ヨットが縁遠い感覚がある理由の一つに、何だか走らせるのが難しそうという感覚があるからではないでしょうか? 確かに僕自身もそうでした。追風で帆を開いたら風に押されて進むって言うのは、誰でも簡単に想像できることですが、追風でしか走れないなら、仮に出て行っても帰って来れないって考えてしまいますよね。まあ、普通の人なら、これでおしまいです。難しいことを考えたり、調べたりするくらいなら、他に楽しそうなことはいっぱいあるし、別にわざわざ調べる程ではないですよね。そう、余程の興味と行動力が無い限り、追風以外でどうやって走るかなんて調べようとは思わないのが当然です。
でも、これが一度でもヨットに乗ってみて、楽しかったり面白いっていう経験をしてしまうと、一気に考え方は変わってしまいます。何故なら、港を出て海の上を帆走して、港に無事に戻って来ているのですから、先に書いたような心配が無いことは解ったし、百聞は一見に如かずだからです。

しかし、そこで更に心配になるのは、自分が始めたいと考えた時、そして更に自分の船を持とうとするときには、やっぱり何処かでちゃんと習った方がいいよな…って、まじめな日本人なら誰しもそう考えてしまうはずです。

実は、僕たち夫婦はヨットを習いに行ったことは一度もありません。その代わりに、2年半くらいの間、いろいろな人のヨットに乗せて頂いていました。でも、この乗せてくれるヨットオーナーが教えるのが上手いかと言えば、そんなに期待はできません。逆に全く何も教えてくれない…って感じでした。まあ、体験的にロープを引かせてもらったり、舵を握らせて貰ったりはしますが、実際にどうやって走らせるのかをしっかり教わったわけではありません。でも、数回乗ってよく見ていれば、ヨットを走らせること自体は、そんなに難しくないという事がわかります。だからこそ、もっとやってみたいなって思うようになるわけです。僕たち夫婦がどのようにしてヨットをマスターしたかは最後に少しだけご紹介することにして…

今回は、「ヨットを走らせるのは難しくない」ということことを順を追って書いてみたいと思います。

ヨットもエンジンを使って走ります

ヨットと言えども、僕がこのブログでテーマにしているヨットはセーリングクルーザーですから、いくら小型でもエンジンが付いていてエンジンで走ることはできます。
セーリングクルーザーに乗ろうとするなら、絶対に必要なのが「小型船舶操縦免許」を持っていることです。つまり、免許を持っているという事は実技試験に合格しているわけですから、ボートを操船する技術は最低限あります。それがヨットであっても海に出ること、そして帰ってくることはエンジンを使って走るという上では既にできるわけです。

実はヨットを言えども、港からいきなりセイル(帆)を上げて走り始めるわけではありませんし、帰ってくるときに岸壁直前までセイルを上げているわけでもありません。出港するときはエンジンで離岸して港の中はエンジンで走ります。沖に出てからセイルを上げてセーリング(帆走)し始めるわけです。帰りもその逆で、港に入ってゆく前にセイルを下ろし、エンジンを掛けてエンジンを使って港に入って行き着岸するわけです。ですから、セイルを上げなければ、パワーボートと同じだという事です。

風があればセイルを上げれば走ります

港を出て沖に出るまではエンジンで走ると 1.で書きました。何処までエンジンで行けば良いのだろうと考えてしまいますが、好きなだけエンジンで走って構いません。あえて言えば、セイルを上げる時には、周りに迷惑が掛からなくなるところまでエンジンで走れば良いのです。港の出入口近くや船の往来や停泊が多い場所は避けます。

1. メインセイルを上げる

メインセイルを上げる時には船の向きを風上に向けてから微速前進の状態でセイルを上げます。微速前進で上げる理由は、完全にエンジンの推進力を止めてしまうと、風や波の影響で船が風に直立せず不安定になるからです。不安定な状態ではセイルを上げにくくなります。

2. メインセイルに風を入れる

セイルを上げて、艇が風上に真っすぐに向かっている間は、セイルには風が入らず旗のようにバタバタとはためくだけですが、船の向きを風上が斜め向かいになるように舵をゆっくり左右どちらでも良いので切ってゆくと、徐々にセイルに風が入り、バタバタしていた帆は風をはらむようになります。風がはらんだところで舵を直進に戻しそのまま走らせると、微速前進だった艇は風の力が加わって少しスイスイと走り始めるのです。この状態が機帆走と言います。
※ヨットは縦帆(風に向かって縦向けの帆)なので、メインセイルを上げる時には風上に真っすぐ艇を向けないと帆を上げることができません。(厳密には、斜め向きでも上げることは可能なんですが、テクニックが必要になるので、安全に帆を上げるためには風上に向けるのがヨットのルールです。)

3. ジブセイルを広げる

メインセイルが上がって風を入れたら、次は前側のセイルであるジブセイルを広げます。ジブセイルはメインセイルが風をはらんでいる側に出して、ジブシートをウインチで引き込んでゆくと、メインセイルと同じように風をはらむようになります。更にジブシートを引き込んでゆくと、艇がスルスルと速度を増し始めます。

4. セーリング状態にする

微速前進状態のエンジン、メインセイルに入った風、ジブセイルに入った風の3つの力で艇は進んでいますので、十分に速度が増して艇が安定して進み始めたらエンジンを停止します。これでセーリング(帆走)状態になります。
そして、この時のセーリングは風上に対して斜めに上っていることになります。この状態をクローズホールドと言います。

