夏の暑さが年々増しています。暑い夏には海にでも行って…と考えがちですが、ヨットにとって真夏の昼間は風が無く海面も鏡のようになり、空から降り注ぐ太陽の光が海に反射し逃げ場が無くなってしまいます。なので、多くのヨットは朝夕の海風や陸風が吹く時間にセーリングを楽しんでいる人が多いようです。
しかし、昼間の猛暑は年々増して、水上に幾ら居ても全く涼しくはありません。もう、そういう具合になるとヨットから逃げ出して涼しいショッピングセンターやファミリーレストランにでも行って…という具合になってしまいます。昔は、夜になれば水上に係留しているヨットは、水上を吹く夜風でエアコンなしでも十分に眠ることができたと先輩セイラ―諸氏は仰いますが、今ではエアコンなしでは熱中症のリスクもありとても危険です。実際にMALU号と同じマリーナで先日ヨット内で熱中症になり、消防のレスキューと救急車が来る事態が起きました。もう、真夏の船内でエアコンなしで寝るなんて自殺行為でしかありません。
実はうちの奥さんもクルー時代、真夏のセーリングで熱中症になりヨットの上で痙攣を起こしてマリーナに緊急帰港し救急車…なんてことが過去にありました。そんな苦い経験から僕たち夫婦がヨットを持つならエアコンは必需品と当初から考えていました。

MALU号には以前のオーナーが取り付けたマリンエアコンが付いているのですが、私のマリンエアコンの知識や経験不足のみならず、エアコンの設置方法の問題や不具合などからエアコンが付いていても、いつも何かしらの不具合や不満と戦いながらこれまでエアコンを使って来ました。それでもそこそこ快適なヨットライフをこれまで過ごしてきましたが、今年(2019年夏)、これまで騙し騙し使ってきたMALU号のエアコンはついに本格的に不調となってしいました。(まさに、この文章を書いている前日の話です。)
修理は可能なのか、それとも入れ替えか、そして、これまでの様々な不満もこの機会に解消したいと思い、諸々を視野に入れてエアコンを再検討するにあたって改めていろいろ調べるのなら、それを記事にしておこうということで…

今回は、ヨットのマリンエアコンについて書いておきたいと思います。

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マリンエアコンの基礎知識

家や建物、自動車、電車、飛行機、今やエアコンが付いていない乗り物は殆どありません。しかし、エアコンと一言に言っても、全て同じ物が載っているわけではなく、建物用、陸上の乗り物用、飛行機用とそれぞれ、その取り付ける対象物によっての特性により、システムが異なっています。

ヨット用のエアコンの場合、どういう部分が特殊なのか(どういう特性があるのか)と言うと、空調システムの全てを船内に設置する必要があるという事です。
最も大きな問題は、海が荒れた状態だと外にシステムを設置していると海水を被る恐れがあるという事です。船内にシステムの全てを設置するということは、陸上型のエアコンのような仕組みにできないという事です。

陸上型のエアコンは、室内機と室外機に分かれています。皆さんのご家庭にあるエアコンも、ベランダや家の周囲に室外機があると思います。ヨットの場合、この室外機をデッキ上に設置すると、海が荒れた時に室外機に海水が被ってしまい、塩害などで故障の原因となり、寿命も極端に短いものになります。また、そもそも大きな室外機を置くスペースの問題もありますね。室外機が無い陸上型のエアコンと言うと自動車用のエアコンがありますが、自動車のエアコンはエンジンが回っているときしか使うことができません。つまり、どちらのシステムもヨットには向かないということです。

マリンエアコンの仕組み

マリンエアコンと陸上用のエアコンの違いは大雑把に上で説明した通りですが、マリンエアコンの仕組みは図の通りです。
マリンエアコンの仕組み
マリンエアコンは室外機を置かない代わりに、海水を取り入れて温まった冷媒を冷やす仕組みになっています。ですから、室外機のようにファンで排気する必要がなく、空気よりも温度の低い海水を船底(図中のSea water intake)からポンプで汲み上げてエアコン本体内で熱交換し、温まった海水を船外に放出する仕組みになっています。こうすることで陸上のエアコンのような室外機が不要となるのです。室外機の中に入っている熱交換器や圧縮機はマリンエアコンの場合には本体側にあります。マリンエアコンの本体は、室内の空気を本体に取り込んで熱交換し、ブロアファンでキャビン内に噴き出す仕組みで、徐々に冷えてくる船内の空気を循環させて更に冷やすという形をとっています。

