僕たち夫婦のセイリングは、妻とのダブルハンドなのでセイリング教室みたいなところに通ったことも無ければ、教本を使って学習したわけでもなく、最初は乗せて頂いていたヨットのオーナーやクルーの見様見真似や教えて頂いたことをそのままにヨットのことについて覚えてゆきました。複数のオーナーヨットに乗せて頂くようになると、オーナーやヨットによって使う用語も流儀も異なり、船ごとに聞き分けて乗っていたわけですが、そこで最も困ったのが操船時のオーナーからの指示に対してわからない言葉が多いことです。単純に真っすぐ行こうとか、右に曲がろう、左に曲がろうと言ってくれれば良いのですが、ヨットではセイリングしているときにはそういう言い方はあまりしないのです。でも、日本語で言ってくれれば何となく想像もつくのですが。それがヨット用語ともなると、初めての時にはとにかく戸惑いました。

まあ、ヨットオーナーからすれば、それくらいのこと乗る前に勉強してきてよ、基本なんだから知っていてあたりまえだろうっていう事なんでしょうね…。

まあ、僕たちの場合には、ちゃんと勉強しようなんて気持ちには自分たちの船を持とうと思い始めるまで考えたことも無かったんですが、まあちょっとだけ乗せて頂くつもりが、船を持とうなんて思うとは、当時は思ってもみませんでしたから。

さて今回は、そんなヨット用語の中でもセーリングに関わる進行方向に関するヨット用語についてお話をしたいと思います。

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ヨットは風に対してどう帆走(はしる)かで表現する

ヨットは風を使う船遊びです。つまり、風を中心に物事を考えます。これは、クルージングするときでも、レースするときでも同じです。風に対してどうするという表現をするのがヨットを操船する際に使う言葉の基本的な考え方です。
日本語だと、風に向かうとか、風下へ行くとか、風に立てる、そんな言い方をしますが、ヨットの世界では風上に上って行くときと風下へ走る時だけでもいろいろな呼び方をします。

ヨットができないことには用語も存在しない

先ずは、ヨットができないことは何なのかと言えば、それは真正面からの風で帆走することです。風を真正面に受けて帆を張って走るなんて、想像してみただけで無理なことは誰でもわかります。できないことだからこそ、そのような言葉もありません。

風を受ける向きによる呼び方

ヨットは自艇が左右または後ろのどちらから風を受けるかで異なった言い方をします。

風を後ろ側から受けるセイリング

初期の帆船には現代のヨットのような縦帆は無く、横帆しかありませんでした。横帆を用いることが出来ない場合には、基本的にオールで漕いで船を動かしていました。しかし、後ろ側から吹く風を使えばオール(櫂)で水を櫂くことなく楽に風の力で走ることができるよな…なんて昔の人は考えたことでしょう。つまり、風の力だけで帆走することが出来ることから、追風で風下に向けてセイリングすることを「ランニング」”running”と言います。
因みに帆船は固定式の横帆から徐々にその横帆を風向きに合わせて角度をつけられるようにして、斜め横からの風でも船を進めることができるようになりました。後に縦帆により風に切り上がって行けるようになり、現在のヨットの形に進化してゆきました。

風を左右の舷から受けるセイリング

真後ろから受ける風以外は、船の左右何れかの舷から風を受けることになりますが、右舷(スターボード)側から受ける風のことを「スターボード・タック」”starboad tack”、同様に左舷(ポート)側から受ける風を「ポート・タック」”port tack” と呼びます。
「タック」”Tack” とは、「しっかり固定する」と言う意味の動詞で、帆を風に対してしっかり固定することから、このような表現になったようです。
つまり、「スターボード・タックでセイリング」って言われれば、「右舷から風を受て帆走(するためにしっかり帆を固定)しよう」ということです。

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受ける風の角度によってセイリングの呼び方は変わる

「スターボード・タックで行こう」と言っても、右舷からの風は、斜め前、真横、斜め後ろと、右舷と一口にいってもいろいろあります。セイリングでは、この風の角度によってセイルのセッティングが変わるので、それに合わせてセイリングの呼び名を使い分けています。
これは、目的地に向けて帆走するために最も効率よいコース取りをするためには、風をどの角度で受けて走るのが、もっとも効率よく走れるのかという考え方が元になっています。セイリングは、先にご紹介した「タック」とこれから説明する「風の角度による帆の出し具合」によりセイリングの呼び名を変えています。

風上へ向かうセイリング(クローズホールド)