5. クローズホールドが一番楽しく一番頭で理解しにくい

風に対して斜め向かいに帆走するクローズホールドは、風と艇が走ることで前側から来る空気の流れが加わって、体感的には最もスピードが出ているように感じることから、最もヨットに乗っていて楽しいと感じる瞬間です。セイルの風が入ると艇がヒールし(傾きながら)海面を切るように走る感覚は最高に楽しくヨットに乗っている醍醐味を最も感じるときです。しかし、何故斜め向かいからの風でセイルに風がはらんでヨットが前に進むのかは頭で考えても解らないと思います。

6. 帆を上げ風をはらませ走ることがセイリング

セイルに風を入れて帆に風がはらみ始めるところから、風が横、後ろに回っても、帆の角度(船の横に帆を張り出す量)を調整することで帆にはずっと風をはらませることができます。これを「帆に風を入れる」(帆に風を入れて走らせる)と言うのですが、これが『セイリング(帆走)する』ということなのです。だから、風があればセイルを上げれば走ると言うわけです。

帆の調節は割といい加減でも走ります

ヨットが難しく思われる理由に、帆の調節があると思います。これも頭で考えて解るのは、追風なら風の当たる面ができるだけ大きくなるように帆を調節すればいいって感覚的にわかりますが、それ以外の時にはどうすれば良いかイメージできませんよね。しかし、上の項目で書いたように、帆に風をはらませることができれば艇は走ります。問題は舵を切るたびに帆を細かく調節しなければならないような気がしますが、船の舵は陸の乗り物のようにクイックに曲がることはできません。つまり、少しばかり舵を切っても、船が大きく回ることは無いという事です。割といい加減でも、帆に風が入ってれば艇は走り続けます。また、割とセイルがルーズでも、これまた風をはらみさえしていれば、そこそこの風があれば走ります。まあ、そんなに難しいものではなく、割とアバウトでも艇は何となく走り続けることができるのです。このあたりの調節は経験を積んでゆくことで微妙な調節でも徐々にできるようになってゆきます。きちんと最高のパフォーマンスで走らせたいという人は、そこから先のセイルトリムを勉強すれば良いのです。でも、細かなセイルトリムはレースをする人くらいしか、あまり必要ではないんですけどね…。

ヨットと風の関係

タックやジャイブで失速しても大丈夫

『セイリングは行きたい方向に対して、どうやって安定的に帆を調節して艇を走らせるかという遊び』ですから、マメに帆を調節することは、遊びの一部であるということです。これなくしてはヨットの楽しみは半減してしまいます。なので、風に対してゆく方角が変われば、帆の張り出し加減を調節する、また帆を艇の左右何れかに張り出す側を変える(タックを変える)作業が操船の醍醐味とも言えます。これが風に上って走っている時をタック、下っている時をジャイブと言いますが、タックやジャイブをしたときに、段取りが悪くて艇が失速してしまうことがあります。でも、そんなの気にしなくて構いません。要は慣れの問題ですから、徐々にスムーズにできるようになってきます。失速してしまったらどうすれば良いのか、それはもう一度風を入れ直して走らせれば良いだけのことです。まあ、最初はジタバタすると思いますが、これも慣れてくればスムーズにできるようになります。

イッパイあるロープに戸惑ってしまいそう

ヨットに縦横無尽に張り巡られているように見えるロープ類、この数を見ただけで、なんだか物凄く面倒に見えます。確かに、ヨットを全く知らない人から見れば、沢山あるロープ類の存在は、面倒に見えても仕方ありません。しかし、このロープ、それぞれには役割は当然ありますが、同時に全てを使うようなシーンはありません。また、片っ端から丸暗記するようなものもありません。全て意味があって引き出されているので、それを知れば迷うことは殆どありません。また、セーリング中に頻繁に使う物は限られているので、間違えることは、その艇に初めて乗って数回程度のことです。、まあ、素人目と言いますか、ヨットのことをわかるようになれば、問題なくつかいこなせるようになるので、心配ありません。

最後に…(どうやってヨットをマスターしたか)

ヨットは確かにいろいろと面倒かもしれません。覚えることも多いですし、操作方法も陸の乗り物のようにシンプルではありません。しかし、全く燃料を使うことなく風さえあれば海の上で遊んでいることができ、停泊(船を停めて泊まること)だってできる、こんな乗り物は他にありません。

最後に、僕たち夫婦がどうやってヨットをマスターしたかですが、先ずは見て覚えるです。諸先輩がヨットの上でやっている操作を見てそれを覚えることです。次に調べて覚える。言っていること、やっていることが、動きとしてわかっても意味が解らないと自分のものにはなりません。なので、質問して教えて貰うだけでなく、ネットや書籍、テキスト(オススメ教本はこちらでご紹介しています。)などで調べたり、レッスンDVDなども買って見ました。最近では、YouTubeなどの動画サイトも充実しているので、解らないこと、知りたいことはそういうのを利用して調べました。そうして、ヨットに乗せて頂いていても迷惑を掛けないようなレベルにはなっていたと思います。
しかし、自分の船を持った時に大きな壁にぶち当たりました。それが、船を完全に自分たちだけで操船して離着岸させることです。離着岸はヨットオーナーの最も心配することなので、なかなかクルー時代にやらせてはもらえませんでしたから、練習する機会も殆どありませんでした。まあ、ヨットハーバーなどで他の船や桟橋などにぶつけられたりしては困りますもんね。特にうちは初めての艇で大き目のヨットを持ってしまい、人の力ではどうしようもありません。しかし、そこは何とかするしかありませんから、妻と2人だけで離着岸が安全に容易にスピーディーにできる方法を探し回りました。このあたりの話はまた別の機会にするとします。

でも、ヨットは決して難しいものではありません。セーリングはとても楽しいですし、ヨットライフも気分転換には最適ですので、是非多くの人に楽しんで欲しいと思います。

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