マリンエアコンの基本構成

家庭用のエアコンは、室内機と室外機、そしてリモコンの3つくらいですが、マリンエアコンの場合は下の写真のようにちょっと違います。※写真には含まれていない物もあります。

マリンエアコンイメージ
1. エアコン本体ユニット;ここにエアコンの主要な機器が全て集約されています。
2. 電源制御コントロールボックス;エアコンを制御する制御基板が入っています。
3. リモコンパネル;制御ボックスは本体の横に設置しますが、リモコンパネルはキャビン内の見える場所に設置します。家庭用のリモコンはワイヤレスですが、マリンエアコンのリモコンパネルはワイヤード(有線)リモコンです。ワイヤードリモコンが受光部となってワイヤレスリモコンが更に付いているタイプの製品もあるようです。
4. スルーハルバルブ;海水を取り込むために船底の最も水面下の深い場所にスルーハルを開けバルブを取り付けます。エアコンを使用しない時には、バルブを閉じられるようにします。
5. ストレーナー;吸い上げた海水を濾し、ゴミなどを取り除きます。
6. 海水ポンプ;海水ポンプというと、ビルジポンプなどを考えますが、ビルジ排出用の電動ポンプは長時間使用すると焼き付いてしまいます。マリンエアコン用の海水ポンプはエアコンが稼働している間はずっと動き続ける必要があるので、長時間使用に耐えられるポンプです。また、エアコンの容量に応じてポンプの汲み上げ容量もことなりますので、本体に合ったポンプを使用します。
7 ACブレーカー;マリンエアコンは家庭用エアコン同様に大量の電気を使用しますので、エアコン専用の交流電気用ブレーカーを個別に設置します。※陸電の受電口が無い場合には、受電用のインレットも準備が必要になります。
8. マリンジェネレーター;航行中や電気を受電できない場所でマリンエアコンを使用したい場合にはジェネレーター(発電機)を設置します。ジェネレーターを設置する場合には、エアコンの容量に応じたジェネレーターが必要です。

電気はどうするのか

マリンエアコンは電気で稼働しています。電気は基本的には陸上の電気をヨットに引いてくるか、別途で船内に発電機を設置し発電した電気を使います。ヨットにはバッテリーもありますが、エアコンは電気を非常に多く使うので通常ヨットに積んでいるバッテリーだけでは稼働させることが基本的にはできません。バッテリーで稼働させるためにはエアコンの容量に合った専用のバッテリーやインバーターのシステムを新たに搭載する必要があります。(かなりの本数のバッテリーシステムを設置するスペースが必要となるので、そのスペースがあるなら発電機を設置した方がシステム的には安心です。)また、家庭用のエアコンでもそうですが、エアコン専用の電気回路を新たに設ける必要があります。
マリンエアコンは基本的に交流115Vまたは220V(メーカーによっては230V)で動くようになっています。日本では交流100Vが基本ですので、115Vの製品を使用します。(昇圧器を使用するか、そのままでも1割弱性能は落ちますが最近の機器は使用には問題ないようになりました。)また、日本の交流は周波数が50Hzと60Hsの二種類が存在し地域によって異なるので機器購入の際には注意が必要です。

エアコンですから暖房もできます

マリンエアコンはエアコンというからには冷房だけではなく暖房もできます。エアコンの暖房は冷房の原理の逆サイクルを行う事で暖気をつくります。基本的には熱源を用いて暖気をつくるわけではありません。(最近の機器ではエアコン本体内に熱源があるものも出てきいます。)低温・低圧状態の気化した冷媒を圧縮することで高圧になるときに発熱します。この発熱した冷媒に船内の空気を当てて熱交換し船内に暖気を送る仕組みです。

