ヨット界の鉄人、堀江謙一さんと言えばヨット界で知らない人はいない外洋ヨット界のレジェンドです。60年前の1962年に日本人として初の19フィート小型木造ヨットで太平洋横断を成し遂げ、この堀江さんの挑戦のおかげでヨットで海外渡航ができるようになったとも言える、そんな凄いことを60年前にやってしまった人なわけです。そして、後の昭和の大ヨットブームを牽引してきたヨット界の第一人者でもあります。その堀江さんが今年(2022年)の3月28日に再びアメリカ(サンフランシスコ)から日本(新西宮ヨットハーバー)までを再び「単独無寄港そして史上最高齢での太平洋横断チャレンジ」をスタートさせました。御年83歳での船出です。
これを書いている今日現在で航海10日目になりますが、至って快調なセーリングで距離を毎日伸ばされています。世界を3周、太平洋横断を8回もされた航海経験から考えれば、今の時期にアメリカ西海岸から日本に向けてのセーリングは安定したトレードウインド(貿易風)に乗りフォローウインドで日本南岸まで到達できることもあり、おそらく堀江さんにとっては割と容易な航海ではないかと思います。あとは堀江謙一という人間の年齢と体力との戦いだけだと思います。だから史上最高齢チャレンジなんですね。2008年に波浪推進船でハワイ・ホノルルから日本までの航海が堀江さんの最後のチャレンジとなっていましたが、まさか80歳を超えて「太平洋ひとりぼっち」を再び挑戦されるなんて誰も想像はしていなかったと思います。ご本人自身が60年前に太平洋を横断した時には思いもつかなかったと会見で仰っているのですから、凡人の僕たちには予想することすらできないのは当然ですね。しかし、堀江さんの中の ” THE FIRST TIME ” の火は80歳を超えても消えることがなかったということですね。

堀江謙一さん
実はMALU SAILINGでは堀江さんのことを単独記事として取り上げることをしてきませんでした。何だか恐れ多いような気がしていたのと、正直なところ僕が改めて書かなくてもいいよね…って気持ちがあったのです。しかし、辛坊さんの太平洋往復単独横断に続けて堀江さんが80歳超えで挑戦されるとなっては、やはり取り上げないわけにはゆかなくなりました。そこで今回は、堀江さんが日本にフィニッシュされる前に今回のチャレンジの概要を書いておくと共に、堀江さんがこれまでにしてきた数々のチャレンジについても簡単にまとめておきたいと思います。

今回のチャレンジ概要

今回の航海は、2022年3月28日、ザ・サンフランシスコヨットクラブ(マリーナ地区:サンフランシスコ)から出航し、新西宮ヨットハーバー(兵庫県西宮市西宮浜)まで約2か月半の予定で、「サントリーマーメイドⅢ号」全長は約19フィート(6.05メートル)、ビーム2.15メートル、吃水1.5メートル、重量990キログラム、セイルエリア16.9平方メートルの外洋仕様セーリングクルーザーにより単独無寄港で航海するものです。

2021年11月24日の発表記者会見の様子

2021年12月4日のサントリーマーメイドⅢ試験航海の様子

サントリーマーメイドⅢ号について

設計は、これも日本ヨット界の重鎮でありレジェンドの一人でもあるヨットデザイナーの横山一郎さん。彼のお父さんである故・横山晃 氏が1962年の最初の太平洋横断の横断艇を設計し、堀江さんとは親子二代に渡って艇の設計を手掛けています。一郎さんは1971年に東京大学造船工学科卒業したのち、ヤマハに入社。ヤマハヨットの開発設計を担当。 1974~75年には日本でもファンの多いフランスのヨットビルダーであるベネトー社のヨットデザインでも有名なグループ・フィノ(GROUPE FINOT)に出向しヨーロッパ各地を回り、 1982年にはヤマハを退社独立し、1991~95年には日本のヨット界絶頂期のアメリカズカップ挑戦艇ニッポンチャレンジのチーフ・デザイナーを務めるなどしました。
堀江さんの艇には2002年の太平洋横断19フィート艇から関わり、2004~2005年の世界一周43フィート艇など、今回で4回目の「マーメイド号」設計です。

サントリー マーメイドⅢ図面

横山一郎さんのコメントによると、今回は初代マーメイド号と同じ5.83メートル(19フィート)で船体設計が進められ、初代の合板(木)製から耐蝕アルミの船体となり、セイルのサイズとリグの関係で全長は6.05メートルとなったとのこと。更にビーム(最大幅)は広めとなり、バルブキールとなったことで復元力は初代に比べると20%以上増したとのこと。しかし、金属船体であることから船体重量が増え、更に浮力が乏しくなり、浮力体を充填するなど、浮力の確保には苦労されたようです。また、昔の船に無かったハードドジャーの設置には、重心があがらないような工夫もしたそうです。これまでの船は電気の確保(充電)の目的でエンジンを搭載していましたが、今回は発電はソーラーパネルを使用することでエンジンは積んでおらず、電気は全てソーラー発電で賄われています。
ヨットの建造は、55年の歴史と日本代表するアルミ船建造技術をもつ、広島県尾道市にあるツネイシクラフト&ファシリティーズで建造され、2021年11月27日に進水しました。