ヨットは風上には真っすぐ上って行くことはできません。しかし、目的地の方向から風が吹いている場合には、風上に向かって斜めに風を受けてジグザクに進んでゆくことで、最終的に目的地に到達するわけです。そのようなセイリング(帆走)で最も風上に向かって走れる角度でセイリングするための帆のセッティングを「クローズ・ホールド」”close hauled” と言います。ヨットを帆走させる際に、最も帆を「閉じた」(クローズ)状態に帆を「強く引き込む」(ホールド)という意味です。

クローズホールドでのセイリングは、どんなに高性能なレース艇でも両舷30度が限界と言われており、一般的なクルーザーでは40度前後の角度で進みます。
「スターボード・タックのクローズ・ホールドで行こう」というような使い方をしますが、この場合、「右舷から風を受けてできるだけ上りでセイリングしよう」という意味になります。

斜め前からの風のセイリング(クローズリーチ)

クローズホールドの状態から真横までの間で風を受けてセイリングすることを「クローズ・リーチ」”close reach”と言います。
これはセイリングの際に前寄りの風ほど、帆を閉じた(クローズ=引き込んだ)状態で走らせ、風を受ける角度が真横へ回って行くほど帆を開いて(出して)ゆきます。この帆を外側に張り出すことをリーチ “reach”(出す)と言います。

セイリングの際には、ちょっと「セイルを出して」なんてスキッパーから指示があったりします。それが “reach” です。

真横からの風のセイリング(ビームリーチ)

船の真横から受けるの風のことを英語では “wind a beam” と言います。日本では「アビーム」と言います。
アビームでのセイリングは「ビーム・リーチ」と言い、ビームの風に合わせて帆を「出す」(リーチ “raech”)という言い方をします。
ビームリーチはタックが変われば進行方向が180度変わります。

“Beam”(ビーム)は船の横向きの構造材のことで、帆船は人間の背骨と肋骨のような感じの主構造材に外板が貼り付けられている構造になっています。この肋骨のことを”beam”と呼び、船の横方向のことをビームと言います。因みに船底を前から後ろまで貫いた、人間でいう背骨のことを”keel”と言います。”keel”は「竜骨」という意味で船の骨組みは竜の骨のようになっていることが語源です。

斜め後ろからの風のセイリング(ブロードリーチ)

斜め後ろからの風を「クォーターリー」と言います。英語では”quarter Lee” です。
“quarter” は「1/4(4分の1)」、”lee” は「風下」という意味です。「1/4ズレた角度の風下へ向かう風」つまり斜め後ろからの風という事です。
クォーターリーでのセイリングは「ブロード・リーチ」”broad reach”と言います。ブロード “broad” は「広い」と言う意味で、リーチは「出す」ですから「帆を広く出す」というセイルセッティングになると言う意味です。
最初の方に書いた、真後ろからの風でセイリングするランニングに対して、ブロードリーチはやや斜め後ろからほぼ真横になるまでの間の風のセイリングはブロードリーチという事になります。

ブロードリーチとランニングの違いは、ブロードリーチの場合には、同じタックにメインセイルとジブセイルを出します。それに対して、ランニングでは、真後ろの風なので、できるだけ真後ろからの風の力を利用するために、メインセイルとジブセイルを左右分けて展開(観音開きに)します。

最後に(セイリングはセイルトリムが肝)

現代のヨットのセイリングはセイルの横への張り出し加減で様々な向きの風を使って帆走します。この帆の調節をすることをセイルトリムと言います。セイルトリムの基本は、帆を引き込んだり出したりすることですが、実はそれだけではありません。セイルカーブ(風をはらんだセイルの弧の形)が理想的な形になるようにセイルを様々な方法で調節します。この調節方法は様々なライン(ロープ)を引き込んだり出したりすることで調節します。


ヨットの走りを極めたい人は、是非セイルトリムを勉強してみると良いと思います。
僕たち夫婦のように、のんびりセーリングを楽しむだけなら、基本的なセイルの出し加減の調節だけでも十分に楽しめますが、上手くセイルトリムをすることで、微風でも走ることができたり、最高速度を上げたりすることもできます。
ヨットの世界は奥深いと言われますが、その大きな部分はこのセイルトリムにあるとも言えると思います。
しかし、あまり難しく考えることなく、先ずはセイルを上げて海に出て、基本のセイルの出し入れで船を走らせてみることから始め、慣れてきたら細かいセイルトリムをいろいろと試してみてはどうでしょうか? 先ずは、海に出てヨットを楽しむことが大切ですね。

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