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ヨット用のマリンエアコンは海外製品が主流

電気製品は日本製が信頼性が高くメンテナンスの面でも安心ですが、残念ながらヨット用のマリンエアコンに日本製はありません。自動車用のエアコンと同じ仕組みのエンジンにコンプレッサーを取り付けるタイプのインボードエンジン用のエアコンはデンソーなどのメーカーの製品があります。しかし上で説明したような仕組みのものは日本製では現在のところ見当たりません。
海外製品は割高なイメージがありますが、それは昔の話です。現在では海外製品を自由にネット通販などで買うことが出来る時代になったこともあり、個人輸入して送料や入管手続き等の費用、そして保証やアフターサービスなどの事を考えれば、そんなに割高感を感じない価格設定をしています。エアコンの場合、冷媒ガスが本体内に入っています。海外から取り寄せ途中にガス漏れやその他の箇所にダメージを受けてしまったりする可能性も少なくありません。そう言ったリスクがマリンエアコンの個人輸入にはあるので仮に不具合があっても海外とのやりとりや返送、そして代替品が来るまでにかなりの時間を要してしまったりと、かなり面倒なことになってしまいます。そんなことを諸々考えると、日本の販売店から購入するのがエアコンの場合にはオススメです。

マリンエアコン オススメ販売店

タートルマリン

長崎県にあるタートルマリンは、小型船舶用の設備機器等を輸入・開発・販売を行っている会社です。AQUATECHNO製マリンエアコン「SIOSAI」は同社のオリジナルブランド品で日本語マニュアル等も完璧で自分で取付施工する方には最も安心なブランドではないかと思います。マリンインバーターを使用して12Vバッテリーでも駆動できるエアコンという事でインバーターとセットでも販売をしています。価格面でも他の輸入品より割安感があります。

タートルマリン マリンエアコンのページ;https://turtle-marine.com/?cat=44

Marine-j.com

横浜市にあるプロジェクトKが運営してるボート用品通販サイトが Marine-j.com です。このサイトは、米国に倉庫を持ち、様々な製品を輸入販売(通販)しています。この通販サイトのマリンエアコンのページは、マリンエアコンに関する情報を誰にでもわかりやすく説明しており、これからマリンエアコンを取付ようとする方に、どのような容量の製品を選択すれば良いかを必要な数値を入力するだけで自動計算する「適正エアコン能力計算シート」も準備されています。取り扱いメーカーは、全米で取り扱いのあるものなら何でも輸入できるようですので、サイトに記載が無くても相談してみる価値はあります。

Marine-j.com のマリンエアコンのページ;https://www.projectk.co.jp/marine/shop/160501.html

West Marine

ウエストマリンは米国最大で最も有名なボート用品販売のチェーン店です。この通販サイトは、日本語対応が可能で問合せなども米国の日本人スタッフが対応してくれます。 取扱メーカーは DOMETIC と WEBASTO の2社が通販サイトには掲載されていますが、個別に必要なメーカーの機器を取り寄せ対応もしてくれますので、既存機器の交換などの際には相談してみる価値はあると思います。

West Marine マリンエアコンのページ;https://www.westmarine.com/air-conditioners
International Shopping(日本語対応)に関する説明ページ;https://www.westmarine.com/CustomerService/International-Shopping-Japanese

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最後に…(マリンエアコンは高いけど…)

マリンエアコンは家庭用エアコンに比べると非常に高価でなかなか気軽に取付できるものではないかもしれません。しかし、一度取り付けてしまえば、夏の暑い時期を気にせずヨットのキャビンで過ごすことが出来るようになります。我が家はMALU号を別荘やグランピングをするように使っているので、住むようにヨットで過ごすには家と同じようにエアコンは必要不可欠です。コスト面では決して安い買い物ではありませんが、費用対効果を考えるとヨットで快適に過ごせるようになるわけですから効果絶大ですし、熱中症の恐怖から逃れることもできます。
更に、マリーナやヨットハーバーで陸電を使うことができるところに係留している場合には、電気代は係留費用に含まれているので、言い換えれば電気は使い放題です。冬場の暖房もエアコンを使って船内を温めることが出来るので年中燃料代を気にすることなく使用できます。こう考えれば更にコスパは高いのではないでしょうか?
ネットなどを見ていると、いろいろと工夫してスポットクーラーや窓に取りけるタイプの家庭用エアコンをヨットに取り付けたりしている様子が紹介されていますが、小型クルーザーなら何とかそれでもキャビン内を冷やすことができますが、動作音が大きかったり、スペースを非常に取ったりと、やはり一長一短あるようです。私も何か低コストでクーラーだけでも使える方法は無いか、キャンピングカー用の物などいろいろと探してみましたが、残念ながら良い手段を見つけることはできませんでした。やっぱり、専用のものを取り付けることしか方法は今のところ無さそうです。

