ヨットに乗り始めて憧れるのが、ヒールし(風下側に傾き)ながら帆走している時に風上側の船縁に足を海側に投げ出して座ることです。ヒールをできるだけ抑えるようにして船足を上げる努力をする時に、そのようにクルーは並んで船縁に座るわけですが、クルーにとってはヨット でセーリングしている時に最も楽しい時かもしれません。

欧州のインショアレースの大型レーシングヨットなどの映像を見ていると、ヨットの外周には何も付いていないに、クルー総出でヒールを殺す姿を見て、あれで海に落ちないかと心配になりますが、プロセーラーばかりですから、そのあたりは心配しなくて良いみたいですが、落ちたら直ぐに助けて貰えるのか、やっぱり心配になりますね。

ヒールを殺している様子

しかし、外洋に出るヨットではこういう訳にはゆきません。クルーがたくさん乗っているヨットでも、落水してしまうと落水者を見落とすことはありますし、海が荒れて波があるときには瞬時に落水者は見えなくなります。ですから、外洋ヨットの場合には落水防止のための囲いや柵はレギュレーション上も絶対に必要となっています。

大きな帆船だと必ず周囲は手摺で囲まれていますが、ヨットはそんなに大袈裟な手摺が付いていない艇が殆どです。

さて、この「囲い」や「柵」もいろいろな呼び名があり、最初の頃はとても戸惑うものです。

そこで今回は、外洋ヨット(セーリングクルーザー)のデッキ上の柵と囲いに関する用語についてお話をしたいと思います。

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ヨットの周囲の柵には2種類ある

外洋ヨットには周囲に柵が付いていますが、この柵の造りによって呼び方が変わります。

一般的な船と同じように周囲に回っている手摺のことを、「ハンドレール」“handrail” と呼びます。

ハンドレール上の写真のように、「ハンドレール」は固い手摺が付いているものを言います。しかし、多くのセーリングクルーザーの場合には、下の写真のような細いワイヤーが周囲に付いています。こういうスタイルのものを「ライフライン」“lifeline” と呼びます。

MALU号ちゃんとした手摺は「ハンドレール」、ワイヤーの物は「ライフライン」というわけです。

実は、上の方の「ハンドレール」のついた柵には、中段に「ライフライン」が通っています。ライフラインの「ライン」は「線」です。欧米では細いロープなどは「ライン」”line”と呼びます。日本でも電線とか言いますが、その「線」ですね。ライフラインは細い金属製の線(ステンレス・ワイヤー)で出来ているので「ライン」となるわけです。「ライフライン」は和訳すると「命綱」です。つまり、ヨットの周りには海に落ちないように「命綱」(ライフライン)が付いていると言うわけです。

尚、「ハンドレール」「ライフライン」共に、支柱となっている部分のポールを「スタンション」と呼びます。これは、ヨットの専門用語というわけではなく、柱や支柱のことを英語で「スタンション」”stanchion” と一般的に言います。英語が堪能な方なら、特に問題ないですね。
ヨットに乗っていると、入港の時に「フェンダーを2本目と3本目のスタンションの間に付けて」なんて船長からお願いされたりします。

前後の柵にはそれぞれ呼び方がある

手摺は「ハンドレール」でワイヤーの柵は「ライフライン」、支柱は「スタンション」ですが、外洋ヨットの場合には、前後にステンレス製の頑丈な手摺の柵が付いています。これは「パルピット」“pulpit”と呼びます。

バウ・パルピット
前側の柵のことを「バウ・パルピット」“bow pulpit”(写真上)、後ろ側の柵のことを「スターン・パルピット」“stern pulpit”(写真下)と呼びます。

ヨットを楽しむ MALU SAILNIG 

「パルピット」とカタカナ書きしますが、英語の発音的には「プル-ピット」で、プルは”pull”「引っ張る」、ピットは”pit”「窪み、凹」で、”pulpit”という単語だと教会の教壇(神父様が説教する台)のことを指します。確かにヨットの前側に付いているバウ・パルピットは、前から見ると凹んだ形で前に引っ張られたような形をしていますし、台も付いていますので説教台のようにも見えることから、このように呼ばれるようになったようです。

後ろ側のパルピットは、「スターン・パルピット」ですが、欧米では前側をパル(プル)ピット、後ろ側をプッシュピットと呼び分けたりもするようです。前が「引っ張る」”pull”に対して、後ろは「押す」”push”となるわけです。これは、一言でスキッパーのオーダー(命令)がクルーに伝わるように、クルーの聞き違いを無くすために呼び分けします。しかし、一般的には「スターン・パルピット」の方が広く使われています。

デッキ上の外周の囲いとレール

セーリングクルーザーのデッキは大体が平らで周囲は柵しかないものが多いですが、たまに船縁(ガンネル)が立ち上がって高く囲われているヨットもあります。この囲いのことを「ブルワーク」“bulwark”と呼びます。日本語では、舷牆(げんしょう)とか 防波壁 と言います。
また、立ち上がりが小さく、足を掛ける程度のレールのことを、「トーレール」 “toe rails” と呼びます。これは、ヨットがヒールして帆走するときに、レールに足を掛けて体を支え、デッキから滑り落ちるのを防ぐために使います。

ブルワーク
上の写真のヨットは「ブルワーク」で囲まれているタイプのデザインです。このような腰壁状の柵を「ブルワーク」と呼びます。また、大型帆船などでは、外周を固い鉄製柵や船体がそのまま立ち上がったような囲いもブルワークと呼びます。”bulwark”は防護壁という意味の単語です。”bul”は”bull”雄牛や猛牛のことを示し、闘牛場の周囲にある防護壁のことを”bulwark”と言ったようです。まさに海上の猛牛のような波から体を守る防護壁と言うことで「ブルワーク」と言うようになったと考えられます。

下の写真が「トーレール」です。木製のトーレールやアルミ製のトーレールなどがあります。このような小さな立ち上がりは全てトーレールです。
トーレールトーレール“toe rails”の”toe”は「つま先」と言う意味ですから、”toe rails” は「つま先を掛けて留まるためのレール」ということです。

最後に…

ヨットは海外からやってきた乗り物なだけに、とにかく聞き慣れない言葉が多く、囲いや柵だけでもこれだけの呼び方があります。英語が堪能な人なら、日常的に使う言葉もありますが、ヨット用語となると、その意味が語源から推測しにくいものもあります。しかし、ベテランのセーラーだと、これを何気なく使いますから、初心者はとにかく戸惑ってしまうのです。
しかし、これらはヨットに乗るあなたの命を守ってくれるものばかりですから、やはり正しく覚えておきたいものです。

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