ヨットを始めて初めて知ったのが「ヨット」の意味が日本と海外ではまるで違うということです。
「ヨット(yacht)」と言うと日本の人の多くが「三角形の帆が付いたボート」を頭に思い浮かべますが、海外で「ヨット」と言うと日本とは全く意味が異なってきます。
Webで”yacht”の和訳を検索するとカタカナで「ヨット」とだけ書いてあります。その後ろに解説文が付いていて「競走用軽快帆船と(外洋を航行できる遊覧用モーター[帆]付き)豪華快走船とがある」と書かれていて、これを読んで一発で理解できる人はなかなかいないと思います。
そこで今回は、「ヨット」の本来の意味について書いてみたいと思います。
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海外でヨットとは?
1. 外洋を巡航できる設備を有すること
外洋を巡航(クルーズ)するためには何日も船内生活をすることになりますから、船内に生活設備 が必要になります。では、具体的に生活設備とは何かという事になりますが、それは家のように船で暮らせるという事です。
つまり具体的には、トイレやキッチン、洗面台、シャワー、リビング&ダイニングスペースや寝室を備えている船という事です。
2.遊びやレース(競技)のための船舶であること
遊びやレースのために使う船であること、つまり日本的に言えばプレジャーボートです。しかし日本ではプレジャーボートと言うと、かなり小さな小型船舶をイメージしますが、海外には物凄く大きなプレジャーボートもたくさんあります。
逆説的に言うと、働く船(作業船、貨物船、客船、etc…)ではないという事です。
3. SHIPでもBOATでもない
“ship”(シップ)は基本的に大型の船の事を言い、主に働く船のことを指します。”boat”(ボート)は小型の船のことを言います。ボートにも働くボートはありますが、遊びのためのボートをプレジャー・ボートと呼び分けしている訳です。”yacht”(ヨット)は、主に大型の遊びのための船のことを指すわけです。
具体的には、海外でヨットと言える船の大きさは60~80フィート以上(20メートル前後)の大きなものを言います。逆にそれ以下はボートになります。
つまり本当の意味でヨットに乗れるのは一握りの富豪だけという事ですね。
個人所有の大型スーパーラグジュアリー船
つまり、ヨットとは上の3項目に全てあてはまる、「個人所有のスーパーラグジュアリー船」のことです。
日本ではそういう船を見ることは非常に稀ですが、世界にはこういう船がある意味ゴロゴロしています。
どんな船が実際にあるかは、こちらの記事をご覧ください。「世界最大のセーリングヨットランキング」
帆の有無は本来全く関係ない
日本で「ヨット」と言うと、帆がある遊び用の船を一般的に指しますが、海外では帆が無い船でも先の3項目に該当すれば「ヨット」”yacht” と言います。
では、帆の有無はどのように言い分けているのかと言うと、帆のある物で主に帆走することが主になっている船は「セーリングヨット 」”sailing yacht” と表現します。また、エンジンと帆を補助的に使って主にエンジンで走る船を「モーターセイラー」”motor sailor”とか「モーターセーリングヨット」”motor sailing yacht” と表現します。では、帆が無いものはどういうのかと言うと、単に「ヨット」”yacht” と海外では一般的に言っています。帆はあるの?とか。セイリングするの?なんて質問されると「パワーヨット」”power yacht” という表現をします。
少し余談になりますが、日本で「モーターボート」という言葉をよく使いますが、海外では「パワーボート」と言います。”motor”は小さな動力源的な意味で主動力がエンジンの場合には”power”と表現するのが一般的です。また、先にご紹介したモーターセイラ―は、風(帆)とエンジンの両方の力を使って走ることから、強力なエンジンはを用いてないという意味で「モーター」と言う言葉が使われています。でも、実際にはエンジンだけでかなりの速力で走ることができるモーターセイラ―もあるので、パワーボートにセイリングできる帆がついていれば全てモーターセイラ―と表現しています。
ヨットじゃなければ正しくはどう表現すべきか
日本で一般的に言う帆で走る遊びや競争(競技)用の船である「ヨット」は、その殆どが “sailing boat”(セーリングボート)または “sailing dinghy”(セーリングディンギー)という事になります。
大きさ的に20メートル前後を超える場合(バス2台分くらいの長さ)には”sailing yacht”(セーリングヨット)と表現して間違いないです。
つまり、帆で走る(帆走)する船には、「セーリング」と言う言葉を前に付けて表現すれば正しい表現になるということです。
因みにオリンピックではヨットレースが競技カテゴリーにあります。これも正しくは「セーリング競技」と言います。日本でも国際標準で正しく表現しようという取り組みがなされており、現在ではヨット団体を取りまとめる協会組織名も「日本セーリング連盟」と言う名前で活動をしています。
最後に…
日本人は英語がとても苦手な国民性の国で、カタカナ日本語、つまり外来語については先人たちが理解した言葉、そのままに日本で一般的に使われるようになった経緯があることから、実際の海外で使われている用法とは異なるカタカナ言葉が沢山あります。生活に密着した言葉や大切な分野の言葉は徐々に修正され、国際標準的な言葉に置き換えられてきていますが、日本人の国民性と言うのか、遊びの世界における言葉は間違ったまま使われている例が非常に多いのです。まあ、まじめな日本人は遊びのことだからそんなの適当でいいんだっていうことなのかもしれませんが、海外に行って外国人に対して「僕はヨット持ってるだ」とか「友達のヨットに乗せて貰ったことがあるよ」なんて安易に話してしまうと、外国人から、この人はどんな富豪なんだとか、どんな富豪の友人がいるんだろう?って思われたりすることになります。中には、お前なに言ってんの?って思われることもあるかもしれません。それは、ヨットと言う言葉は一般庶民とは関係ない富豪たちの世界の持ち物だからです。海外旅行でセイリングする機会もあるかもしれませんが、かなり大きなものでも実際にはセイリングボートです。この辺りは気をつけたいところですね。
このブログでは
上の写真は我が家のMALU号ですが、このブログではセーリングボート(セーリングクルーザー)のことを一般の方にわかり易い表現として「ヨット」と表現しています。また、小さなヨットのことは、「ディンギー」または「セーリングディンギー」と表現しますので、ご承知おきください。
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