“夏のヨットライフにマリンエアコンは必需品” への4件のフィードバック

  1. コメントありがとうございます。
    DC12Vで駆動できるものは、既に12000BTU~16000BTUあたりまで出てきています。しかし、これに対応するバッテリ本数と高容量インバータを搭載することが条件ではありますがインバーターも既に製品化されています。マリンエアコンの省電力化も進んでいますが、バッテリー技術が飛躍的に進化しているので、マリンエアコン側で高コストな部品をわざわざ使って製品価格が高くなるのを避けているようで、大きく省電力という事まではせずに電気使用量は従来並みで、その分冷却能力をアップし始めているという感じにマリンエアコンメーカーはシフトし始めているようです。
    今後もつたない記事ですがお付き合い願えますと幸いです。

  2. 確かに12vdc駆動できるエアコンはありますね。但し、5000btu程度なので、クオーターバースを冷やせるかどうかだと思います。
    以前、ヤマハからインバーター制御のマリンエアコンが出て、ようやくマリンエアコンの省電力化が進むかと思いましたが、開発を止めていますし、海外製(webasto, dometic)は相変わらず大飯喰らいですよね。
    細々とした部分は仰るとおり進化していますが、省電力化の部分については進化していない、と言うかメーカー側があまり省電力化にプライオリティを置いていないように思えます。
    私はwebastoのfcf platinum 12000btuを導入しましたが、しっかり整備された陸電でない限り陸電側が落ちてしまいます。
    現在はパワーシェアリング機能(陸電で不足する分だけインバーターがアシストする)が付いたインバーターで対応しています。

    時代は省電力化より、リチウムイオンやいずれ来る全個体電池等の供給側を強化する方向なのかもしれません。

    新たな記事楽しみにしていますね。

  3. merry whipさん、いつもご覧いただきありがとうございます。
    船のエアコンについては、船を購入前からいろいろと検討してきましたが、結局はマリンエアコンにせざるを得ないという結論に…。家庭用エアコンは見た目に不格好ですし、キャビン内に室内機を吊るす場所も無く、諸先輩方のブログなどもいろいろと参考にさせては頂きましたが、やっぱり専用のマリンエアコンしかないという結論です。
    しかし、マリンエアコン、見た目に進化して無さそうですが、いろいろと調べると、コンプレッサーがかなり進化しているようで、最近ではバッテリーで駆動できるモデルも出始めています。更に、価格面でも日本にはまだ紹介されていませんが、これまでよりも3割程度安い製品が出始めていますので、しばらくすれば日本にも入ってき始めるような気がします。エアコン自体は難しい構造の物ではないので、新しくしようがないと言う感じですね。もし、今回うちの船のエアコンが修理不能な場合には、この日本にはまだ入ってきていないエアコンを載せてみようかと考えたりしています。その時には、またこのブログでご紹介しますね。
    引き続き、よろしくご愛読のほど、お願い申し上げます。

  4. いつも楽しく拝見しています。
    昨今の気候を考えると、ウインドスクープ等の工夫で強がる時代は終わったと思わずにはいられません。
    見た目を気にしないのであれば、効率的には家庭用ルームエアコンが一番でしょうね。
    耐重塩害仕様の室外機であればスターンに吊しても数年は問題なさそうです。
    マリンエアコンは進化のない同じものを何十年も作り続けてる気がします。

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