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ヨットを楽しむための国際VHFの使い方

以前にこのブログで「ヨットに必ず備えておきたい国際VHF無線」という記事を書きましたが、国際VHF無線をヨットに積んでいても、常に電源スイッチを入れて聴守しながら航行しているなんて人は少ないのではないでしょうか? 確かに交信する機会も殆ど無いし、不必要に電源を入れて本当に必要になった時に充電切れなんてことになっても嫌だから…という考え方もあるかもしれません。そもそも国際VHFは、欧米ではヨットを動かす際に頻繁に使用されており、港やヨットハーバーなどの出入港や係留場所の問合せ、跳ね橋や水路の通行時の連絡、岸辺のサービス施設等との連絡などなど、緊急時や航行の安全確保のための他船とのやりとり以外にも、意外に頻繁に使われています。日本ではマリーナやヨットハーバーなどの施設であっても国際VHFの地上局をやっていないところも少なくない状態ですし、漁協も国際VHFではなく専用の漁業無線を使っていることから、漁港利用の際に国際VHFで漁協等に呼び掛けても残念ながら応答してくれません。まあ、こんな感じでなかなか利用の機会が少ない国際VHFなので、いざという時に使い方を忘れちゃったなんてことも少なくないと思います。

国際VHF

そこで今回は、「国際VHFの使い方のおさらい」を中心にお話をしてみたいとおもいます。

国際VHFの基本的な使い方

まずは基本的な使い方のおさらいから始めてみたいと思います。

航行中はch16とch77を聞く

先ずとりあえず「ch16」です。一般呼出&応答用に使います。何かあったら先ずは「ch16」を使います。
「ch77」は、小型船舶に割り当てられた呼出&応答用の専用チェンネルで、「ch16」は大型船などすべての船舶が使用することから、輻輳(寄り集まって込み合う事)を避けるために割り当てられたチャンネルです。
「ch77」は小型船舶が使用する海岸局の呼出・応答用に使います。総務省では小型船舶同士の呼出・応答への使用を推奨していますが、相手が必ずしも「ch77」を聴守しているとは限らないので、とりあえずは「ch16」を使った方が安全です。また、緊急性が高い場合には周囲の船舶にも周知する必要がありますので「ch16」を使うべきです。

「2波受信」

ch16とch77を同時に聴守するなんてできないように思いますが、国際VHF無線機には「2波受信」という機能があり、自動的に2つのチャンネルを交互に受信することができますので必ず設定しておきましょう。2波受信を利用するには、無線機に2波受信設定をする必要があります。

以下に通話の方法を4ステップに分けて説明します。

1) 呼出又は受信

ch16とch77を聴守していると、相手から船名で呼び掛けられたり、または、こちらが何か相手に伝えたい時に相手の船名や地上局名で呼び出したりを、このチャンネルでします。
呼出す場合には、「〇〇マリーナ、〇〇マリーナ、こちらMALU号、こちらMALU号、応答願います。」と言う具合です。呼掛けられた(受信の)場合には、〇〇マリーナとMALU号が逆になります。

2) 応答

「MALU号、こちら〇〇マリーナ、ch71に変更お願いします。」
MALU号は「ch71、了解」と返答し、チェンネルを切り替えます。
呼掛けかられた側が通話用のチェンネル(ch71,ch74,ch86の何れか)を指定します。

3) 通話の開始

切り替えたチャンネルで通話を開始します。
呼出した側が用件を伝え、それに対して呼び出された側が返答します。
「〇〇マリーナに入港します。ゲストバースへの誘導をお願いします。」と言う具合です。

4) 通話の終了

やりとりを終える時には、最後に「さよなら」と言い、相手も「さよなら」で通話が終了となります。
MALU号「ゲストバースが見えました。着桟の準備します。さよなら」
〇〇マリーナ「桟橋でスタッフが舫取ります。さよなら」

チャンネルの使い分け

チャンネルは決められた用途に従って割り当てられています。主に、「呼出・応答用チャンネル」と「用途別通話チャンネル」に分けられます。

運用上の注意

国際VHFは、海上交通における航行の安全のために使うもので、人命を守る大切な通信手段ですので、ルールを守って正しく運用する必要があります。また、船舶の航行中・入出港中にのみ運用することができます。(河川、湖沼及び陸上での運用は禁止)