航海スケジュール

2021年11月24日:「堀江謙一 サントリーマーメイドⅢ号 単独無寄港太平洋横断」発表会
2021年11月27日:「進水式(広島県尾道市 ツネイシクラフト&ファシリティーズ株式会社)」
2021年12月:セーリングテスト&調整期間(新西宮ヨットハーバー)
2022年1月24日:「サントリーマーメイドⅢ号」をサンフランシスコへ輸送予定
2022年3月28日:「スタート(ザ・サンフランシスコヨットクラブ)」
2022年6月(予定):「フィニッシュ(新西宮ヨットハーバー)」

これまでのチャレンジ

堀江さんは1962年に初代マーメイド号により単独無寄港太平洋横断を94日間でやったのを皮切りに、以後10回のチャレンジを行ってきました。ここで簡単に紹介しておきたいと思います。チャレンジはヨット(セーリングボート)だけでなく、エコや再生可能エネルギーの活用などをテーマにした取り組みの船でのチャンレンジも数多くあります。

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➡1972年 ヨット「マーメイドⅡ号」で東回り単独無寄港世界一周を目指すもマスト破損で断念するも、翌年の1973~1974年 全長8.8メートルの木造FRPコートのヨット「マーメイドⅢ号」で西回り単独無寄港世界一周に再挑戦し275日間の航海を成功

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➡1978~1982年 全長10.6のアルミ合金製ヨット「マーメイド号」で縦回り地球世界一周航海を4年に渡って航海、その全行程の8割近くを奥さんと共に航海

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➡1985年 全長8.98メートルのFRP製ソーラーボート「シクリナーク号」で世界初の単独無寄港太平洋横断(ハワイ・ホノルル~小笠原父島間)航海

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➡1989年:全長2.8mの太平洋横断では世界最小の小型ヨット「マーメイド号」で単独無寄港太平洋横断(サンフランシスコ~西宮港)を航海

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➡1992~1993年 全長7.91メートルのFRP製足漕ぎ(ヒューマンパワー)ボート「マーメイド号」で単独無寄港太平洋横断(ハワイ・ホノルル~沖縄)航海

➡1996年 アルミ缶リサイクル全長9.5メートルのソーラーパワーボート「モルツマーメイド号」で単独無寄港太平洋横断(エクアドルサリナス港~東京港)航海

➡1999年 業務用ビール樽528個を利用した全長10.0メートルのリサイクル素材カタマランヨット「モルツマーメイドⅡ号」で単独太平洋横断(サンフランシスコ~明石海峡大橋)航海

モルツ マーメイドⅡ

➡2002年 ウィスキー貯蔵樽材やペットボトルのリサイクル材を利用したヨット「モルツマーメイドⅢ号」で単独太平洋横断(新西宮ヨットハーバー~サンフランシスコ)航海、この時のヨットは初の太平洋横断から40周年を記念して、当時の航海を再現するためにヨットを同じ大きさの全長5.83メートルとしたヨットを使用

モルツ マーメイドⅢ

➡2004~2005年 13.1メートルアルミ合金製のヨット「サントリーマーメイド号」単独無寄港世界一周東周りを250日間で成功

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➡2008年 カタマラン型の波浪推進船(波の力で進む船)「サントリーマーメイドⅡ号」で単独航海ハワイ・ホノルル~紀伊水道間を単独航海に成功

SuntoryマーメイドⅡ


➡2022年 全長6.05メートルのアルミ合金製ヨット「サントリーマーメイドⅢ号」で世界最高齢83歳での太平洋単独無寄港横断に挑戦中!

最後に…「60年間で世界を3周・太平洋を8回を横断した鉄人ヨットマン」

沢山のチャレンジ記録を持つ堀江さんですが、世界3周・太平洋8回の横断のうち、一度だけ世界1周を奥さんと回られていますが、その他の全てが「ひとりぼっちの航海」ということになります。これだけの航海経験を積んでいれば、今回の太平洋横断は堀江さんにとって朝飯前なのかもしれません。しかし、堀江さん曰く、航海の欲求は人間の本能であり、これだけの経験を積んでいても、夢を目的に変えると一瞬一瞬がワクワクするのだそうです。見た目は老いても、心の中は常に青春で、体も心と共にかなりお若い肉体年齢なのだと思います。堀江さんは年齢が3桁になるまで現役のシーマンでヨットに乗り続けると仰っていますが、いつ体が動かなくなるか解らないから、とにかく体が充分に動くうちに今回のチャレンジをやっておこうと思ったんですよと語るわけです。そう、世界最高齢の太平洋横断こそ、夢を目的に変えてワクワクで今太平洋の大海原でセーリングされているということです。
今回が「太平洋ひとりぼっち完結編」となるのかどうかは正直なところ解りませんが、僕としては今回も白石さん、辛坊さんに続いて、堀江さんの航海の様子をデータ上で追いかけながら、気象情報を見ながら追っかけなんちゃって太平洋の旅を、堀江さんと気分だけでもご一緒させて頂こうと思っています。

堀江さんのご安航を祈ります。


堀江さんの毎日の航海日記を見ることが出来ます。
堀江謙一「サントリーマーメイドⅢ号の航海」のホームページはこちら

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