”head”=頭)と呼びます。僕は長くダイビングボートに乗っていたんですがヘッドという言葉はヨットを始めて初めて聞きました。ダイビングボートはお客を乗せる営業船なので、素人に解りやすいようにトイレと船長は言ってくれていたんですね。
20フィート程度の小型ヨットの場合、スペースの関係からキャビンの最も奥となる船首側にトイレが設置されていることが多いので、この場合はヘッドと言っても不思議ではないですが、大型のヨットになるとコックピットからキャビンに入った直ぐの場所に大抵トイレはあるので一概に船首にあるというわけではありません。では、どうしてトイレの事をヘッドと呼ぶのでしょうか?

ヘッドの語源は大昔にさかのぼる

ヘッドの語源は、動力船以前の帆船時代、それもまだ風に対して上り帆走ができない横帆帆船の時代にさかのぼります。当時の帆船のトイレは船内にはありませんでした。当時は船内から海に機械的に排出する技術はまだ無かったので海に直接用を足していたわけです。その際に船を汚すことなく他のクルーに迷惑を掛けない場所として、船の舳先(ヘッド)で用を足していました。最初の頃はロープにぶら下がって用を足していたそうですが、それでは大変なことから船首が大きく前に迫り出した海面の上になる場所にトイレを置き直接海に落とす形で用を足していました。そのことから、トイレの位置が船のヘッドにあるので、ヘッドと呼ばれるようになったわけです。

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船首側では船が汚れない?

船首側にトイレを置くと排泄物が後ろに飛んできそうに思いますが、風に対して下る(風上から風下の方向へ行くことを下るという)ことしかできない横帆帆船ですから、風を帆の後ろ側から受けて帆走することしかできません。つまり、排泄物を海に落としても後ろに飛んでくるようなことは無く悪臭も船の進むスピードよりも風は早く前方に流れて行くので船首側にトイレを置いていました。また、仮に船に汚れがついても、船首側なら波に洗われるので都合が良かったのです。因みに船首側と言っても左右それぞれにあったそうです。横帆帆船の場合、真横から後ろに掛けての風であれば帆走することができますから、船首に二つあるうちの風下側になるトイレを使ったそうです。風上側では船が汚れる可能性が高いからですね。

技術の進歩で名前だけが残った

現代の帆船であるヨットは基本的に縦帆(縦に並ぶ帆)を使うことで、風に対して斜めに上りながら風上側へ移動することもできるようになりました。このような帆走方法の進化だけでなく、トイレも発展し技術の進歩と共に舳先から直接海に落とすという形は姿を消し、その名前だけが残ったと言うわけです。

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