遭難時の使い方

遭難時には「ch16」を使って救助を求めます。また、DSC機能「ch70」で遭難警報を送信することもできます。
遭難時に慌てることのないよう、送信・受信の操作について十分に理解しておきましょう。

遭難通信

ch16で以下のように呼出を行います。
「メーデー、メーデー、メーデー。こちら〇〇号、〇〇号、〇〇号。」
応答があっても無くても、「自船の位置、遭難の種類、状況、必要な救助の種類など、その他な情報」を送ります。
何処かで誰かが、この緊急通信を傍受しているかもしれません。応答が相手の出力の関係で届かないことなどもありますので、遭難時には応答が無くても、情報を発信しておくべきです。
遭難通信を受信した受信局は海上保安庁などに通報する義務を負っていますので、船上で遭難通信を受信し、他局と通話が行われていない状態であれば、通話を開始し、海上保安庁にも必ず通報します。

遭難通信(緊急事態時)の例外

国際VHFを搭載しているヨットに乗船しても国際VHFを運用できる人は局の免許により船によって限定されています。しかし、遭難通信(緊急事態)の場合には、誰でも国際VHFを使って救助を求めることができますので、同乗している人にも、国際VHF無線機の緊急時の使い方を知らせておくと良いでしょう。

DSCによる遭難警報”DISTRESS”の送信

DSC搭載の国際VHF無線機の場合には、遭難警報をボタン1つで発信することが出来ます。DSCとはデジタル選択呼出通信(Digital Selective Calling)、船舶遭難の場合にボタン操作のみで遭難警報を発したり、船舶を特定しての呼び出す機能です。GPS内蔵の無線機の場合には、無線機のある位置情報を遭難警報と共に発信することが出来ます。
遭難警報の発信は、本体のDISTRESSボタンを長押しすることで発信が開始されます。発信が始まるまでボタンを長押しし続けます。ボタンは下の写真のように誤操作防止のためカバーの下に赤いボタンがあります。

遭難通信同様に、同乗者にも緊急時にはDSCを押すことで遭難警報を発信できることを周知しておくと良いでしょう。

DISTRESSを誤発信してしまったとき

DISTRESSを停止し、取り消しの通報を行います。「各局、各局、各局。こちらは〇〇号、〇〇号、〇〇号。〇時〇分の遭難通報を取り消します。」と言う具合です。
また、海上保安庁が発動することも考えられますので、念のため、最寄りの保安庁にも取り消しの連絡をしておきましょう。

DSCの運用は二海特が必要だけど、DISTRESSは押せる

DSCを運用するためには、無線従事者免許証の第二級海上特殊無線技士 以上の資格が必要になります。しかし、それは運用する場合であって、DSC機能がある国際VHF無線機を所有することは免許に関わらず可能です。「遭難通信の例外」でも書きましたが、遭難警報(DISTRESS)の発信は、免許の有無に関わらず緊急時には誰でも発信することができるので、国際VHFを購入する際にはDISTRESSボタンの付いているGPS内蔵の機器を選ぶべきです。ビルの火災報知器ボタンのように、遭難した場合には誰でもボタン一つで簡単に遭難警報を発信することが出来るのは非常に心強いはずです。これはヨットに必ず装備しておきたいですね。

最後に…(国際VHFはもしもの時に威力を発揮する)

どうでしたか? 使い方、思い出しましたか? 僕もこの記事を書きながら再確認したと言う感じです。
国際VHFをヨットに搭載する意義は、もしもの時に最も威力を発揮するということです。これから徐々に国際VHFが普及してくると思われますが、実際に様々な運用が始まってからと考えるのではなく、もしもの時の警報ツールとしてあたりまえに常備するべきものだと思うのです。以前書いた記事「ヨットに必ず備えておきたい国際VHF無線」でも触れていますが、国際VHFをヨットに搭載するだけで、法定備品の減免を受けることができます。邪魔で無駄な浮き具よりも、乗船した誰もがワンプッシュで非常警報を発することが出来る方が、かなり現実的な効果があると思うのです。ライフジャケットの常用化されたことで、沿海や近海、遠洋に出ない限りライフラフトで時間を稼ぐ必要性もありません。それよりもスマホ以外に遭難警報を発信できる手段を持っている方がメリットは大きいと思いませんか? 防水、GPS搭載、DSC有り(DISTRESS発信可能)なハンディー型の国際VHF、是非ヨットに1個準備しておくことを強くオススメします。

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